大祓(夏越の大祓)とは|意味や人形について解説
大祓とは神社で6月末、12月末に行われる神事です。
その歴史は古く1000年以上も前から行われています。
私たちの心身を清め、次の半年を迎え健やかに過ごせるようにという意味を持つ大祓について詳しく解説していきます。
大祓の意味
大祓という行事のは、
「生活の中で知らず知らずに身についた、罪や穢れ、災厄をお祓いする」
という意味を持ちます。
大祓のご利益・効果
大祓によって、1月~6月、7月~12月の半年間についた不浄なものを祓い、清らかな状態で次の半年を過ごせるようになるのです。
罪穢れと言う言葉が続きましたが、具体的には、
- 厄難消除
- 無病息災
- 交通安全(車の大祓など)
といったご利益に預かると考えます。
大祓は神社によって、大祓神事、大祓祭などと名称が変わることもあります。
大祓の読み方は「おおはらえ/おおはらい」
大祓は「おおはらえ、おおはらい」いずれでも呼ばれることがあります。
祓という言葉は、神道においてとても大事な概念です。
神道では、罪や穢れ、厄災といったものを忌みます。
その一つの例が人の死で、死は穢れと考えるため忌中と言う考えがあります。
また、神社で御手水にて手や口を清めるのも、神様に対してなにかを申しあげる時、清らかな状態でなければ失礼にあたると考えるために行うのです。
大祓というのは、神社で手や口を清めることと同じような考えで、日々の生活で気づかない間に私たちの体につくと考える罪や穢れを半年に一回、大いに祓う行事なのです。
夏越の大祓とは6月(水無月)に行う大祓
一般的には、大祓と言うと、年末12月31日の大晦日に行う式を指すことが多いです。
そして6月に行う大祓を、夏越の大祓と言う神社が大半です。
夏越の大祓の読み方は「なこしのおおはらえ」
夏越の大祓はなこし、なごしのおおはらえと読みます。
同じ読み方で、名越の大祓と表記することもあります。
夏越の大祓は他にも水無月の大祓など別の名称を持っています。
それに対して、年末の大祓を年越の大祓と言うこともあります。
大祓はこの夏越の大祓と年越の大祓で行うことは神社によって違うでしょうが、ほとんど同じです。
さて夏越の大祓と年越の大祓と、なぜ一年に二回するのかをご存知でしょうか?
それは昔の日本では、一年が二年だったことが由来です。
大祓と夏越の大祓の二回する意味
一年が二年だったというのは、わかりにくい表現でした。
簡単に言えば、今の一年12カ月という考え方が昔の日本では無くて、一年は6カ月と考えていたのです。
つまり、1~6月で一年が終わり、7月1日から新年で、7~12月で一年が終わり、1月1日から新年だったのです。
大祓と夏越の大祓が行われる日は、それぞれ昔の日本では年末の最後の日だったのです。
私たちが新年を迎えるにあたって、大掃除をしたり身の回りをきれいにし、清浄な状態で新年を迎えるという風習がありますが、それが一年に2度あったと考えると分かりやすいのではないでしょうか。
ちなみに夏越の大祓には、これから夏を迎えるため疫病が流行する原因となる不浄な状態を回避するためなどの意味があっととも考える説もあるので、上記で紹介したものもあくまで一説です。
大祓式(大祓祭)の内容
具体的に大祓ではどんなことを行い、私たちの知らず知らずに身についた罪や穢れを払うのか解説いたします。
神社によって細やかな違いがあると思いますが、概ね次のような流れです。
大まかにこのような流れです。
いずれも私達の体を清めるための儀式で、これを行うことで罪や穢れを払います。
京都の貴船神社で行われる大祓の動画をぜひご覧ください。
とても美しいですね。
貴船神社に限らず、動画で神職の方が川に投げている人形や、途中出てきた茅の輪くぐりなど行うことについては、以下で具体的に解説していきます。
その前に、この大祓という神社で行われる神事の歴史について簡単にご紹介いたします。
大祓は日本神話の中のイザナギノミコト(伊弉諾命)の禊祓という儀式に起源を持つものでとても古くから行われてきた儀式なのです。
大祓とは|由来や歴史
大祓という行事は、日本最古の歴史書の日本書紀で天武天皇の時代に国家の行事として行われたことが記されています。
天武天皇の頃と言うと、今から1350年ほど前です。
その時代は、今のように各地の神社で行われる行事ではなく、都で行われる宮中行事でした。
文献に残る大祓の古代の姿は、都の南に建つ朱雀門の前で中臣氏が大祓詞の元となる言葉を官民を前に奏上し、国全体の罪や穢れを払うというものでした。
ちなみに、この時に奏上していた祝詞が大祓祝詞、つまり今の大祓詞と言う神道で大事な祝詞となります。詳しくは以下で解説しています。
大祓詞(おおはらえことば)とは?原文・現代語訳・意味・効果を解説
後にこの行事がが民間の神社でも行われるようになって今の大祓、夏越の大祓となっていきます。
ちなみに「穢れ(ケガレ)」という言葉は、「気枯れ(ケガレ)」という言葉だったと考えられます。
つまり、気力が枯れてしまうことで、生産力が落ちてしまうことがないように、ケガレを祓うお祭を行うというのが日本の伝統です。
大祓の由来となる神話の物語
日本神話で大祓の起源となる、イザナギノミコトの禊祓について簡単にストーリーをご紹介します。
イザナギノミコトはイザナミノミコトと共に、日本の国土や山や海や風などなどの多くの神様を産む神様です。
イザナミノミコトが神産みをしている際に、火の神様を産んだ際の陰部のやけどが原因でなくなってしまいます。
愛する妻を失ったイザナギノミコトは何とか生き返らせようとイザナミノミコトを死者の国まで迎えに行きます。
色々あって失敗し、命からがら死者の国から地上の国に逃げたイザナギノミコトは死者の国に行ったことで穢れた自分の体を水で洗い清める、禊祓(みそぎはらい)という儀式をします。
この時に、最高神であるアマテラスオオミカミ(天照大御神)や、大祓で行う茅の輪くぐりにも関係するスサノオノミコト(素戔嗚命)という神様が生まれるのです。
詳しくはこちらで詳しく解説しています。
イザナギノミコト(伊弉諾尊/伊邪那岐命)|イザナミノミコトとの神話や神社について
大祓・夏越の大祓で行うこと
大祓・夏越の大祓で行うことについて詳しく見ていきましょう。
大祓の人形(形代)
大祓で出てくるのは、神を人の形に切り抜いた人形(ひとかた)というものです。
形代(かたしろ)とも言います。
大祓で使う人形は、私たちの体につく、罪穢れを代わりに受け取り、お祓いをされることで私たちを清浄にしてくれるという意味を持ちます。
人形だけでなく、車の形代もあって、車の災厄をお祓いしてくれるというものもあります。
大祓の人形は神社によって違いがあると思いますが、大体の場合頭体をさすって、特に体のここが良くないというところを丹念に撫で、最後に息を「はっはっはっ」とかけます。
後は、それを神職の方がお祓いし、清らかな水の流れで私たちの罪穢れを人形と共に流してしまうのです。
ちなみに、大祓の式に出なければいけないわけではなく、郵送で送ってくださって、家で人形で自分の体をさすって神社に送り返してお祓いしてもらうということもできます。
大祓の人形の書き方
大祓の人形の書き方は神社によって、人形自体に書いたり、そうでなかったりするので、神社の方法に合わせて書いてください。
一点だけ注意点があるのは、人形に書く自分の年齢は満年齢ではなく、数えの年齢です。
数え年とは自分がその年になる年齢のプラス1歳の年齢です。
例えば2000年7月1日生まれの方で考えてみましょう。
6月30日に行われる夏越の大祓の人形に書く年齢は、実際の年齢は18歳ですが、数え年は20歳になります。
そして、12月31日に行われる大祓の人形に書く年齢は、実際の年齢が19歳ですが、数え年は20歳になります。
誕生日前と誕生日後で実際の年齢(満年齢)にプラス1なのか2なのかに違いが出てきます。
ですので、実際の年齢は無視してその年に自分が迎える年のプラス1歳で計算してください。
大祓と茅の輪くぐり
大祓で行われる茅の輪くぐりは私たちを襲う災厄(病気や事故などなど)を防ぐという意味で行うものです。
茅の輪くぐりは、上記の大祓の歴史とは違った由来を持った神事です。
茅の輪くぐりはスサノオノミコト(素戔嗚命)、もしくは牛頭天王と呼ばれる神様が出てくる、蘇民将来という人の話に由来します。蘇民将来の話はいくつか違うパターンが存在するのですが、大まかなあらすじをご紹介します。
武塔神というスサノオノミコトと同一視される神様御一行が旅をしている際、ある町で一泊することになり町の長者の巨旦将来(こたんしょうらい)に宿にさせてくれとお願いをします。
すると、巨旦将来はその申し出を断ります。
そして、別の宿を探している時に、巨旦将来の兄弟である蘇民将来が貧乏ながらも宿として家に一行を泊め、できる限りの接待をします。
スサノオノミコトはその好意に感謝し、茅の輪を渡し身につけるようにと言います。
すると、茅の輪を付けていなかった蘇民将来の一族以外の巨旦将来を含む村のものが疫病と言う災いで全員無くなってしまうのでした。
この話は鎌倉時代に編纂された、「釈日本各紀」の中の備後国風土記という広島に伝わる話なのですが、スサノオノミコト(神仏分離令以前は牛頭天王)を祀っている八坂神社にある似たような話では、牛頭天王が巨旦将来達を蹴り殺すという何ともすさまじい終わり方だったりと違うパターンもあります。
蘇民将来の話についてや茅の輪くぐりの詳しい回り方などの解説はこちらでしていますので、ぜひご覧ください。
茅の輪くぐりとは|意味や茅の輪の由来,くぐり方等作法について解説
蘇民将来とは|茅の輪/子孫家門符の起源やスサノオ/牛頭天王の伝説を解説
また、牛頭天王やスサノオノミコトという神様についてはこちらで詳しく解説しています。
牛頭天王とは|蘇民将来の物語やスサノオ都の同一説/ご利益やご真言を解説
スサノオノミコト(素戔嗚尊)とは|神話(ヤマタノオロチ等)、ご利益等を解説
大祓式や人形の初穂料(金額)
大祓式に参加する際の初穂料は神社によって違うのは当たりまですが、大体1000円からです。
大祓を神社で受けず、人形や車の形代を郵送で送る際も、大体初穂料は1000円から受けているのが一般的です。
喪中の際に大祓に行ってよいのか
大祓という神事は、近親者が亡くなってから最長13カ月の喪中という期間に行って良いのかということですが、諸説あるので、参加しようと考える神社の方に確認するのが最も確実です。
喪中と似た言葉で、忌中という言葉があります。
亡くなった人との間柄によって、忌中も喪中同様期間が変わるのですが、この忌中は神社へのお参りは控え、喪中は良いと考える場合もあります。
大祓・夏越の大祓が有名な神社
大祓・夏越の大祓はほとんどの神社で行っていますが、一部の神社をご紹介いたします。
神田明神の大祓(東京)
2020年の夏越の大祓はコロナウイルス感染拡大防止のため、一般の方の参拝を制限しています。
しかし、人形の提出などは可能で、さらに神田明神公式Youtuveチャンネルでは、大祓式のライブ中継を行うそうです。
貴船神社(京都)
貴船神社では、夏越の大祓の際、人形を川に流す大祓式を行い、とても風流なことで知られます。
夏の京都は盆地独特の異常なほどの熱さですが、貴船に移動してみると一転してとても涼しく、清々しい気候になります。
心身共に清らかになる感覚を感じることが出来ますので、興味がある方はぜひ行ってみてはいかがでしょうか?
大祓や夏越の大祓限定の御朱印も
大祓式では、限定の御朱印が多くの神社にて頂けます。
最近では色々な行事にて限定御朱印がいただけますが、古来からの行事の大祓の御朱印も気になる神社にて頂けるか確認してみても良いかもしれません。
夏越の大祓・年越の大祓で清らかな心身で
大祓・夏越の大祓は、1年の間で身についた罪・穢れを”祓い”その次の一年(現在の暦で言うと半年)を清らかに迎え、過ごしていくという行事です。
「自分は罪や穢れを身につけた覚えはない」というものではなく、人は気づかぬ間に罪や穢れを身につけてしまっているものだというのです。
気になる方はぜひこの機会に穢れを祓ってみてはいかがでしょうか。