オモイカネ(八意思兼神)は知恵の神様として神話で活躍!神社へのお参りも人気

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オモイカネ(八意思兼神)という知恵の神様を解説

オモイカネ(八意思兼神)は知恵の神様として日本神話で活躍する天津神です。

神道は自然崇拝の宗教であるため、日本の神様の多くは自然を司る神様が多い中、オモイカネ(八意思兼神)は珍しい「知恵・思考・思慮」という概念を神格化した神様です。

オモイカネ(八意思兼神)は日本神話に出てくる天の岩戸・国譲り・天孫降臨と言った重大な局面で知恵を絞り、解決してゆくあまり目立ちませんが重要な神様です。

学業成就の神様としても有名であるため、天満宮(菅原道真公)と同じように受験生が神社へお参りをすることでも有名です。

今回はオモイカネ(八意思兼神)という神様の神話の中の活躍シーンやご利益・御神徳と言ったことを解説します。

オモイカネ(八意思兼神)の別名とは?

オモイカネは、漢字で書くと、

  • 思兼神
  • 思金神

と書くのが一般的です。

漢字の意味の通り、
「”“慮深い/優れた”“考力を”“ね備えた””様」

を意味する名前です。

他にも、

  • 八意思兼神/八意思金神(ヤゴコロオモイカネ)
  • 常世思兼神/常世思金神(トコヨオモイカネ)
  • 天思兼神/天思金神(アメノオモイカネ)
  • 天八意思兼命
  • 阿智彦(アチヒコ)
  • 信之阿智祝(しなのあちほうり)

と言った名前で呼ばれます。

八意思兼神/八意思金神という名前の
八意(やごころ)とは”様々な人の知恵、思慮“を意味する言葉で、オモイカネ(八意思兼神)という神様一人で、何人もの人の思考力を持つという意味です。

また、常世思兼神/常世思金神
常世(とこよ)とは、”海の向こうに広がる、不老不死・若返りも可能な理想郷”という意味や”人が死んで向かう死者の世界”とも考えられる国を意味します。

オモイカネ(八意思兼神)は常世の国からやってきた神様であるという説もあり、この名前の表記も存在します。

オモイカネ(八意思兼神)のご利益・御神徳

オモイカネ(八意思兼神)のご利益・御神徳は、

  • 学業成就(試験合格)
  • 技芸成就
  • 出世開運
  • 家内安全
  • 商売繫盛
  • 開運招福
  • 木工・金工職人守護

というご利益御神徳があります。

思慮深く、思考力のあることから学業や出世と言ったご利益・御神徳は想像がつくと思います。

木工・金工職人守護というのは、オモイカネのもう一つの表記「思金神」という名前から、大工の道具の曲尺(カネジャク)とつながり、建築関係でもご利益・御神徳もあると考えられています。

今でも、伝統的な建築現場の仕事始めの日に行われる手斧初(ちょうなはじめ)という儀式では、オモイカネを祀ります。

オモイカネ(八意思兼神)のご神格

  • 知恵の神
  • 学業の神

オモイカネ(八意思兼神)の祀られる神社

  • 秩父神社(埼玉県秩父市)
  • 気象神社(東京都杉並区光圓寺の氷川神社境内の末社)
  • 戸隠神社(長野県長野市戸隠)
  • 阿智神社(長野県下伊那郡阿智村智里)
  • 思金神社(神奈川県横浜市)
  • 八意思兼神社(神奈川県伊勢原市)

この他全国様々なところでオモイカネ(八意思兼神)は祀られています。

オモイカネ(八意思兼神)の神話の中の物語

それでは、アマテラスオオミカミ(天照大御神)も信頼する、日本神話の中で随一の知恵・思考力の持ち主のオモイカネ(八意思兼神)の物語を見ていきましょう。

オモイカネ(八意思兼神)の系図・関連する神

高御産巣日神(タカミムスビノカミ)(父)
栲幡千千姫命(たくはたちぢひめのみこと)(妹)
瓊瓊杵尊/邇邇芸命(ニニギノミコト)(甥)
天表春命(ウワハル)(子)
天下春命(シタハル)(子)

アマテラスオオミカミ(天照大御神)の信任の厚い神様

オモイカネ(八意思兼神)はその思考力・思慮深さから、様々な面でアマテラスオオミカミ(天照大御神)を助ける役割を担います。

特に有名な日本神話の中の物語をご紹介しましょう。

天の岩戸の時にアマテラスオオミカミを出す作戦を考える

天の岩戸(岩戸隠れ)という高天原(たかまがはら)の大事件でオモイカネ(八意思兼神)では大きな功績を残します。

この事件は、スサノオノミコト(素戔嗚尊)が葦原中津国(今の日本)を追い出され、一度高天原に滞在していた時、死人を出すようないたずらや、脱糞をして神殿を穢すと言った狼藉を働きます。

この出来事の責任を感じ、アマテラスオオミカミは天の岩戸という洞窟に結界を張って引きこもってしまいます。

太陽神であるアマテラスオオミカミがいなくなったため、高天原、葦原中津国と言った様々な国が闇の世界になり、悪霊が出現したり、様々な災害が起きます。

この問題を解決するべく、八百万の神々が天の安河の河原に集まり、どうやってアマテラスオオミカミを天の岩戸から引き出そうかと考える神々の中で、知恵の神様であるオモイカネ(八意思兼神)が妙案を思いつきます。その案は、

  1. 常世の長鳴鳥(ニワトリのこと)をたくさん集め、鳴かせる
  2. 八咫鏡(やたのかがみ)を作る
    (天金山の鉄と天の安河の川上の岩を使って鏡職人の伊斯許理度売命(イシコリドメ)に作らせる)
  3. 八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)を作る
    (勾玉をつなげた装飾品を玉祖命に作らせる)
  4. この作戦の吉凶をアメノコヤネとフトダマに天の香具山の雄鹿の方の骨とサクランボの木の枝を焼いて占う太占という方法で占ってもらう。
  5. 占いで吉と出たサカキという木に八尺瓊勾玉を巻き、八咫鏡を付け、幣帛(みてぐら)という布を掛けたり装飾を施します。
  6. アメノタヂカラオ(天津神で最も力の強いと言われる神様)に天の岩戸の岩の前で待機してもらい、アメノウズメノミコト(美しい神様)に踊ってもらうことを指示
  7. アメノコヤネは祝詞を奏上し、フトダマは先ほど作ったサカキを持って岩戸の前に待機をするまず、ここまでが準備段階です。
    そして、ついに作戦を決行します。
  8. たくさんの常世の長鳴鳥にコケコッコーと鳴かせ、アマテラスオオミカミに朝が来た(新たな太陽神が来た)のだと勘違いをさせる
  9. アメノウズメノミコトが上裸(全裸という説も)で八百万の神々の前で踊り、完成を上げさせる
    →アマテラスオオミカミに太陽神への歓声だと勘違いさせる、または何がそんなに楽しいのかとアマテラスオオミカミの興味をそそる
  10. アメノウズメノミコトが「アマテラスオオミカミ様より貴い神様が来たのだ」とアマテラスオオミカミに伝える
  11. 自分の代わりにどんな太陽神が来たのかとアマテラスオオミカミが天の岩戸を開き、フトダマが持った鏡にアマテラスオオミカミが映るようにする
    →アマテラスオオミカミが鏡に映った自分の姿を見えるようにする。
  12. オオミカミに鏡があると気づかせないで、鏡に映る神々しい神様はどんな神様かと思わせる。
  13. 鏡に映る自分を他の神と考えるアマテラスオオミカミがどんな神様が来たのかと確認するため天の岩戸から少し出たところを力持ちのアメノタヂカラオに引っ張らせて外に出す

かなり長い作戦ですが、オモイカネ(八意思兼神)の知恵によってアマテラスオオミカミを洞窟から出すことができ、世の中に光が戻り、無事世界が救われたという話です。

国譲りの時にアマテラスオオミカミと相談する

オモイカネ(八意思兼神)が続いて活躍するのは、日本神話の中でも重要な物語の国譲りの話です。

葦原中津国(葦原瑞穂の国)が国津神大国主命(オオクニヌシノミコト)によって国として出来上がりましたが、高天原(たかまがはら)にいる天津神にとっては、野蛮な国に見えていたようです。

野蛮な国から、愛と慈悲にあふれた国にするため、天津神による統治の必要があるとアマテラスオオミカミは考えました。
このことをオモイカネ(八意思兼神)を含む様々な神様と相談をして遣いを出すことにしました。

最初に候補となったのは、アマテラスオオミカミの子供であるアメノオシホミミという神様ですが、高天原から出るのを拒み舞う。

そこで、天津神を代表してアマノホヒという神様を国譲りの交渉の遣いに出します。

しかし、アマノホヒは大国主命(オオクニヌシノミコト)と仲良くなり、ともに葦原中津国を経営することになってしまい交渉は失敗します。

続いて、オモイカネ(八意思兼神)はアメノワカヒコという天津神を交渉に送り込みます。
しかしアメノワカヒコも大国主命(オオクニヌシノミコト)の娘を娶り葦原中津国に居続けてしまい失敗します。

この後、アメノワカヒコは高天原を裏切ったことによって、タカミムスビノカミに誅殺されてしまうという悲劇も起きますが、最終的には葦原中津国の国譲りのために、天津神最強と呼ばれる建御雷神(タケミカヅチ)を送り込み、国譲りを成功させます。

国譲りの物語は建御雷神(タケミカヅチ)と交渉をした、大国主命(オオクニヌシノミコ)事代主神(コトシロヌシ)建御名方(タケミナカタ)という神様のところで詳しく解説しています。

オモイカネ(八意思兼神)の国譲りの案は2回失敗をし、アメノワカヒコの死という悲しい出来事も起こしてしまいましたが、結果的には成功をします。

天孫降臨の時はニニギノミコトに付いて葦原中津国へ

そして、オモイカネ(八意思兼神)が日本神話で活躍する最後のシーンはニニギノミコトの天孫降臨についていく場面です。

天孫降臨後、オモイカネ(八意思兼神)は信濃の国に降り立ち、アチヒコという名前で、祀られるようになります。

オモイカネ(八意思兼神)まとめ

オモイカネ(八意思兼神)は日本の神話の中で、とても重要な場面で知恵者として大きく貢献をします。

オモイカネ(八意思兼神)は様々な文献を調べていく中で、神官という祭祀を司る性格を持っていた、天気を読む性格を持っていたと言った様々な性格を持つ神様と考えられています。

基本的には自然崇拝から生まれているとされる日本の神様の中で、「知恵の神様」として祀られるオモイカネ(八意思兼神)は少し特別な神様なのかもしれませんね。