イワナガヒメとはどんな神様?
イワナガヒメ(磐長姫)は日本神話の中で、とても重要な役割を持つ国津神という神様です。
その物語は少々悲しいものではありますが、とても興味深いイワナガヒメについて今回は見ていきましょう!
イワナガヒメは漢字で書くと
イワナガヒメを漢字で書くと複数の漢字がありますが、最もよく知られた漢字は「磐長姫」です。
その他にもたくさんの漢字表記が存在します。
- 岩長姫
- 岩永姫
- 石長比売
イワナガヒメの別名
イワナガヒメかもしれないという説ですが、古事記に出てくる
- コノハナチルヒメ(木花知流比売)
というスサノオノミコトの子の八島士奴美神(ヤシマジヌミノカミ)と結婚する神様がイワナガヒメの別名だとする説があります。
コノハナチルヒメはイワナガヒメと同じオオヤマツミノカミという神様の娘なのです。
イワナガヒメのご利益・ご神徳は?縁結びの神?
イワナガヒメは神話の中で、ニニギノミコトとコノハナサクヤヒメの子の寿命を短くするという呪いをかけるという、少々怖いと感じさせる物語を持つ神様ですが、様々なご利益・御神徳を持っておられる神様です。
- 縁切り
- 縁結び
- 延命長寿
- 安産
- 家内安全
- 海上安全
縁切りと縁結びの二つを持つ神様です。
イワナガヒメの神格
- 岩の神
- 寿命長久の神
イワナガヒメが祀られている神社・神宮
- 雲見浅間神社(静岡県賀茂郡松崎町雲見386-2)
- 貴船神社(京都府京都市左京区鞍馬貴船町180)
貴船神社の結社(ゆいのやしろ)に祀られるイワナガヒメが縁結びの神として有名 - 大将軍神社(帰宅西賀茂角社町129)
- 銀鏡神社(宮崎県西都市銀鏡492)
- 伊砂砂神社(滋賀県草津市渋川2-2-1)
- 月水石神社(茨城県つくば市)
等々
イワナガヒメと富士山・八ヶ岳との関係
イワナガヒメが有名なのは日本神話の中での悲しい話だけではありません。
富士山の祭神に祀られているコノハナサクヤヒメはイワナガヒメの妹ですが、イワナガヒメの呪いを受けてしまったといわれる神です。
そんな物語もあってか、イワナガヒメが祀られている雲見浅間神社のある雲見という地域では富士山を美しいと考えるだけで不幸なことになると言い伝えがあります。
八ヶ岳の神話
また、山梨に伝わる神話で、その昔富士山と高さ比べをした八ヶ岳の神話にもコノハナサクヤヒメとイワナガヒメ後程関係していると考えられるようになりました。
いずれにしても、美しい富士山(コノハナサクヤヒメ)とそれをうらやむイワナガヒメの神話の物語がとても関連しています。
イワナガヒメの神話の中の物語
イワナガヒメの悲しい物語について見ていきましょう。
ただ、イワナガヒメは悲しいだけでなく、今につながるとても重要な役割を担っています。
イワナガヒメの継続・関連する神様
- コノハナサクヤヒメ/木花開耶姫(妹)
- オオヤマツミノカミ/大山津見神(父)
また、直接のつながりはありませんが、
- ニニギノミコト/瓊瓊杵尊/邇邇芸命
- 火照命/ホデリ/海幸彦
- 火須勢命/ホスセリ
- 火遠理命/ホオリ/山幸彦
これらの神ともとてもつながりのある神です。
コノハナサクヤヒメの結婚
イワナガヒメが出てくるのは、イワナガヒメの妹であるコノハナサクヤヒメがニニギノミコトに見初められ求婚を受けた後です。
ニニギノミコトはアマテラスオオミカミ(天照大御神)の孫に当たり、とても精悍な若者であったことでした。
コノハナサクヤヒメが求婚を受けたことを父の神である、オオヤマツミノカミに報告をしたところ、オオヤマツミノカミは大喜びをします。
そして、オオヤマツミノカミは求婚を了承し、さらにニニギノミコトに求婚を受けたコノハナサクヤヒメの姉であるイワナガヒメも一緒に嫁がせます。
しかし、このことが、イワナガヒメの呪いと呼ばれる悲劇につながります。
イワナガヒメの呪い
コノハナサクヤヒメとともにニニギノミコトの許へと向かったイワナガヒメでした。
しかし、ニニギノミコトはイワナガヒメを追い返します。
その理由はイワナガヒメが醜いからということです。
イワナガヒメが帰ってきたことで、事の顛末を知ったオオヤマツミノカミは激怒します。
そしてこのように言います。
「私がコノハナサクヤヒメとイワナガヒメを一緒に嫁がせたには意味があります。
コノハナサクヤヒメは見た目が木の花(桜の花と言われる)のように美しいのですが、すぐに散りゆくように命が短いのです。
一方イワナガヒメは岩のように一生の命を持っているので、2人を嫁がせたました。
しかしイワナガヒメを追い返してしまったことで、あなたとコノハナサクヤヒメの間の子の命は短くはかないものになるでしょう」
(アマテラスオオミカミ等の天津神は長い命を持っているはずで、ニニギノミコトもアマテラスオオミカミの子孫であり、その子も長い命を持つべきでした)
この父の神の言葉の通り、ニニギノミコトがイワナガヒメを断ったことで、子供に寿命の呪いができたというのです。
イワナガヒメのその後
その後、コノハナサクヤヒメが一晩でニニギノミコトの子を懐妊したということを知ったイワナガヒメは、先ほどのオオヤマツミノカミの言った通り、コノハナサクヤヒメの子を呪ってしまいます。
そして、ニニギノミコトに帰らされてからは、毎日毎日鏡をのぞいては、自分の顔が美人であればと嘆き悲しんでいました。
ある日、鏡をいつも通り覗いたところ、そこのは龍のように恐ろしく醜い龍の顔が映っていました。
その顔に驚いたイワナガヒメは持っていた鏡を放り投げてしまいます。
イワナガヒメが投げた鏡は遠くの山まで吹っ飛んでいき、その山の麓の村を明るく照らしたと言われています。
また、あまりの悲しみでイワナガヒメは伊豆半島の烏帽子山と言う山に引きこもったとも言われます。
それが富士山をほめてはいけないといわれる雲見浅間神社のある当たりです。
イワナガヒメの神話の物語は「バナナ型神話」
イワナガヒメのこの物語は、世界の神話にもよく似たものが多く見られます。
バナナ型神話と言うのは、東南アジアや旧約聖書の中にも出てくる、元々神だった、もしくは神の創造物であった人類が、永遠の命だったものから寿命を持つ生き物になったという物語です。
天皇家が神の子孫であるにもかかわらず、人類と同じ寿命を持つという矛盾を正当化させるためにイワナガヒメの物語は重要であると考えられているのです。