色即是空 空即是色とは|意味がわかると仏教は面白い
色即是空 空即是色という8文字の言葉はこの世の本当の姿を表したと言える言葉です。
仏教の言葉で最も大事なものの一つ「空」の意味を理解し、
色即是空の意味、空即是色の本当の意味が分かることで、この世の苦しみから解放される一歩になるとお釈迦様は説きます。
色即是空 空即是色の読み方
色即是空 空即是色は「しきそくぜくう くうそくぜしき」と読みます。
たった4つの漢字に込められた仏教の教えを、お釈迦様がわかりやすく説明した言葉などを用いて解説いたします。
「色即是空 空即是色」は般若心経の大事な一節
「色即是空 空即是色」は般若心経という日本ではほとんどの仏教宗派で読まれる最も一般的なお経の大事な一節です。
この般若心経の中で最も大事な言葉を一つ選ぶとなると、それは「空」となるでしょう。
それほど「色即是空 空即是色」の意味を理解することはとても大事なことなのです。
それでは、色即是空と空即是色の意味をそれぞれ分けて解説していきます。
色即是空の意味とは
色即是空の意味を解説する前に、まずは「色」と「空」という言葉の意味を解説いたします。
「色」の意味とは、この世の様々なモノや現象のこと。
匂い、音など認識できる様々なものを含みます。
「空」の意味とは、実体がないこと。唯一不変の存在はこの世にはないということ。
このようになります。
そして、色即是空の意味は、
「この世のあらゆるモノや現象は、実体がないのだ」
となります。
これだけだと意味が分かりにくいですので、ここから色即是空の意味をわかりやすく解説いたします。
色即是空の意味をわかりやすくイメージすると
お釈迦様は「空」の概念を分かりやすく、琵琶で例えてくださっています。
琵琶を想像してみてください。上の写真のようなギターみたいなものです。
この琵琶という楽器はこの世に存在するモノ「色」です。
琵琶は私たちの手で触ることができ、弦をはじけば美しい音色を私たちの耳に届けてくれるものです。しかしその琵琶は実体がない「空」だというのです。
これは琵琶という楽器は、弦があって、その弦が張られた木があって、バチがあって…など様々な構成要素があって、それらが組み合わさった結果琵琶というモノができています。
琵琶という概念は、琵琶を構成する部分部分に分解してみても、「琵琶」という唯一無二の存在(実体)は、分解した後の部品にはありません。
残るのは、弦と本体になる木とその他もろもろも構成要素です。
琵琶という名前のついた楽器は、分解したらなくなってしまう実態のない「空」だというのです。
琵琶が空であるというイメージは出来ましたでしょうか?
この話は琵琶に限らず、あらゆる「色(モノや現象)」にも当てはめることができます。
お釈迦様の時代にはこの色即是空は上記のような概念で理解していましたが、科学が進歩した今「色即是空」は正しいと言えるようになります。
色即是空は科学的には|量子力学と素粒子物理学
私は素粒子物理学の専門ではないので、あまり突っ込んで解説ができないのですが、結論「色即是空」は素粒子物理学の考えから正しいと言えるのです。
この世のあらゆるものは、原子によって形作られるというのは皆さんご存知と思いますが、この原子もさらに小さなたった17つの素粒子という粒によって構成されています。
私もあなたも、今この文章を見ているスマホかパソコンかそういった部品も現在17種類の素粒子という粒でできています。
この世のどんなモノ(色)は、それぞれ唯一無二の存在ではなく、17つの素粒子の組み合わせと言えるのですね。
そして、素粒子物理学の見地から、あらゆるモノは実体はない「空」だと言えるのです。
素粒子物理学と色即是空の正しさについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
ちなみに素粒子物理学で説明される以外にも、量子力学で説明するなど、仏教やらその他の宗教の説を様々な科学的根拠を持って説明をされることがあるのですが、中には正しいと言えない理論があったり、オカルトの説明にもっともらしい根拠づけに利用される場合もあるので気を付けてください。
色即是空は仏教において他の言葉でも表現される
色即是空という言葉で表現される「この世のあらゆるモノや現象には実体がない」という教えは、諸法無我の意味と同じです。
色は諸法、空は無我とそれぞれ対応しています。
色即是空のイメージが今ひとつ掴めていない方は諸法無我の方で、別の例えを持って解説しています。
私個人が最も分かりやすいと思う、お笑い芸人さんによる、この世界をカレーで例えた話を引用させてもらって解説していますので、ぜひご覧ください。
諸法無我とは|意味や簡単にイメージできる例で説明。諸行無常との関係とは
空即是色の意味とは
色即是空の反対に当たる、空即是色の意味は、
「実体がないこと(=空)が、この世のあらゆるモノや現象を形成している」
となります。
空即是色の意味をわかりやすくイメージすると
空即是色を先ほどの琵琶を用いて解説しましょう。
琵琶というモノ(色)は分解してみると、琵琶という実体はありません。
しかし、琵琶という実体がないけれども、分解した弦や木の本体やらの存在が集まって、「琵琶」という「色」が存在しています。
別のものでイメージをしてみます。
私たちの体は「肉体」と「精神」があります。
この肉体と精神、分解していくと、私やあなたの実体はどこにあるのでしょうか?
肉体を構成する最小単位の細胞に分解してみて、私やあなたの実体はありますでしょうか。
細胞の核の中のDNAだって、たった4つの塩基配列で、一人一人全く違っているDNAはたった4つに分解されます。
何とも虚しいものですが、私やあなたという存在は肉体を分解して見ると「空」です。
また私やあなたという実体は精神にあると考えて、意識を司る頭の中にを考えてみましょう。
頭の脳の中にあるのは脳細胞一個一個に分解しても、私やあなたという唯一無二の実体はありません。むしろ、脳細胞一個一個に分解してしまったら意識は発生しません。
なぜなら意識と言うのは、脳細胞と脳細胞の起こす電気信号によると考えられているからです。
私やあなたを構成する肉体と精神を分解しても、独立した、唯一無二の私やあなたという存在はありません。
空です。
しかし、空であるにもかかわらず、様々な要素が組み合わさった結果、私やあなたという存在「色」があるのです。
色即是空と空即是色は違いがあるのではなく
色即是空と空即是色は、違う事を言っているのではなく、この世の本当の姿の「空」が、私たちを含む様々な存在を成り立たせているということを2つの側面から説明しているのです。
般若心経では五蘊皆空など別の言葉でも「空」という表現が見られますが、どれもこれも、色即是空・空即是色ということを様々な表現で説明してくれているのです。
ちなみに五蘊と言うのは、私たちの「肉体と精神」のことを意味しています。
五蘊についてはこちらで詳しく解説しています。
五蘊とは|意味や五蘊盛苦/五蘊皆空等の仏教用語をわかりやすく解説
色即是空 空即是色は般若心経の神髄
般若心経という日本で最も読まれているお経は、たった266文字(262文字)から成る経典です。
他の経典が何万文字もある中で、かなり短い部類に属します。
短いといえど、般若心経(正式名称「般若波羅蜜多心経」)は仏教の最終目標にたどり着く道を観自在菩薩という仏様がわかりやすく説明してくれているのです。
般若波羅蜜多(波羅蜜)とは、「苦しみから解放されるために必要な智慧の完成」という意味を持ちます。
色即是空と空即是色の意味を理解することによって、苦しみから解放されるのです。
ここからは「色即是空 空即是色」の深みについて少しばかりご紹介します。
仏教の大事な言葉の”空”と”因・縁”
空即是色の意味を解説しているところで、「空」の世界、実体があるものはないというこの世界において、様々な要素が集まって「色」というモノや現象を生むと言いました。
この様々な要素というのを、仏教用語では「因・縁」と言います。
今日では「因縁」と言うと、ヤンキーと肩がぶつかった時「お前のせいで肩ケガしたは、どう落とし前つけるねん」と”因縁をつける”という使い方のような意味が一般的ですが、本来の意味と全く違います。
因縁とは簡単に言うとこの世のあらゆる物事を成り立たせている原因という意味です。
私たちの肉体は、父親・母親、祖父母という因(直接的な原因)があってこの世に存在し、
私たちの精神(考え方等)は家族や友達、学校、職場、恋人など様々な環境という縁(間接的な原因)があって今の自分が形成されています。
あらゆる存在は、他のものから独立した唯一無二の存在をもつ実体ではなく、因と縁が重なって重なって成り立っている物なのです。このことを縁起と言います。
仏教用語で仮和合(けわごう)なんても言われるのですが、唯一無二の何かがあるのではなく、因縁によって、仮にそれらが集まって存在しているだけなんですよというのです。
因縁と縁起についてはこちらで詳しく解説しています。
因縁の意味とは|仏教の教えをわかりやすく。因縁生起/因縁果報とは
縁起の意味とは|由来は仏教用語.縁起を担ぐ/縁起が悪い等は仏教の教えではない
そのように世界ができていると理解すると、なぜ苦しみから解放されるのでしょうか。
色即是空・空即是色を理解すると
ここからが色即是空 空即是色の深い理解となります。
私たちの肉体と精神、今画面を見ているスマートフォンやパソコン、それら「色」が「空」だと理解できると、
「空」であるもの事に執着するのが馬鹿馬鹿しいと思いませんか?
- 最新の電化製品
- 高価なブランド物
そういったものは、古い電化製品、安い物と同じ「空」です。
また、私たちの体も同じです。
体を「自分のもの」と思っているからこそ、良い見た目でいたようと努力します。
でもだれもが老いていきます。諸行無常とも言いますが、体が老いて、変わっていくことは誰にも止められません。
そして老いていく自分の姿に苦しむのです。
でもそんな「自分のもの」と思っている体も「空」です。
なんとなく仏教の言いたいことが伝わりますか?
伝わったという人でも、ただ表面的に「色即是空と空即是色」を理解するだけではダメです。
完全に「色即是空空即是色」を理解し、私たちの体や心、周りにあるものもすべて「空」と感じるようにならないと苦しみから解放されません。
では、完全に理解するとどうなるのか、それは「空」である「色」に執着しないようになるのです。。
自分が老いていこうと、周りにある大事なもの、高価な物が壊れたり、失われたりしても、そもそも「空」だと考えたら、醜くなっても、消えて行くさだめにあっても、
そのことを受け入れる自分であれば苦しいと思わなくなると思いませんか。
お釈迦様は、この世の苦しみが生まれる原因は、私たちが執着する気持ち、煩悩であると見抜きました。
空であると理解できず、美しくありたい、いいものを持ちたいと執着、煩悩を持つから私たちは苦しむのです。
この世界のあらゆるものが「空」であることを見抜き、心の底から理解したら、、何ものにも苦しむことはなくなるのです。
そうして安らかで楽しい境地の「涅槃の境地」にたどり着くことができるのです。
仏教はこの涅槃という苦しみから解放された後の世界を目指すために必要な考え方と方法を教えてくれているのです。
その考え方が色即是空と空即是色という言葉で表現されているのです。
涅槃とは|涅槃(ニルヴァーナ)の意味は苦しみの最高の境地=仏教のゴール
般若心経というお経についてはこちらで詳しく解説しています。
般若心経とは|全文の意味が分かると面白い!般若心経の現代語訳と意味解説
仏教の最も大事な3つの教えと「色即是空 空即是色」
仏教のたくさんある教えの中で、最も大事な3つの教えがあります。
それは三法印と言われ、以下の三つです。
これらの三つは「色即是空 空即是色」を解説していく中で少しずつ触れていました。
色即是空と空即是色は、仏教の最も大事な教えと繋がっているのです。
それら仏教の教えについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
諸行無常の意味とは|平家物語の”諸行無常の響きあり”の意味も含め簡単に解説
諸法無我とは|意味や簡単にイメージできる例で説明。諸行無常との関係とは
涅槃寂静の意味とは仏教の最終目標|読み方/概念をわかりやすくご紹介
また真理という言葉についてはこちらで詳しく解説しています。
真理の意味とは|仏教の真理と他宗教の真理,哲学の真理の意味は違う
色即是空と空即是色にまつわる話
「色即是空 空即是色」について解説してきましたが、豆知識や様々な説についてご紹介いたします。
空即是色は間違いという説
空即是色は間違いだという説があります。
これは考えの浅い一般の人が唱えたものではありません。
上座部仏教の長老というとても仏教に精通したスマナサーラ長老による説です。
スマナサーラ長老が著した「般若心経は間違い?」という本の中で唱えているとても有名な説です。
空即是色は間違っているというのは、次のような趣意で指摘しています。
「色即是空 空即是色→琵琶は楽器であり、楽器は琵琶だ」
琵琶は楽器と言うのが成立しても、楽器は琵琶だとはならないですよね。というのですが、この空即是色は間違いだという説について気になる方はぜひ本を読んでみてはいかがでしょうか。
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“色即是空”の英語表現と”空即是色”の英語表現
色即是空 空即是色の部分に限らず、般若心経は様々な欧米の仏教学者によって英語訳されています。
日本の仏教学者によっても「色即是空 空即是色」の表現は人によってまちまちですし、般若心経を漢訳した玄奘三蔵の前の鳩摩羅什の間でも違います。
あくまで、今回ご紹介する色即是空と空即是色の英語訳は、一人の仏教学者の訳出です。
「Form Is Emptiness, Emptiness Is Form」
出典:Zen words for the heart, Norman Waddell
formというのは形、姿を意味する単語で「色」に当たり、
emptinessというのは、何もない状態・空虚を意味し「空」に当たります。
ちなみに、英訳が気になる方は般若心経は英語で「Heart Sutra」と言いますので、調べてみてください。
空は大乗仏教に見られる考えという説
「色即是空 空即是色」という言葉は、大乗仏教という仏教の一派で特に重要視される言葉です。
大乗仏教ともう一つ、大きな一派に「空即是色は間違いだ」と主張していたスマナサーラ長老が所属する上座部仏教というものがあります。
この上座部仏教では空という言葉はあまり重要視されません。
「空」という言葉は、お釈迦様が実際に教えた言葉ではなく、仏教を研究した大乗仏教の僧侶の方がまとめ上げた言葉だと言われるのです。
しかし、初期仏教研究の第一人者の中村元教授によると、
空は虚妄と言う言葉と同じと考えられ、空の概念があったとされます。(参考:原始仏教の思想Ⅰ 中村元 春秋社)
ちなみに、色即是空 空即是色を含む般若心経はサンスクリット語の経典があるのですが、それらはお釈迦様の言葉ではなく、後の世の誰かによって作成されたものとされます。
クレヨンしんちゃんの家の掛け軸には色即是空の文字
これは仏教の教えとは全く関係ないのですが、国民的アニメのクレヨンしんちゃんの寝室の床の間には「色即是空」という掛け軸が掛けてあります。
どんな意図があるのか不明ですが、興味深いですね。