天部とは|仏像に見られる仏教(仏法)の神様等
天部とは仏教世界の天上界(=天界,天上)に住み、仏様、仏法を守る守護神です。
また、天部の神様はそれぞれ私たちの生活に密着したご利益をもたらしてくれるとされ、天部信仰は古くから日本に根付いています。
凛々しい仏像や、美しい仏像などもある、天部とはどんな神様達なのかを知ると、お寺に参拝に行くときにさらにその世界観を楽しむことができるようになります。
今回は天部とは仏教の中でどのような立ち位置で、どんな意味をもつ存在なのかを解説いたします。
また有名な天部の仏像があるお寺もご紹介いたします。
天部の意味
天部とは、元々は仏教の生まれたインドで、仏陀の生まれる前から信仰されていたバラモン教やヒンドゥー教の神様などが仏教に取り込まれ生まれた存在がほとんどです。
天部のほとんど、仏の圧倒的な慈悲や力に屈服/感服して、仏教に帰依し、仏様(如来)や菩薩、明王と言った存在を守る神様になったとされます。
また、それら仏の存在だけでなく、仏教の教え、仏法自体を守る守護神という立ち位置にあります。
現在では、それぞれの神様にご利益があると考えられ、御尊像に祀られる天部の神様もいらっしゃいます。
本来は、「天」という言葉がサンスクリット語の「デーヴァ」の対訳で、「神」という意味を持っています。
このデーヴァという言葉は、ギリシャ神話の全知全能の神「ゼウス」やラテン語の神を表す「デウス」(キリスト教やユダヤ教の神を指すことも)と同じ意味と捉えられます。
他にもゾロアスター教においても同じような音の言葉があるのですが、それらは悪魔という意味を持つとされます。
「部」は「集まり」という意味を持ち、天部は「神様の集合」が直訳となります。
天部衆の存在と仏教の世界観
少しわかりにくいと思いますので、背景知識として仏教の世界観を簡単に解説します。
※様々な宗派があり経典の理解が違う可能性もありますので、あくまで一般的な説の一つと考えてお読みください。
仏教の世界では、六道(六界)という世界に分かれています。
- 天道(てんどう|天上道や天上界):天部(神々)の住む世界
- 人間道(にんげんどう):人の住む世界。悩みや苦しみもあるが楽しみも感じられる世界
- 修羅道(しゅらどう):阿修羅が住む世界。常に争いや戦いがあり苦しみ怒りにあふれる世界
- 畜生道(ちくしょうどう):動物の世界。
- 餓鬼道(がきどう):常に苦しみ・悩む餓鬼の世界。食べ物が目の前にあっても口に運ぶと炎となって燃えてなくなり苦しみが続く世界
- 地獄道(じごくどう):常に苦しみに襲われる世界。
私たち人はこれらの苦しみや欲にまみれた世界を何度も繰り返し生きる生き物で、これらの苦しみや欲から脱することで、仏の世界に行くことができるとされます。
天部の神様も実は、そんな欲や悲しみ、苦しみなどもある六道の世界の住人ではありますが、天道という仏の世界に近いところの住人です。
六道は十界の一部とする天台宗では、この上に声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界が存在します。
また、この世は三界と呼ばれる世界に分かれ、六道の住人はそれぞれの三界で迷い悩む存在ともされます。
- 欲界(よっかい):欲望にとらわれ苦しみ悩む衆生のいる世界
- 色界(しきかい):美しい物・形にとらわれている衆生のいる世界
- 無色界(むしきかい):物などの美しさにとらわれなくなったがまだ迷いのある衆生のいる世界
この三界の中で迷い・苦しみ・悩む衆生の内、天部は無色界の住人で、この三界の中にある二十八の天界にそれぞれの神が住んでいると考えられています。
少し、難しい話になりましたが、
「天部の神様は神様だが、私たち人に近い存在として見守ってくれる」
と言われます。
天部の種類
天部の神様の中でも、たくさんの分類・グループがあります。
これらのグループは現在の仏閣では天の仏像が群像としてよく見られます。
それらの天部に属する神様の分類や種類について有名なものをご紹介しましょう。
天部の四天王
天部の神様をまとめた中で、最も有名なものは四天王でしょう。
普段の生活やゲームやアニメにも四天王という言葉が利用されますが、起源はこの仏法を守る天部の4柱の神様です。
後程、どういった神様がいて、どんなご利益があるのか見ていきます。
天部の八天(八方天)/十天/十二天
天部の十二天等は方位の神々とされます。
八天(東西南北に北東/北西等の8方を守る)や十天(8方に加え天地の2方を加える)というものもあります。
後ほど、十二天の仏像をがある有名なお寺等をご紹介します。
十二神将
薬師如来という仏様を守る守護神です。
十二神将は「将」という字からわかると思いますが、猛々しい武人の姿の仏像が多くあります。
二十八部衆
千手観音菩薩を守る守護神です。
金剛力士
東大寺南大門の運慶・快慶作でも有名な金剛力士像も天部の一種類に当たる神様です。
山門に配置され、悪人等が門の中に入らないようにしています。
八大龍王
八大竜王/八大竜王という王が代表する、龍族も実は、天部に属する龍神の一種類に数えられます。
お釈迦様の説いた法華経を熱心に聞き、その後お釈迦様や仏法の守護神として登場します。
詳しくはこちらで解説しています。
八大竜王/八大龍王とは|祀られる神社や仏教世界での意味・ご真言を解説
夜叉(やしゃ)/鬼神
インドの神話において鬼神とされる存在が仏教世界に取り入れられた存在です。
ダキニ天(荼枳尼天)のような神様は元々は夜叉という存在でした。
しかし、仏教の教えの中では、仏の教えや諭しによって心を改め、仏法の守護神となり、民衆には福をもたらす福神となります。
天部と如来/菩薩/明王の違い
天部という仏教の神様は、仏様とどのように違うのかを解説いたします。
先ほど、仏教世界の話を簡単にしましたが、仏教の世界の中で最も尊い存在は仏様、つまり「如来」です。
宗派によって阿弥陀如来、大日如来など最も尊い上位の如来様がわかれますが、仏教の中で如来という存在が最も上位に当たります。
「菩薩」は「悟りを求めるもの」というサンスクリット語の直訳がある通り、まだ仏の境地には達していないが、現在悟りを求めて修行をしている身です。
菩薩には弥勒菩薩・観音菩薩等々いらっしゃいますが、いずれも現実的なご利益で衆生を救う存在です。
「明王」は如来の化身とされる存在です。如来が優しさで仏法の教えを伝える存在で、明王はそれらではわからず間違ったことをするものに厳しい態度で教えを授ける存在と言えます。
そのため不動明王などの像は怖い顔をし、剣を持っている姿です。
しかし、間違ったものに対しては厳しく教えを授けますが、悪を滅する強さと、優しさを持った存在だと言われます。
これらの存在に続いているのが天部という神様になります。
天部の特徴
天部の神様は、如来や菩薩と言った仏様とどのように違うのか、ここまでもあった内容も含め天部の特徴をまとめましょう。
- 仏法の守護神(仏教という宗教の教え自体を守る存在)
- 仏様の守護神
- 仏様だけではすべての人を救うことは難しく、天部の神様はそれぞれのご利益を持って衆生を救ってくださる
- 元々仏教の神だったわけではなく、インドの神様だった場合がほとんど
- 仏様によって悪い存在だったが、福の神になった神様もいる
このようになります。
天部は神様ではありますが、如来・菩薩・明王の域には達していないとされ、六道では私たち人間と同様、苦しみ悩むこともある存在です。
天部信仰|天部の神様のご利益や信仰する意味
天部信仰は、表記の通り、天部の神様を信仰しそのご利益に預かろうとするものです。
先ほど、如来や菩薩、明王と天部の関係を解説して、仏様の下とは解説しましたが、、天部の神様は私たちに近い分、様々なお願いを聞いてくださり、ご利益もとてもすごいと言われる存在です。
天皇のご病気を快癒させたり、関白など大臣くらす、また織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった戦国大名までが信仰をしていることは有名です。
天部信仰について詳しく見ていきましょう。
天部のご利益は具体的|神様によって様々
天部の神様のご利益は、仏様よりも現世利益(具体的な生活等に密着したもの)と言われます。
有名なものは弁財天の財運・芸事のご利益、毘沙門天の勝運、商売繁盛等々があります。
他にも病気平癒のご利益の神様、五穀豊穣、学業成就等々のご利益を持つ天部の神様がいらっしゃいます。
詳しくは後ほど、天部の神様について詳しく解説していきますので、そちらをご覧ください。
天部の神様とご真言
天部の神様には、それぞれにご真言というものがあります。(宗派によると思います)
ご真言は唱えるだけでも効果があるとよく言われます。
これはその神様のご利益に預かるためには、その神様のお言葉(ご真言)を唱えることで可能になるというものです。
ただし、やみくもに唱えたらよいわけではありません。
それぞれのご真言に何回唱えるという形式的な決まりがあるのもちろんですが、唱えるにあたっては心持を正しく持って行いましょう。
天部信仰はきちんと帰依しなければ怖いと言われるが
先ほどのご真言をやみくもに唱えるのは良くないという考えにもつながりますが、古くから天部の神様の信仰はご利益がすごい半面、その後のお礼や参拝をおろそかにしては良くないと言われます。
迷信めいている説話でもあるので、真に受けるかどうかは皆さんに合わせますが、ご利益に預かったらお礼参り、ご利益に預かれなくてもお願いをしたのであれば願解き等をして、神様にきちんと礼儀をもってお参りをするのが良いとされます。
難しく取られ、何万遍もお経を唱える必要がと考えなくとも、人に接する時に礼儀を尽くすのと同じく、神様仏様にも礼儀を持ってお参りをするのが良いと思います。
天部衆の仏像(天の仏像)や絵
天部の神様は「●●天部衆仏像」や「十二天像」など、様々な寺院で仏像や絵があります。
それら天部の仏像(天の仏像とも言う)は日本芸術の粋を集めた傑作とも言われる物もあり、見ているだけでとても迫力があり楽しいものです。
これらの天部の仏像や絵について簡単に解説しますので、ぜひ今後見るときにはそれらを知って見てみると、より理解が深まり、その世界観に入ることができるのではと思います。
天部の仏像や絵に表現される神様は、様々な姿で表現されます。
同じ神様でも、例えば弁財天は武装した格好から現在の天女のような美しい姿になったりと、一つの姿にとどまりません。
また、元はインドの神様で、中国・朝鮮を経由して日本に入ってきているので、仏像が造られたインドのガンダーラ美術を感じるもの、中国朝鮮の影響を受けた作風の二つの流れがあります。
さて、天部の像を二つのグループで分けると、
- 武人像
- 貴人像
- 天女像
と分けることができます。
天部の武人像(神将形)
武人像は、天部の中でも守護をする神様の四天王をはじめとした多くの天部像を意味します。
武人形とも言い鎧に身を包み、筋骨隆々の強そうな見た目で、顔は怒ったように見えるものです。
手には剣や金剛杵(こんごうしょ)と呼ばれる武器を持っています。
また、片手に武器を持っていて、もう片手には如意宝珠という願いをかなえるという宝珠を持っています。
(画像:如意宝珠)
天部の貴人像/天女像
一方、貴人像と呼ばれるのは、鎧ではなく、きれいな身なりをしている梵天といった男神像や、弁財天のような女性像を意味します。
女性像の場合は天女像とも言い、中国の貴婦人の姿をしていて、装飾品を付けていることが多いです。
多くの場合中国風の服装や、緩やかな服装をしています。
顔は穏やかな顔であることが多く、貴人や天女というのがわかるお顔立ちです。
また、天部には二十八部衆の中の迦楼羅(かるら)王のように、鳥の顔をしているなど、独特の仏像があります。
鎧を着ている、女性や動物の仏像、である場合はまず天部の仏像です。
天部の神様|ご利益や読み方
代表的な天部の神様をご紹介します。
ご利益に関してはそれぞれの神様の最も有名なものだけをご紹介しますので、寺院によって他にもたくさんのご利益があると思います。
ちなみに、天部の神様はすべて全く同じ位であるわけではなく、天上界にも二十八界が存在して、上位にいる神様から、人間界に近い神様まで存在しています。
梵天(ぼんてん)
梵天はインド神話上の宇宙の創造神のブラフマーという神様が由来です。
後にシヴァ神やヴィシュヌ神と共に、三神一体と言う最も需要な神の一柱に数えられます。しかしがインドではシヴァやヴィシュヌの方が今は人気です。
四面四臂(しめんしぴ)と言い、顔が四つに手が4つの姿で描かれたり、仏像が作成されています。
梵天は本場インドでは創造神としてとても重要な最高位の神でありますが、仏教においては、仏を守る守護神になります。
梵天と言う神様についてさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
梵天とは|仏教の始まり[梵天勧請]の意味や真言・帝釈天と仏像の解説
ちなみに戦国大大名の一人、伊達政宗の幼名「梵天丸」はこの梵天から来ています。
梵天のご利益
- 国土安寧
- 立身出世
等々
梵天のご真言
のうまく さんまんだ ぼだなん ぼらかんまねい そわか
梵天の像・仏像で有名なお寺
東大寺法華堂(三月堂)(奈良県)
東寺講堂(京都府)
唐招提寺金堂(奈良県)
帝釈天(たいしゃくてん)
帝釈天は梵天と対となるとても重要な神様で、インド神話のインドラと言う神様が由来です。
インドラは阿修羅やその他鬼神、魔人と戦い続けるという雷神として描かれますが、帝釈天は武人像ではないのがほとんどのようです。
仏法の守護神として重要な役割をしています。
須弥山(しゅみせん)という仏教世界の真ん中にある山の頂上にある喜見城に住んでいるとして、その四方を四天王が守護しています。
梵天と一対であることから「梵帝」とひとまとめに呼ばれ、護法の善神とされます。
(画像 左:帝釈天 右:梵天)
帝釈天のご利益
- 諸願成就
- 縁結び
- 厄除け
- 国家安泰
等々
帝釈天のご真言
のうまく さんまんだ ぼだなん いんだらや そわか
帝釈天の仏像で有名なお寺
東大寺法華堂(三月堂)(奈良県)
唐招提寺混同(奈良県)
東寺講堂(京都府)
蓮華王院三十三間堂(京都府)
柴又帝釈天(東京都)
天部の四天王
天部の四天王は、
の4柱の神様です。
帝釈天の配下にいて、仏教の世界を守護する神様です。
四天王の仏像は、お寺の仏像の配置の中で最も外側で、東西南北に配置されているのを見られますが、この配置も天部を含む仏教世界を表現したものです。
四天王像で有名なお寺
東大寺法華堂(三月堂)(奈良県)
唐招提寺混同(奈良県)
東寺講堂(京都府)
蓮華王院三十三間堂(京都府)
四天王像は天部の仏像の中でも特に有名ですが、本当にどのお寺で見ても、圧倒的な存在感と畏怖の念を感じさせる迫力があります。
以下では四天王とされる天部の神様について詳しく見ていきます。
毘沙門天/多聞天(びしゃもんてん/たもんてん)
毘沙門天という名前の方が有名ですが、四天王の中では多聞天と呼ぶのが一般的です。(以下では毘沙門天と言います)
毘沙門天は四天王の中でも最も強い神様とされます。
七福神の中でも軍神として描かれますが、本来はインド神話の財宝の神クベーラ、ヴァイシュラヴァナとして描かれていました。
財宝の神というところから、財運上昇、商売繁盛のご利益があるとして、民衆の信仰を集め、武神としても有名で、上杉謙信が毘沙門天の毘の字を幟に入れるほどの毘沙門天信仰をしていたことは有名です。
初午の日にお稲荷様をお参りするのと同様に、初寅の日(正月明け最初の寅の日)に毘沙門天を祀るお寺を参拝すると良いとされます。
多聞天について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
多聞天とは|毘沙門天と知られる四天王のご利益や仏像の有名寺院を紹介
毘沙門天のご利益
戦勝祈願
財運上昇
商売繁盛
病気平癒
毘沙門天のご真言
のうまく さんまんだ ぼだなん ばやべい そわか
毘沙門天を祀る有名なお寺
さらに毘沙門天について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
毘沙門天とは|ご利益・ご真言・七福神としての意味や信仰の歴史を解説
持国天(じこくてん)
持国天は四天王の中で東方を守る天部の神様です。
仏像は、本尊向かって右側に配置されます。
中国では琵琶を持った仏像が作成されたりしていますが、日本では武器を持って足元には邪鬼を踏みつけているような勇ましい格好が多いです。
インドの神のドゥリタラーシュトラが由来とされます。
持国天についてはこちらで詳しく解説しています。
持国天(四天王)|ご利益/ご真言や持国天立像の特徴・訪れるべきお寺をご紹介
増長天
増長天は四天王の中で南方を守る神様です。
インドの神のヴィルーダカが由来です。
増長天についてはこちらで詳しく解説しています。
増長天とは|四天王の役割やご利益やご真言、増長天立像の見所を解説
広目天
広目天は四天王の中で西方を守る神様です。
インドの神のヴィルーパークシャが由来です。
広目天についてはこちらで詳しく解説しています。
広目天とは|東大寺の広目天像に代表される四天王のご利益など解説
天部の神様の中でも、人気の四天王についてさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
四天王とは|四天王像の見所や毘沙門天を含む仏教の守護神を解説
阿修羅(あしゅら)
阿修羅は説明をすると長くなるほど様々な挿話のある神様です。
元はメソポタミア文明で太陽神とされ崇められたとされますが、インドのアスラという魔神になり、阿修羅はその魔神の性格を引き継いでいると言えます。
インドの神話の中では、アスラ(阿修羅)とインドラ(帝釈天)は何度も戦い、インドラが勝利しました。
阿修羅は何度倒されても、復活してまた戦いをするという好戦的な存在として、描かれます。
修羅場や修羅の道と言う修羅はこの阿修羅の戦いに明け暮れるところからきた言葉です。
ちなみに、阿修羅は六道においては天道に属するのではなく、阿修羅道という戦いの絶えない苦しい世界の主とされますが、釈迦の説法によって心を改め、千手観音菩薩の守護神である二十八部衆に数えられます。
阿修羅の仏像で有名なお寺
興福寺(奈良県)
興福寺の阿修羅像は教科書にも載っている有名なあの像です。
三面六臂(三つの顔に六つの手)の阿修羅像はとても迫力があります。
弁財天/弁才天(べんざいてん)
弁財天は弁才天とも表記され、七福神でもおなじみの女神様ですが、実は天部の神様です。
インド神話では河の神様でサラスヴァティという神が由来です。
今は琵琶を弾いた天女のイメージが大きいと思いますが、古い時代の弁財天の像は一面八臂(顔一つに8つの手)を持ち、刀や金剛杵を持っていたり武装をしている像もあります。
日本では、豊玉姫(トヨタマヒメ)や瀬織津姫(セオリツヒメ)等々とも習合しています。
弁財天は日本三大弁財天と言われ神社でも祀られる例が多いです。
弁財天と言う神様についてはこちらで詳しく解説しています。
弁財天(弁才天)とは|弁天様のご利益や信仰の歴史、祀られる神社をご紹介
弁財天/弁才天のご利益
- 金運上昇
- 蓄財
- 技芸上達(芸能の神様)
- 福徳円満
- 学業成就
等々
弁財天のご真言
おん ソラソバテイエイ ソワカ
弁財天の仏像で有名なお寺
東大寺法華堂(三月堂)(奈良県)(実物は東大寺ミュージアムに)
江島神社(神奈川県)
※江島神社は武装をした八臂弁財天像と共に、女性らしい柔和で全裸姿の妙音弁財天の二つの像があります。
大黒天
大黒天は日本でもおなじみの袋を背負った神様です。
インドの神としては、マハーカーラという、破壊と戦闘の神様が由来となります。(ちなみにこの神はインドで最も人気のシヴァの戦いの性格の化身とされます。)
日本では、「ダイコク」という言葉が、大国主命(オオクニヌシノミコト)につながることから、習合されるようになります。
ちなみに、大日如来や盧舎那仏も化身となって大黒天となると考えられています。
大黒天のご利益
オオクニヌシノミコトのご利益も引き継いでいるため、たくさんのご利益があると考えられていますが、次のものが大黒天のご利益として有名です。
財運向上
福徳円満
招福開運
大黒天のご真言
おん まこきゃらや そわか
大黒天の仏像で有名なお寺
大黒寺(大阪府)
西大寺(奈良県)
金剛輪寺明寿院(滋賀県)
さらに詳しくはこちらで解説しています。
大黒天とは|元は戦の神様という由来からご利益/真言,祀る神社/寺をご紹介
吉祥天(きっしょうてん)
吉祥天は、元々朝廷から民衆まで広く信仰された福や財をもたらす女神さまで、弁財天の前の七福神の女神でした。
インド神話の美・豊穣の神のラクシュミーが由来です。
弁財天と同一視されることもありますが、全く違う神様です。
信仰の対象としても人気ですし、吉祥天の仏像の中には、日本の仏像界で最も美しいとも言われる仏像があります。
さらに詳しく吉祥天について知りたい方はこちらで解説していますのでご覧ください。
吉祥天のご利益/ご真言や祀られる神社/寺を紹介|有名な吉祥天女像も解説
吉祥天のご利益
財運・金運上昇
五穀豊穣
商売繁盛
等々
吉祥天のご真言
おん まか しゅりえい そわか
吉祥天の仏像で有名なお寺
浄瑠璃寺(奈良県)
薬師寺(奈良県)
法隆寺(奈良県)
興福寺(奈良県)
韋駄天(いだてん)
四天王の増長天の配下の八大将軍筆頭の天部の神で、伽藍を守る守護神とされます。
ヒンドゥー教の軍神スカンダという神が由来、もしくはバラモン教のシヴァ神かアグニ神の子とされます。
釈迦の骨の入った入れ物、仏舎利を盗んだ鬼を追いかけた時、ものすごいスピードで走ったことから、速い人を韋駄天と呼ぶようになりました。
韋駄天のご利益
伽藍等、寺院の守護
火難除け
盗難除け
韋駄天のご真言
おん いだていた もこていた そわか
韋駄天の仏像で有名なお寺
萬福時(京都)
泉涌寺舎利殿(京都)
ダキニ天/荼枳尼天(だきにてん)
荼枳尼天(ダキニ天)は日本ではお稲荷様とも呼ばれる天部の神様です。
インドの夜叉・羅刹のダーキニーが由来で、このダーキニーは人を食らっていたという恐ろしい存在でした。
大黒天(大日如来が化身として)がダーキニーを調伏して、仏法の守護神として心を改めたとされます。
日本に入ってきてからは、荼枳尼天の豊穣の神という一面から、同じ豊穣の神ウカノミタマノカミ(宇迦之御魂神)と同一視されるようになります。
このウカノミタマノカミがお稲荷様として祀られていて、いつからか荼枳尼天もお稲荷様として知られるようになります。
元々怖い存在であったこともあり、怖い神様と言われますが、今はとてもご利益のある神様として、天部信仰の中でも有名な人気の神様です。
荼枳尼天のご利益
お稲荷様という側面もあって、かなりご利益は広くとらえられています。
諸願成就
商売繁盛
技芸上達(芸能の神)
五穀豊穣
縁結び/縁切り
等々
お稲荷様について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
稲荷神社・お稲荷様(稲荷神)を解説|ご利益・狐の祟り等怖い話の由来とは
荼枳尼天のご真言
のうまく さんまんだ ぼだなん きりか(きりかく) そわか
等々
荼枳尼天を祀る有名なお寺
歓喜天/聖天(かんきてん/しょうでん,しょうてん)
歓喜天はお聖天様と通称で呼ばれたりすることが多く、朝廷から民間まで信仰の厚い神様として有名です。
インド神話で勧誘をして妨げをする魔物のガネーシャが由来とされます。
ここから福徳心となり、あらゆる障害や困難を除くご利益がある神様と考えられるようになります。
歓喜天はどんな人の願いも聞いてくれると言われ、他の神や仏がダメな時、最後の望みに歓喜天・お聖天さんを拝むと良いと古くから言われています。
ただし、どんな願いも聞いてくださるゆえに、礼儀を失する場合や良くないお参りの方法をしてしまっては、罰が当たると言われます。
歓喜天について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
歓喜天(大聖歓喜天)|聖天さんと親しまれる神様のご利益や怖い/祟りとは
歓喜天のご利益
諸願成就
商売繁盛
病気平癒
夫婦和合
子授かり
歓喜天のご真言
おん きりく ぎゃく うん そわか
歓喜天の仏像で有名なお寺
閻魔天/焔摩天(えんまてん)
閻魔天は閻魔大王の名で知られる、冥府の世界の神様です。
実は仏教の守護神であり、天部の神様に含まれます。
インド神話のヤーマという始めて死ぬ人間と言われ、冥界に始めて訪れ、そのままそこで神様になったと言われます。
閻魔天のご利益
長寿
災難除去
病気平癒
除病
等々
閻魔天/焔摩天のご真言
のうまく さんまんだ ぼだなん えんまや そわか
摩利支天(まりしてん)
摩利支天は武士が信仰した神様として有名です。
有名な武将では、楠木正成、足利尊氏、毛利元就、前田利家も信仰したと言われます。
インド神話で描かれるウシャスが由来です。
イノシシの背に立つ像が有名で、干支のイノシシと縁があるとされ、亥の日が縁日とされます。
摩利支天のご利益
武運長久
商売繁盛
心願成就
除災
招福
等々
摩利支天のご真言
おん まりしえい そわか
摩利支天の有名なお寺
金剛力士(こんごうりきし)
金剛力士もまた、天部の神で、仏教の護法善神と言われ、仏や寺院に悪者や魔物が入ってこないように守護しています。
金剛力士のサンスクリット語の意味は「金剛杵を持つもの」という意味で、帝釈天が魔物や鬼神を退治する際に利用した武器の金剛杵を持つ勇ましい神ということです。
金剛力士は二体で一対の像として、山門に配置されています。
正面向かって右に口を開けた「阿形像(あぎょうぞう)」、左に©口を閉じた「吽形像(うんぎょうぞう)」と呼ばれる像が配置されます。
金剛力士像が有名なお寺
金剛力士像は有名なお寺であれば多くのところで見ることができますが、やはり一番有名なのは日本きっての彫刻家である、運慶と息子の快慶作東大寺南大門 仁王像です。
伎芸天(ぎげいてん)
名前の通り、芸術の神様として有名な女神様です。
インドの神話では、摩醯首羅天(シヴァ神)が楽器を奏でた時に生まれた天女とされます。
伎芸天のご利益
技芸上達
福徳円満
等々
技芸天のご真言
のうぼう まけいじんばらや うしま ぼうしきゃや そわか
伎芸天の仏像で有名なお寺
秋篠寺(奈良県)
鬼子母神/訶梨帝母(きしもじん/からていも)
鬼子母神はインド神話でハーリーティーとされます。
鬼女で、500人の子供を産んでいる母でしたが、人の子を食べて、自分の養分としていました。
ある時、釈迦が鬼子母神の子一人を隠したところ、泣き叫び、発狂をしたとされます。
釈迦に助けを求めたところ、釈迦に「多くの子を持っていながら、一人の子を失ってそれだけ悲しむのであれば、一人の子を持つ親の苦しみはいかほどか」と諭され心を改めて仏法に帰依することになりました。
鬼子母神のご利益
子授け
安産
子育て
等々
鬼子母神のご真言
おん どどまり ぎゃきてい そわか
鬼子母神が祀られる有名なお寺
法明寺鬼子母神堂(東京都)
醍醐寺(京都府)
堅牢地神尊天(けんろうじしん)
大地の女神とされる神様です。
十二天の一柱の地天と同一視する考えもあります。
羅刹天(らせつてん)
羅刹という言葉自体は、インド神話の中の鬼神を意味する言葉で、夜叉と同様、危険な存在でした。
羅刹天はインド神話の中の鬼神ラークシャサが由来とされ、仏教に習合されると、毘沙門天の配下として仏法の守護神の一柱になります。
八天(八方天)/十天/十二天
天部の神様の12柱の分類で、十二天等の仏像は四天王のように如来や明王と言った仏様を囲んで配置されることが多いです。
天部の十二天等は方位の神々とされます。
神様のくくりとして、八天(東西南北に北東/北西等の8方を守る)や十天(8方に加え天地の2方を加える)というものもあります。
八天(赤) 十天(赤+青) 十二天(赤+青+緑) |
守護する邦楽 |
帝釈天(たいしゃくてん) | 東 |
火天(かてん) | 東南 |
焔摩天/閻魔天(えんまてん) | 南 |
羅刹天(らせつてん) | 西南 |
水天(すいてん) | 西 |
風天(ふうてん) | 西北 |
毘沙門天(びしゃもんてん) | 北 |
伊舎那天(いざなてん) | 東北 |
梵天(ぼんてん) | 天 |
地天(じてん) | 地 |
日天(にってん) | 日 |
月天(がつてん) | 月 |
八方天等の像が有名なお寺
西大寺(奈良県)
十二神将
薬師如来という仏様を守る守護神です。
十二神将という天部の仏像は薬師如来像の左右に6体を置きます。
毘羯羅(びから)大将 | 珊底羅(さんていら)大将 |
招杜羅(しょうとら)大将 | 頞儞羅(あにら)大将 |
真達羅(しんだら)大将 | 安底羅(あんていら)大将 |
摩虎羅(まこら)大将 | 迷企羅(めきら)大将 |
波夷羅(はいら)大将 | 伐折羅(ばさら)大将 |
因達羅(いんだら)大将 | 宮毘羅(くびら)大将 |
十二神将の仏像で有名なお寺
興福寺(奈良県)
広隆寺(京都府)
十二神将について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
十二神将とは|各々の名前や干支・国宝十二神将像が見れる寺院を紹介
二十八部衆
千手観音菩薩を守護する28柱の神様です。
五部浄(ごぶじょう) | 大弁功徳天(だいべんくどくてん) |
難陀龍王(なんだりゅうおう) | 密遮金剛力士(みっしゃくこんごうりきし) |
迦楼羅王(かるらおう) | 大梵天王(だいぼんてんおう) |
緊那羅王(きんならおう) | 摩醯首羅王(まけんしゅらおう) |
阿修羅王(あしゅらおう) | 帝釈天(たいしゃくてん) |
金大王(こんだいおう) | 東方天(とうほうてん) |
乾闥婆王(けんだつばおう) | 金色孔雀王(こんじきくじゃくおう) |
沙羯羅王(しゃがらおう) | 摩和羅女(まわらにょ) |
金毘羅王(こんぴらおう) | 毘楼勒叉天(びるろくしゃてん) |
満仙王(まんせんおう) | 毘沙門天(びしゃもんてん) |
摩睺羅伽王(まごらがおう) | 毘楼博叉天(びるばくしゃてん) |
散脂大将(さんしたいしょう) | 満善車王(まんぜんしゃおう) |
畢婆伽羅王(ひばからおう) | 那羅延堅固王(ならえんけんごおう) |
婆藪仙人(ばすせんにん) | 神母天(じんもてん) |
ちなみに、二十八部衆の一部の神様で、釈迦如来を守護する八部衆もあります。
八部衆についてはこちらで詳しく解説しています。
八部衆(天竜八部衆)とは|阿修羅に代表される興福寺乾漆八部衆立像も解説
二十八部衆の仏像で有名なお寺
蓮華王院三十三間堂(京都府)