お釈迦様の誕生日|4月8日の花祭り・甘茶の由来や仏陀誕生の伝説を解説

お釈迦様の誕生日

お釈迦様の誕生日の4月8日

お釈迦様の誕生日である4月8日はその誕生をお祝いする日として日本各地の寺院でお祀りが行われます。

日本のみならず、お釈迦様の誕生日は世界の国でお祝いされますが、日付が違ったり、そのお祝いの仕方も少し違います。

今回はお釈迦様の誕生日の日本でのお祝いの方法やその由来、また世界のお釈迦様の誕生日のお祝いについてご紹介いたします。

お釈迦様の誕生日は花祭り(灌仏会)でお祝い

お釈迦様の誕生日の4月8日には、花祭り・灌仏会(かんぶつえ)等の呼び名で、お釈迦様の誕生を祝うお祭りが行われます。

実は、この花祭りや灌仏会を5月8日等に行う寺院もあります。

これは、昔日本で利用されていた暦において、お釈迦様の誕生日の誕生日を4月8日にしていたのを、新暦に直したときに大体1カ月の差が生まれることから5月8日に行う寺院が生まれました。

日本でお釈迦様の誕生日を祝うのは、推古14年(606年)の4月8日という日本書紀の記述から1400年もの前からで、かなり歴史のある行事です。

ちなみに灌仏会という言葉が見られるのは平安時代の840年からですが、花祭りという言葉はさらに後の明治時代から利用されるようになります。

ちなみにこの他にも、

  • 降誕会(ごうたんえ)
  • 龍華会/竜華会(りゅうげえ)
  • 仏生会(ぶっしょうえ)
  • 浴仏会(よくぶつえ)
  • 花会式(はなえしき)
  • 仏誕会

などの呼ばれ方もあります。

お釈迦様の誕生については伝説的な逸話が残されています。

まずはそれらについてご紹介いたします。

お釈迦様の誕生の伝説

お釈迦様の誕生は、紀元前6.5世紀とあいまいです。

誕生された場所は現在はネパールにあるルンビニーという地です。

お釈迦様は、ヒマラヤ山脈に近い釈迦様(シャーキャ族)という王族の子として生まれます。

お名前はゴータマ・シッダールタで、釈迦族の生まれということでお釈迦様と呼ばれたり、仏になられたことから仏陀と呼ばれます。
※今回はお釈迦様で統一します。

父はシュッドーダナー王(浄飯王)、母はマーヤー王妃(摩耶夫人)です。

お釈迦様を解任されたマーヤー王妃は、その懐妊をしたとき、夢の中で右脇から白い象が体に入っていくことを夢見たそうです。

そして誕生時には次のような伝説を残しています。

花畑でお釈迦様が誕生される

お釈迦様の母は、懐妊して出産をするため故郷(コーリヤ国)に戻ろうとしていたところでした。

その途上にあるルンビニーのお花畑にて一休みをしていたところ、アソーカの樹(無憂樹)の枝に手を伸ばしたときに、摩耶夫人の右脇からお釈迦様が誕生されました。

お釈迦様の誕生直後の7歩の意味

お釈迦様は誕生されたと同時に、7歩進んで、右手は天を、左手は大地を人差し指で指して、『天上天下唯我独尊』という誕生偈(たんじょうげ)と呼ばれる言葉を発しました。

お釈迦様は四方に7歩進んだと言われるのですが、この7という数字には後にお釈迦様が説法する六道の輪廻から解脱したものであることを意味するとされます。

六道輪廻(りくどうりんね)とは

六道とは、地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天道という6つの世界を意味します。

簡単に言うと、これら6つは、いずれも苦しみを伴う世界であり、人間道は楽しいこともあるが、つらいことも多くあるという世界です。

地獄道や餓鬼道などは、人間道よりも辛いことばかりの世界ですが、私達人間ほとんどはみなこの6つの世界のどれかを行き来しているとされます。

人として生まれても、そこで良くないことを続ければ地獄に落ちるなど、常にこの6つの世界で転生を繰り返すこと、これを輪廻と言います。

この六道を超越した仏の世界、悟りの境地にたどり着く(=解脱)、お釈迦様は生まれたときにこの”6″道を超える”7″歩を歩んだとされるのです。

お釈迦様が言ったという天上天下唯我独尊とは

お釈迦様が7歩、歩んだ後に仰ったとされる『天上天下唯我独尊』という言葉には様々な解釈があります。

一般的に『天上天下唯我独尊』と言うと、「我のみがこの世で唯一尊い」という意味にとらわれていますが、お釈迦様がそのようなことを言ったとは考えにくいことから、次のような解釈がされます。

「この世では私たち人間は尊い存在だ」
→つまり、先ほどの六道という輪廻の中で生きている私たちが、仏になる可能性のある人間道に生まれついたことは大変に有難いこと

このあたりについてさらに詳しく知りたい方は僧侶の方や学者の方などが書いた本などで解説されていますので、ぜひそちらをご覧ください。

お釈迦様の誕生を祝福して龍が甘露を降らせる

お釈迦様が誕生された時、その誕生を祝い、八大竜王の阿那婆達多(あなばだった)竜王が甘い雨(甘露)を降らせたとされます。

この甘露はお釈迦様の産湯として使われたと言われます。

ちなみに、この甘露を降らせた龍は、九つの頭を持つ龍、九頭の龍などとも言われますが、いずれにしても、龍族の王がお釈迦様の誕生を祝福したとされます。

お釈迦様の誕生日のお祝いの仕方

お釈迦様の誕生日に行われる花祭りや灌仏会について簡単にご紹介します。

先ほど見た、お釈迦様の誕生の伝説に基づいた様々なお祝いの仕方がこれらのお祀りで見られます。

お釈迦様の誕生日の甘茶の意味

花祭りや灌仏会と言うと、無料で参拝者に振舞われる甘茶が有名です。

この甘茶は、先ほどのお釈迦様の誕生時に龍が降らせたとされる甘露を表現しています。

この甘茶はお釈迦様の誕生時のお姿を表現した誕生仏(下図)に柄杓で掛けその誕生をお祝いします。

お釈迦様の誕生日 誕生仏 画像

参拝された方であれば、甘茶をかけることができます。

甘茶とは

ちなみに、このお釈迦様の誕生日で脚光を浴びる甘茶は次のようなご利益があると言われています。

  • 甘茶を飲むことで無病息災のご利益に預かれたり、目につけると目が良くなるとされる
  • 甘茶で墨をすって習字をすると字がうまくなる
  • 甘茶で墨をすった墨汁で害虫除けを作ることができる

等々いわれますが、実際甘茶の原材料となるユキノシタ科のアマチャという植物は健康効果もあり、漢方にも利用されているとされます。

ちなみに、クリスマスというとケーキ、欧米では七面鳥などの食べ物がありますが、お釈迦様の誕生日に縁のあるケーキや食べ物は特にありません。

地域によっては、お餅をお供えすることもあるそうですが、全国的にはそういった風習はないです。

その他、灌仏会や花祭りで見られる、花御堂などについてはこちらで解説していますのでぜひご覧ください。

灌仏会とは|甘茶やお花等でお釈迦様の誕生日を祝う行事の意味を解説

お釈迦様の誕生日がいつかは国で違う

日本以外でも仏教は広く信仰されており、仏陀の誕生日をお祝いする文化は世界で見られます。

特に、日本で信仰される仏教(大乗仏教)と大きく違いが見られる東南アジアや南アジアで見られる小乗仏教ではお釈迦様の誕生日を祝う日が大きく違います。

中国や韓国のお釈迦様の誕生日は旧暦の4月8日に

日本がお釈迦様の誕生日をお祝いするようになったのは、中国を経由した仏教によるものです。

中国では、お釈迦様の誕生日を4月8日としたことから、中国文化圏と言われる中国や韓国では、お釈迦様の誕生日は4月8日とされるのですが、旧暦の4月8日(つまり新暦では1カ月ほどずれが)に行われます。

中国や韓国でのお釈迦様の誕生日はニュースで大々的に報じられるような大規模なものも多く、韓国のお釈迦様の誕生日のお祝いは「燃灯祝祭(ヨンドゥンチュッチェ)」と呼ばれ、毎年ソウル市内にて、盛大なパレードが行われています。

東南アジアや南アジアのお釈迦様の誕生日は

タイやミャンマー、カンボジアと言った東南アジアやインドなどの南アジア地域では、中国暦に直された4月8日以外をお釈迦様の誕生日としている国が多くあります。

これらの国ではテーラワーダ仏教と呼ばれる小乗仏教が広く広まっています。

日本よりも重要視する国が多く祝日となっている国もあります。

これらの地域では仏教暦におけるウェーサーカ(Vesak)月に行われるのですが、この月が大体今の暦における3~5月に当たります。

日本よりも盛大にお祝いされるため、観光に行くのもおすすめです。

ちなみに、お釈迦様の誕生日は英語ではシンプルに「Buddha’s Birthday」と呼ばれます。

仏教でお釈迦様の誕生日以外で重要な日

仏教においてお釈迦様の誕生日はとても重要な日とされています。

この花祭り・灌仏会等と呼ばれるお釈迦様の誕生日祝いの他に、仏教では重要な法要が行われる日が2つ、

というものがあります。

それらについても簡単にご紹介いたします。

成道会(じょうどうえ)

成道会はお釈迦様が悟りを開いた12月8日に行われる法要です。

お釈迦様が悟りを開いて、この世の真理に気づかれたこの日は仏教の宗派を超え成道会という、悟りを開かれたことをお祝いする日となります。

お釈迦様が悟りによって体得した言葉を伝えるのが仏教の始めですので、とても大事な日とされます。

成道会についてはこちらで詳しく解説しています。

成道会とは|12月8日にお釈迦様が悟りを開いたお祝いの日を意味

涅槃会(ねはんえ)

涅槃会は、お釈迦様の命日とされる2月15日に行われる法要です。

お釈迦様が入滅され、この世の人間としての身体的な束縛から放たれ、完全なる涅槃の状態に入った日に、お釈迦様を偲ぶ法要として行われます。

涅槃会についてはこちらで詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

涅槃会とは|お釈迦様の命日の法要とだんご・はなくそ等の由来を紹介

これら3つの法要を三仏忌などと言いますが、この中でも花祭り・灌仏会は特に盛大なお祝いになります。

これまで足を運んだことがなかった方も、気軽に入ることができますので、一度赴いてみてはいかがでしょうか。

お釈迦様の誕生日はほとんどの寺院(日蓮正宗を除く)で行われていて、寺院によっては稚児行列が行われたり、楽しいイベントを行っています。

東京なら増上寺や浅草寺のような大寺院にて、大規模な花祭りが行われています。