観自在菩薩とは|意味など般若心経というお経に出てくる菩薩様を解説

観自在菩薩

観自在菩薩とは

観自在菩薩とは、一般に観音様と呼ばれ信仰を集める仏様の名前の一つです。

日本で最も読まれているお経の「般若心経」の冒頭で、

観自在菩薩行深般若波羅密多時かんじざいぼさつぎょうじんはんにゃはらみったじ

と観自在菩薩が出て来られ、その後この世の真理を説きます。

観自在菩薩は般若心経の中で「波羅蜜」つまり、「苦しみから解放された境地」に辿り着くための考え方を教えてくださっています。

仏教とは「苦しみから解放された境地(彼岸涅槃と言われる)」に辿り着く方法を教えているので、般若心経はそのエッセンスが詰まったお経となります。

観自在菩薩は「かんじざいぼさつ」と読みます。

観自在菩薩の意味・役割

観自在菩薩という漢字の意味は次のようなものです。

  • 様々なこの世の事柄をることが自在にできる、悟りを得る修行をしているもの(=菩提薩埵ぼだいさった)

 

観自在菩薩は、彼岸・涅槃と言われる苦しみのない境地に辿り着く修行をしていて、修行を完成させ涅槃の境地に至る直前の状態にありながら、多くの人を救うために私たち人間などの衆生に寄り添ってくださってくださる慈悲深い菩薩様です。

「観自在」という言葉は般若心経の意味を理解すると、とても意味の深いものになります。

般若心経では、この世のあらゆるモノや現象を「色即是空 空即是色」と表現します。

普通の人はこの真理の「色即是空 空即是色」を知らないもしくは理解していないで、様々な欲望・煩悩を抱えています。

そのため、どんな人も自分の欲、固定概念を通して物事を見て判断するため、この世を自由自在に見ることができません。

観自在菩薩はこの世の真理を見極め、様々な煩悩から解き放たれたことで、物事を正しく見定めることができます。

正しく物事を観て、私たちの苦しみを取り除き、救ってくださるのが観自在菩薩という菩薩様です。

観自在菩薩という菩薩様は、他にも観世音菩薩などと表現されますが、一般に観音様として信仰されます。

観音様という菩薩は一般に知られる役割は

  • 悩める衆生の声を広く聴きに救いの手を差し伸べる慈悲深い菩薩

となります。

観音様は古くから、人々が苦しいことがあったときに、救いを求め信仰されてきた菩薩様です。

観自在菩薩とお経(般若心経)

観自在菩薩というお名前は冒頭でもご紹介しました、般若心経に出てきます。

般若心経の中の観自在菩薩という字が出てくる部分の意味について解説いたします。

観自在菩薩行深般若波羅密多時の意味

これは、「観自在菩薩が行深般若波羅蜜多の時」という意味です。

行深般若波羅蜜多を分解して、見ていきます。

「行」と言うのは「修行」のことです。

そして「深」はその修行を深くしていた、つまり、修行を突き詰めて行っていたということです。

「般若波羅蜜多」と言うのは、「智慧の完成」と訳されます。

智慧の完成と言うとなんだかピンと来ないと思いますが、平たく言うと、「苦しみばかりのこの世界の苦しみから解放されるために必要な智慧を得ること」です。

つまり、観自在菩薩行深般若波羅蜜多時という言葉の意味は、

観自在菩薩が、苦しみから解放されるために必要な知恵を得るための深い修行を行っていた時に」となります。

ちなみに般若波羅蜜多という言葉は、漢字に意味はありません。

サンスクリット語という元々のお経に書かれていた言葉の音を漢字に置き換えたものです。

波羅蜜多は波羅蜜とも表現されるのですが、元は「パーラミター」というサンスクリット語でした。

このパーラミターを意味で漢訳すると「到彼岸」と表現します。

彼岸と言うのは、苦しみから解放された後にたどり着く世界のことです。

実は春のお彼岸/秋のお彼岸と言うのはこの波羅蜜という言葉とかかわってくるのですが、そのことを説明すると長くなりますので、興味がある人はこちらをご覧ください。

春のお彼岸/秋のお彼岸とは|春彼岸と秋彼岸の意味や2019年いつかを解説

また、観自在菩薩が教えを説いた智慧についてはこちらで詳しく解説しています。

智慧とは仏教が説く苦をなくす鍵|知恵と智慧の意味の違い等解説

観自在菩薩の般若心経の中の役割

般若心経と言うお経は観自在菩薩が話していることをまとめたお経です。

観自在菩薩行深般若波羅蜜多時の後に続くその後、照見五蘊皆空…と言うのはほとんどが観自在菩薩が仰ったありがたい言葉と言うことです。

般若心経では、観自在菩薩がお釈迦様の仰ったことを、舎利子(しゃりし)というお釈迦様のお弟子さんに教えている場面を描いています。

お釈迦様(仏陀)が説いた教えについて言うので、最初に仏説という言葉が入ってくるのです。

般若心経というお経についてはこちらで詳しく解説しています。

般若心経とは|全文の意味が分かると面白い!般若心経の現代語訳と意味解説

観自在菩薩のご真言

観自在菩薩(観世音菩薩)のご真言は

おん あろりきや そわか

です。

ちなみに、観音様と呼ばれる菩薩様には、実は6観音などとも言われ様々な姿があります。

これは私たちを救ってくださるために、それに応じて様々な姿に成り変わって、この世に現れてくださっていると言うのです。

そして、それぞれの観音様でご真言も変わります。
※ご真言は宗派やお寺で変わりますので、お寺で拝んだ際どこかにかかれていることが多いので、そちらをご確認ください。

観自在菩薩の別名 読み方 ご真言
聖観音 しょうかんのん おん あろりきや そわか
千手観音 せんじゅかんのん おん ばざら たらま きりく
十一面観音 じゅういちめんかんのん おん まかきゃろにきゃ そわか
如意輪観音 にょいりんかんのん おん ばらだ はんどめい うん
馬頭観音 ばとうかんのん おん あみりとう どはんば うん はった そわか
不空羂索観音 ふくうけんさくかんのん おん はんどま だら あぼきゃ じゃやでい そろそろ そわか

観自在菩薩・観音様についてさらに詳しく

観自在菩薩や観世音菩薩や千手観音やと色んな観音様が出てきましたので、少し観自在菩薩という菩薩様についての情報をまとめます。

観自在菩薩は日本や中国、チベットなど仏教の中の大乗仏教というグループで広く信仰されている菩薩様です。

タイやミャンマーという上座部仏教が盛んな仏教国では実は観自在菩薩はほとんど見られません。

観自在菩薩は観世音菩薩や、他にも

  • 観音菩薩(かんのんぼさつ)
  • 救世観音(くせかんのん)

と様々な名称があります。

これはサンスクリット語で書かれたお経を昔中国に居たとても偉いお坊さんが中国語に翻訳されたときに解釈の違いで生まれました。

般若心経の中に出てくることで有名な観自在菩薩という訳は、西遊記のモデルにもなった玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)が出したものです。

一方、観世音菩薩という訳は、鳩摩羅什(くまらじゅう)という、これまたとても偉く有名なお坊さんが出したものです。

いずれも、観音様の語源はサンスクリット語の「アヴァローキテーシュヴァラ ボーディサットヴァ」です。

観自在菩薩と訳した玄奘三蔵は、

「アヴァローキタ(観)」と「イーシュヴァラ(自在)」と捉えて、観自在「ボーディサットヴァ(菩薩)」と訳したそうです。

一方の鳩摩羅什は、

「アヴァローキタ(観)」と「スヴァラ(音)」と捉えた説や、観音菩薩について書かれた観音経というお経の内容から観世音菩薩と訳したなどの説があります。

いずれにしても、衆生をよく観て、その声を聴いて苦しみから救ってくださるという現世利益を与えてくださると考えられます。

ちなみに玄奘三蔵は観音自在菩薩の導きによってインド(天竺)へ旅に出たと言われるなど伝説があります。

観自在菩薩と様々な姿

観音菩薩は多くの衆生を救いだすために、三十三応身と言い様々な姿に変わって私たちを救ってくださると言います。

その姿を変えた姿が、千手観音と言う手を何本も持つ観自在菩薩や、十一面観音というこの世をあまねく見渡すために十一の顔が頭に持っていらっしゃる観自在菩薩となります。

ちなみに、観自在菩薩は阿弥陀如来の化身であるや、阿弥陀如来の子であるというお経があったり、様々な説があります。

それほど、多くの人に信仰されていたということでしょう。

ちなみに観自在菩薩は千手観音など様々な観音様という姿だけでなく、歓喜天(聖天様)に姿を変えるなど、あらゆる姿で私たちを救ってくださると考えられています。

観自在菩薩のお姿・画像

最後に観自在菩薩の様々なお姿の写真画像をご紹介いたします。

観自在菩薩はすらっと細い女性のような美しい曲線を持って表現される像が多くあります。

観自在菩薩 画像1

上記の画像は、薬師寺に安置される国宝の観音菩薩像です。

観自在菩薩 画像 千手観音像

上記の画像は千手観音像、下の画像は十一面観音像です。

観自在菩薩 画像 十一面観音像

頭の上に小さな観音様の顔がついているのがわかりますね。