歓喜天(大聖歓喜天)|聖天さんと親しまれる神様のご利益や怖い/祟りとは

歓喜天-大聖歓喜天

歓喜天(大聖歓喜天)とは|ご利益や祟りの噂をご紹介

歓喜天は、お聖天様(しょうでんさま)の名前で親しまれる神様です。

仏教の天部という神様のグループに属し、日本では古くから信仰されてきた神様です。

歓喜天様は他の神仏が聞かない願いも叶える

歓喜天様は他の神様や仏様が聞いてくださらないようなお願いも聞いてくださる、最後の砦ともいえる神様と言われます。

江戸時代には歓喜天信仰が広がり、

  • 天皇のご病気を治癒した挿話
  • 豊臣秀吉・徳川家康も歓喜天を信仰し天下統一という大事業を果たしたという
  • 紀伊国屋文左衛門・淀屋辰五郎など商売人が歓喜天を拝んで一代で巨万の富を成した話
  • 子供ができず悩んでいた夫婦が歓喜天を拝んで子ができた
  • 現代医学では20歳までしか生きられないとされた女性が、母親の一心の歓喜天信仰によって子供を持つ大人の女性にまで成長した

などなど、苦しんでいる人々が歓喜天によって救われたり、金運・勝運に関わる成功談もあります。

しかし、ご利益のお話も有名ですが、歓喜天は怖い神様で、正しく信仰をしなければ厳しい祟りがあるとされる神様でもあります。

今回はそんな歓喜天についてご紹介をいたします。

ちなみに、私の家系は歓喜天を信仰してきた家ですので、そういった個人の経験のお話もしていこうと思います。

歓喜天(大聖歓喜天)のご利益

歓喜天(大聖歓喜天)特に以下のご利益があると言われます。

  • 商売繁盛
  • 夫婦円満
  • 子授け・子宝
  • 安産
  • 恋愛成就
  • 除災招福
  • 病気平癒
  • 富貴栄達

等々

歓喜天という神様は、仏様の化身として私たちに現世利益をもたらしてくださると言われます。

歓喜天のご利益を表す「子孫七代の服を一代でとる」

よく歓喜天のご利益がすごいことを表す言葉で、「子孫七代の福を一代でとる」が言われます。

これは、歓喜天のご利益が相当にすごいことを意味する言葉で決して自分一代だけがご利益にあずかれるという意味ではありません。

七代分もの福を授けてくれる歓喜天ですのできちんと拝みたいですね。

歓喜天は男根の神様

歓喜天祀る寺院は特に有名な生駒山宝山寺のように商売人が深く信仰することで有名です。

そのため、商売繁盛のご利益が有名ですが、歓喜天は元々男根を表現する大根をお供え物にするなど、性・愛欲の神様として知られます。

また、秘仏中の秘仏とされる歓喜仏は象が2体抱き合っているというとても珍しい仏像です。

そのため、恋愛のご利益も有名です。

また、歓喜天修法を会得した僧侶による御祈祷では、難病の平癒にも功徳があるとされ、さらには呪殺という人を死に至らしめることもできるとまで言われます。

これらは歓喜天信仰の段で詳しくご紹介します。

歓喜天(大聖歓喜天)のご真言

歓喜天を拝む際に唱えるご真言は

おん きり(きりく) ぎゃく うん そわか

おん ぎゃく ぎゃく うん そわか

です。

歓喜天のご真言の効果

ご真言を唱えるだけで効果があるとは個人的には思いませんが、一般的には歓喜天のご真言を唱えることで次のような効果があると言われます。

  • 商売繁盛
  • 恋愛成就
  • 諸願成就
  • 病気平癒
  • 子宝

等々

ご真言を唱えるにしても、一応歓喜天を拝む際の心得を持って行うことをおすすめします。

以下では、歓喜天にまつわるお話をします。

歓喜天は怖いや歓喜天信仰の祟り/罰の話

歓喜天と言うと、古くから霊験あらたかで有名で歓喜天は人気の神様でした。

歴史的にも古くは平安時代の書物白宝口沙という文献の中で右大臣の娘の歓喜天信仰や、戦国大名の豊臣秀吉、徳川家康の歓喜天信仰が見られます。

しかし一方で、歓喜天は一度信仰すると信仰をし続けなければ授かったご利益の何倍もの罰を受けるという怖い話もあります。

迷信と言えば、迷信ですが皆さんが歓喜天をご信仰するかどうかを考える上でも重要なことだと思いますので、歓喜天は怖いという話をご紹介します。

ちなみに、歓喜天は怖いというのはただの流言飛語だと言う僧侶の方もいらっしゃいますし、関西でお聖天さん信仰が古くから広まっていて、関東ではあまり広まっていないとされますが、これは徳川家康が歓喜天のご利益を独占するために江戸で歓喜天は怖い神様だと言ったことが原因だと言われます。

話には尾ひれがつくものと言われますが、いいことも悪いことも言われるということは、それほど歓喜天という神様はすごいと言うことだと思います。

僧侶・行者さんも歓喜天(聖天様)は怖いと言う

歓喜天を信仰することが怖いというのは一般の人が何の根拠もなく言っているのはありません。

天台宗の高僧で、瀬戸内寂聴さんのお師匠さんにあたる今東光(こんとうこう)という僧侶の方は、歓喜天について次のように述べたと言います。

天台や真言の坊主は触らぬ神に祟りなしとばかりに天部は避けて通りよる。大阪の四天王寺にも聖天堂があるが、あそこの坊主は目をつぶって前を通りよる。それほど天部は怖いものです。今どきの人が聞くと不思議ですが、これは体験してみないとわからない。

また、行者さんという仏法修行、修験道の修行をする方々でも、歓喜天を拝んでいるというと大変ですねと言われるとされます。

歓喜天が怖いと言われる理由の一つはガネーシャと言う神の存在

後程詳しく解説しますが、歓喜天という仏教の神様(天部)の由来はインドのヒンドゥー教で信仰されている障害を与えたり、除いたりしてくれるという怖い神様のガネーシャです。

この神様がインドやネパールでは畏怖を持って信仰される神様であるということも歓喜天が怖い神様と言われる要因です。

仏教の神様である天部は元々はインドの神様や鬼という存在で、それらが仏教に帰依してご利益を与える存在になったのです。

天部について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

天部とは|仏教の守護神、天部衆の神様の種類や信仰,有名な仏像を紹介

歓喜天信仰はご利益がすごい反面作法を守ることが重要とされる

ここまで歓喜天が怖い神様とされるのは、歓喜天という神様を正しくお祀りする方法(歓喜天修法)がとても厳しく、祀り方を間違えたら罰を受けると言われるからです。

この話は基本的には仏法に帰依する僧侶の方や行者さんのお話で、一般のお参りする人達が厳しい戒律を守るということはありません。

しかし、一般の人でも歓喜天のご利益にあずかれば、その分お礼を厚くすることが大事だとされます。

もし歓喜天のご利益に預かったのに、神様へのご恩を忘れるようなことがあれば、ご利益を超える罰を受けると言われます。

こういった類の話は歓喜天に限った話ではありません。

上記の今東光大僧正のお話にもある、天部の神様の中で、

お稲荷様としても有名なダキニ天(荼枳尼天)もまたご利益がすごい反面、きちんと礼儀正しくお礼も行わないといけないと言われます。

このような神様の信仰と祟りの話の原因は、

  • 礼儀を守らずお礼をしないことを神様が怒ることだ
  • 眷属(神様のお使い)が怒って不幸をもたらすことだ

などなど様々な理解がありますが、原因が何にしても大事なのは、

神様をお参りするなら、ご利益に預かっても預からなくても、きちんとお礼をするなど礼儀作法をわきまえる必要がある

ということです。

神様は何でも聞いてくれるというものではなく、正しい心がけを持って参拝をし、お願いをさせていただく。

そして、人と接するのと同じく、神様仏様にも常日ごろから感謝をするのが大事だと言われます。

一般の人であれば当たり前のことを当たり前に行えば、歓喜天という神様が怖いということはありません。

後程詳しく歓喜天をお参りする際のご作法はご紹介します。

歓喜天(大聖歓喜天)の祟り/神罰の話

歓喜天の祟りの話はいくつかありますが、有名なのは京都の大学教授が作法も知らずに歓喜天をお参りをして事故死をしたという話。

その他にも、歓喜天を祀る寺院で代々の住職が独身でなければならないとされたお寺で嫁をもらった住職がいました。

しかしその住職がもらった嫁は嫁入りしてすぐになくなるのです。
そして、またお嫁をもらったところその方も死んでしまったのです。

上記のものは有名な僧侶の方がお話していたものです。

また商家で歓喜天を信仰して富貴名誉を得た人が信仰を止めると不幸が続いたなど様々なお話があります。

最後の商家のお話は単純に慢心した人間の栄枯盛衰で片付けることもできると思いますが、歓喜天の祟りの話は古くから残されています。

祟りの話ではありませんが、生駒聖天の開祖の湛海和尚は、江戸時代きっての高僧である浄厳僧正と仲が良かったとされます。

この浄厳僧正は湛海和尚に「もう聖天の信仰はやめた方がよいのでは?」と何度か言葉をかけていたとされます。

歓喜天は人を選ぶという逸話

歓喜天の祟りの話と共に、有名な話で歓喜天様は宿世の縁がないと拝めないと言われます。

怖いや祟り以前の話で、縁がない人は、拝むことすらできないのです。

縁があるかどうかは、運要素と言うよりも、信仰する心と行動とされます。

歓喜天と縁を結び、歓喜天のご利益を得るには、歓喜天を心から信仰し、ひたすらに信心をすることが大事なのです。

そして、ご縁があればそのご縁を粗末にすることはせず、きちんと拝みましょう。

中途半端な信仰心では、ご利益を授けていただけないどころか先ほどの祟りの話にもあるように祟りに遭うかもしれません。

ここまでは怖い話や、本当かどうかわからない不思議な歓喜天の話ばかりでしたので、ここで筆者の個人的なお話もしたいと思います。

私の家は、お聖天さんをお参りしてきた家で、今では少し珍しい信仰が熱心な方だと思います。

歓喜天様とのご縁はそこまで古いわけではなく、曾祖父の代からのご縁で拝んでいます。

商売もかなり繁昌した曾祖父は熱心にお聖天さんを祀るお寺を参拝していて、それは熱心な信仰心だったと聞きます。

私の祖父と祖母が出会ったのもお聖天さんを拝んでいる行者さんの一言が縁だったと聞きます。

私の父親は様々なお願いを聞いてもらって今では何かをお願いしに行くのではなく、お礼参りだけをしていると言っていました。

歓喜天の祟りだとか、歓喜天は人を選ぶだとか言われますが、私的にはきちんと礼儀作法を正してお参りをすれば、ご縁を結んでもらえて、歓喜天のご利益にもあずかれると思います。

続いては歓喜天の修法やお参りする時の注意点をご紹介します。

歓喜天(大聖歓喜天)の礼拝作法・祀り方

歓喜天(大聖歓喜天)をお参りする時の作法や、僧侶の方が行うような修法についてご紹介します。

まず、一般の方で歓喜天をお参りする時は以下の点を気を付けましょう。
※行者さんとなると話は別です。

  • 歓喜天を拝む際のご真言やお経は一言一言を大事に
  • 歓喜天は清浄を好みます。清浄な身なりで行きましょう
    ※僧侶の方で歓喜天修法を行う際は新しい下着にするなどもあるようですが、一般の方はそこまですることはないでしょう
  • 歓喜天のご利益に預かったら、お礼参りを
  • 歓喜天の信仰を止めるのはおすすめしません、きちんと信仰をするという気持ちを持って行いましょう
    ※難しく考えず、きちんと定期的にお参りをするということです
  • 歓喜天を参拝をする日は四本足の動物を食べることは控える
  • 親族がなくなった後四十九日などは参拝を避ける。
    ※親等によって日数が変わるので寺社に要確認
  • 女性なら生理の間は歓喜天のお参りは避ける

ここに書いたことは歓喜天をお参りする時だけの話ではなく、神様仏様をお参りするなら守るのがよいとされることなどです。※一部特殊なものもありますが。

特別なことをしなければならないというのではなく、真心を持って信仰をしましょう。

歓喜天を拝む際の注意点

歓喜天を拝む際、「断ち物の願掛け」は良くないとされます。

歓喜天は約束を守らない人には厳しい罰を与える神様とされます。

「断ち物の願掛け」をして、神様と約束をしそれを破るようなことがあればすさまじい怒りをかって祟りに遭うとされます。

生駒山宝山寺には断ち物の願掛けは控えるようにという張り紙があるほどです。

有名な話に、歓喜天に「大根を断ちます」という願掛けをすると願いを聞いてくださるという話もありますが、そういったものは控えましょう。

歓喜天の圧倒的なご利益があるとされる御祈祷

歓喜天修法を正しく踏襲している寺院であれば、歓喜天に御祈祷をしていただけます。

歓喜天の御祈祷は、歓喜天祀っているだけのお寺ではできません。

密教の中でも特にご利益のあるとされ、厳しい修法である歓喜天修法を正しく行っている寺院で御祈祷をしてもらってください。

それらの寺院については後程ご紹介いたします。

歓喜天修法(聖天法)で最も一般的とされるのは、歓喜天浴油供(よくゆく)と言う、歓喜天像に清浄な油をかけるというものです。

密教寺院でも歓喜天を正しく祀るところだけで受け継がれる秘伝の修法とされますが、一般に知られる方法をご紹介します。

歓喜天浴油供(よくゆく/よくゆぐ)

歓喜天のご祈祷の方法で最も有名なものが歓喜天浴油供です。

この祈祷は商売繫盛、子授け、除災招福という様々なご利益に預かれ、その効力は圧倒的なものだと言われます。

中には、呪殺という歓喜天の御祈祷で人を呪い殺すこともできるとまで言われます。

浴油供については、真言秘密加持集成や歓喜天のお経の「使咒法経(しじゅほうきょう)」などに書いているそうですが、基本は師事する歓喜天修法を修めた方から代々伝える秘儀ですので、修法を修めた人以外は詳しくはわかっているということはないでしょう。

効果がある歓喜天浴油供は次のように行うとされます。

  • 浴油供は聖天壇という歓喜天の仏像を安置する壇にて行う。その際必要なお供え物を準備する
  • 人肌まで温めた正常な油(ごま油と言われる)を準備する
  • ご真言・お経を唱えながらこの油を歓喜天像にひしゃくで掛けていく。これを一回の浴油供で108回行う。
  • さらに108回の浴油供は一日に7日行う。(午前中4回、午後3回と言われる)
  • この浴油供は1週間毎日続ける

この歓喜天の修法は、歓喜天像を祀っている寺院でも行っていないところがあるとされます。

それほど秘儀中の秘儀なのです。

今ではYoutubeに歓喜天修法・浴油供の動画を乗せてくださっている寺院もあります。
気になる方は詳細までは見れませんが、見てみてください。

その他の歓喜天信仰の修法・祈祷法

浴油供以外にも、歓喜天の修法には、華水法/華水供(けすいほう/けすいく)、浴酒法、水歓喜天法というものもあります。

華水法も、一日で最も正常な水が取れるとされる寅の刻に汲んだお水で御祈祷をすると言われるなど、厳しい決まりがあります。

浴油供でも他の歓喜天修法でも、手順を少しでも間違えれば罰を受けると言われ、僧侶の方も最初は痛い目を見させてもらったと言います。

また、歓喜天の御祈祷をして、ご利益が見えてこないときは軍荼利明王という歓喜天を眷属にする明王さんを拝んで歓喜天に咤を入れていただくという祈祷法もあります。

歓喜天のお供え物|大根・歓喜団

お稲荷様にお揚げをお供えするように、歓喜天にお供えするのに良いとされるのは大根(特に二叉の大根)や、

歓喜天像が持っている巾着袋に似せた歓喜団、歓喜丸をお供えします。

作り方はお寺の方が公表している情報では、酥(そ:乳製品)、麺、蜜、薑(きょう:しょうが)、胡椒、華麦、葡萄、胡桃、ザクロを混ぜて餅巾着のように形成するものをお供えするそうです。

これはあくまで一部の情報であって、他にもたくさんのものを混ぜるなどオリジナルのレシピや㊙レシピがあるようです。

歓喜天の印

歓喜天 画像 印

歓喜天の印はこのように結びます。

歓喜天の縁日

歓喜天のご縁日は毎月1日・16日です。

この日は歓喜天を祀る寺院で特に有名なところは、多くの人が参拝されます。

生駒山宝山寺では、12月1日はご縁日の中でも特に厄除け大根炊きをしていて、多くの人が集まります。

歓喜天のお守りやお札

歓喜天に参拝に行くだけでなく、さらに本格的に家にお祭りしたいという方もおられると思います。

歓喜天のお守りやお札を家でお祀りする場合は、清浄なところに置きましょう。

仏教の神様ですが、仏壇にお祀りするのはNGです。

詳しくは、お聖天さんを祀る寺院でお守りやお札を授与していただいた際に確認してください。

待乳山聖天で知られる本龍院さんでは、お札のお祀りの方法をまとめてくださっていますので、参考にしてみてください。

参考:待乳山聖天 祈祷中の心得とお札について

歓喜天の仏像(歓喜仏)を家に祀るのは

歓喜天の仏像を家に祀る場合は、生半可な気持ちではできません。

歓喜天の仏像を家にお祀りするなら、寺院で行われる歓喜天修法(浴油供等)を家でも行い、歓喜天の仏像を清浄に保つ供養をする必要があるとされます。

また、歓喜天をお祀りする聖天壇を造るなど、経済的にもかなり出費がかさみます。

その分ご利益は素晴らしいとされます。

歓喜天の仏像を祀る際は歓喜天を祀る寺院にご相談ください。

歓喜天とはどんな神様か

歓喜天のご利益や祟りの話、お参りの作法などをしてきました。

さらに歓喜天という神様をご理解していただくために、歓喜天はどんな由来で生まれた神様なのか等、詳しくご紹介します。

聖天さん等歓喜天の別名

歓喜天を呼ぶ際にお聖天(しょうでん)さんと親しみを込めて読みますが、他にもたくさんの別名を持ちます。

  • 大聖歓喜天
  • 大聖歓喜大自在天
  • 聖天様・聖天さん(お聖天さんと”お”を付けたものも)
  • 象鼻天
  • 天尊
  • 毘那夜迦(びなやか)
  • 誐那缽底(がなぱてい)

毘那夜迦(びなやか)や誐那缽底(がなぱてい)というのは、歓喜天の元とされるインドの神様のサンスクリット語の音訳をしたものです。

元のサンスクリット語での神様の名前はビナヤキヤと言われ、この神様がガナパチ(ガナパティ)やガネーシャと呼ばれるようになります。

歓喜天の由来となるヒンドゥー教の神「ガネーシャ」についてご紹介しましょう。

歓喜天の由来はガネーシャというインドの像の神

ガネーシャという神様は、ヒンドゥー教でも人気の神様で象の顔をした神様です。

歓喜天 画像 ガネーシャ

ガネーシャという神様は、見ての通り、象頭人身という姿で、一面二臂(一つの顔に二本の手)か一面多臂という複数の手を持つ像で描かれます。

ガネーシャは他にもガナパティやナンヴィケーシュヴァラ、ヴィナーヤカなどとも呼ばれる神様ですが、いずれも人に障害を与えたり、障害を取り除く神様、また学問の神様とされます。

インドで最も人気の神の一柱のシヴァ神とその后パールヴァティという姫の間に生まれた神としてインド神話では描かれます。

元々はドラヴィダ系の人達の信仰した神ともされますが、歓喜天の仏像の見た目にも関わる次のような挿話があります。

昔のインドの王国の一つで、大臣が王妃と不倫関係に陥りました。

王がその関係を知り、激怒して大臣を殺そうと毒の象肉を食べさせます。
この大臣を助けようと王妃が、ある山の大根を食べると毒が消えると伝え、大臣は大根を食べ命からがら助かります。

王がこのことを知り、ついに災いをもたらす魔神ビナヤキヤになって国にどんどんと災いが降りかかるようになりました。

この災いを止めるために、人々は観世音菩薩に助けを求めます。この観世音菩薩は美しい女の化身となって魔神ビナヤキヤの前に現れます。

魔神のビナヤキヤはその美女に抱かせてくれと言うと、美女は祟りを止め、仏法に帰依し、仏を守る守護神(護法善神)になるのであればよいでしょうと答えます。

ビナヤキヤはその約束を守ると言い、美女を抱きしめ、仏法に帰依したのでした。

こうして、禍をもたらす魔神は、福をもたらすガネーシャとして祀られるようになり、仏教の世界では歓喜天と呼ばれるようになるのです。

この物語は、次に解説する歓喜天の仏像の姿や、一緒に祀られる十一面観音にも関わりますので、頭の片隅に覚えておいてください。

ちなみに仏教世界では、歓喜天は韋駄天の兄弟神で障害を取り除く神様という福徳神の面も持ちます。

歓喜天について、生駒山宝山寺の住職の方がまとめたこちらもご覧になるとさらに詳しく書いていらっしゃいますのでご覧ください。

参考:ヒンズー教のガネーシャ信仰を取り入れた大乗仏教

歓喜天の梵字

歓喜天 梵字 画像

歓喜天の梵字は「ギャク」と読みます。

一文字でも歓喜天を意味しますが、双身の歓喜天像もあるので、このように2つの字が連なっています。

歓喜天の仏像は秘仏中の秘仏とされる

歓喜天の仏像は様々ある仏像の中でもその姿は全く異様とも言え、聖天壇の厨子の中にあるご本尊の姿を見たことあるという人はほとんどいないでしょう。

寺院によっては公開されるところもあります。

それらの寺院の情報については後程ご紹介します。

まずは、秘仏とされほとんど姿が見ることができない歓喜天の像はどんなものなのか解説いたします。

歓喜天像の像容

歓喜天像は、大きく二つに分かれます。

一つは、双身歓喜天立像という、男天と女天が向かい合って抱き合うという像です。

歓喜天像 画像

頭は象で描かれ、日本では象の頭をしているというだけでも不思議なのに、その象頭の神様が2柱向かい合って、抱き合っているのです。

もう一つ、歓喜天像の姿は、一柱の神様で象頭の姿に、複数の手を持つというものです。

象の顔をしているだけでも異様な姿で、その歓喜天像では2~12本もの手があるとされ、大根を持っていたり様々なものを持っています。

浴油供をするために、歓喜天像の多くは金属製で、仏像のサイズも大きなものではなく30cmほどの作が多いとされます。

歓喜天の仏像を祀る寺院では十一面観世音菩薩が祀られる

すべての寺院では内容ですが、お聖天さんを祀る寺院では、歓喜天像を祀る寺院では十一面観世音菩薩が祀られます。

これは、歓喜天の由来となるガネーシャのお話でもありましたが、十一面観音のお慈悲で仏法に帰依する天部の神様になったという挿話から由来します。

また、双身の歓喜天像では、男天は大自在天(大聖歓喜大自在天という歓喜天の別名とは関係ない別の神様)、女天は十一面観音菩薩の御身代りとされています。

歓喜天の仏像が見れる寺院や場所

ほとんどの寺院では歓喜天像を祀る厨子を開けることは、歓喜天を正しくお祭りすることを意味し、歓喜天修法を会得していない人は見ないようになっています。

しかし日本ではこの珍しい歓喜天像を見ることができるところがあります。

鎌倉国宝館(神奈川県)|青梅聖天社

お聖天さんを祀る神社の青峰聖天社は古くから鎌倉の地にある、歓喜天を祀る神社でした。

ここの歓喜天像は国宝指定のもので、秘仏とされていたのですが、鎌倉国宝館という博物館に現在は歓喜天像がありまして、見ることができるのです。

双身の抱き合う歓喜天像はとても美しい作りになっています。

歓喜天が描かれる曼荼羅の画像

密教の世界観を絵で表した曼荼羅にも歓喜天は描かれます。

金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅いずれにも描かれ、象の頭を持った歓喜天が見られます。

歓喜天 画像 曼荼羅

歓喜天を祀る神社・寺院

歓喜天を祀る神社やお寺をご紹介します。

ちなみに歓喜天を祀る寺院では、鳥居が見られることが一つの特徴でもあります。

日本三大聖天|歓喜天信仰が特に盛ん

日本には三大聖天と言われる、歓喜天を奉り、多くの参拝客が来られる寺院があります。

皆さんの家の近くの三大聖天に一度参ってみてはいかがでしょうか。

生駒聖天 宝山寺(奈良県)|大阪との県境

生駒聖天と呼ばれる宝山寺は奈良県にあります。

大阪との県境にある生駒さんの中腹にある宝山寺は、今では日本で最も有名なお聖天さんを祀る寺院と言われます。

商売繁盛の歓喜天様と有名

特に、江戸時代の豪商が生駒聖天をお参りして、富を得たとされ、商売繫盛の信仰が深く商家の家の方がご参拝しています。

江戸時代にはそのご利益から、皇室、将軍家等々から加持祈祷を頼まれ、東大寺の建て直しの際に生駒聖天にその無事を祈祷してもらったなど、本当にそのご利益はすごいと言われています。

生駒聖天 宝山寺の公式ページ

待乳山聖天 本龍院(東京都)|浅草寺のすぐ

日本三大聖天の一つの待乳山聖天(まつちやましょうでん)は東京の観光地としても有名な浅草寺の近くにあります。

待乳山聖天は1400年前の推古天皇の御代に創建されたとされます。

待乳山聖天 本龍院の公式ページ

妻沼聖天 歓喜院(埼玉県)

もう一つの有名な日本三大聖天の埼玉の妻沼聖天と言われ慕われる歓喜院です。

妻沼聖天は開山して840年を迎える2019年に秘仏の歓喜天像を4月16日から4月22日で見られる特別な御開帳があるので、気になる方はご参拝してみては。

御開扉浄願会の会費を納めた方が拝観できるようです。

妻沼聖天 歓喜天院の公式ページ

常光寺(奈良県)

歓喜天の仏像を寺院で特別に公開する日があるのが奈良の常光寺です。

毎年6月6日に秘仏の歓喜天を祀る扉を開いて中を見ることができます。

珍しい歓喜天を見れる常光寺の歓喜天はぜひ一度見てみてください。

住所:奈良県奈良市押熊町212

雙林寺(京都府)

京都の歓喜天を祀るお寺の中で有名な雙林寺はご本像に薬師如来様と歓喜天様を祀っています。

日本国で初の護摩供を行った寺院として有名です。

お聖天さんを祀る事でも有名です。

雙林寺の公式ページ

他にも、日本には歓喜天は怖いと言われながら、たくさんのお聖天さんを祀る寺院があります。

仏像で有名なもので言うと、神奈川の宝戒寺の歓喜天像は高さ155cmもあるもので、小さいものが一般的な歓喜天像の中で特異な存在です。

その他のお聖天様を祀る寺院についてはこちらでもご紹介しています。

お聖天様とは|生駒/浅草/妻沼の三大聖天さんやご利益/怖い祟りの話をご紹介

歓喜天のご利益に預かるには縁・約束を大事に

歓喜天という神様は怖い・祟りがすごいと言われますが、それは歓喜天との約束を守らなかったことや礼節をわきまえなかったことが原因とされます。

けれど、礼節をわきまえ、しっかりと信心することで、ご縁をいただき、拝むことができるようになります。

縁がない人は拝んでもご利益に預かれないと言われますが、歓喜天は、他の神様や仏様に見捨てられた人でも、ひたすらに歓喜天を祈れば必ず救済すると言われています。

ご利益に預かるためにも、歓喜天をお参りする時は、真心こめて参拝しましょう。

最後にこんな話を。

有名な僧侶の興教大師が、歓喜天について、

「入り難き佛法に入り逢い難き聖天の法に逢い奉り感涙禁じ難し」と言い、

大師は我慢できないほどの喜びの涙が溢れるような歓喜天とのご縁を感じたという話があります。

もし皆さんが何かの縁で歓喜天をお参りされるのであれば、この言葉を思い出し、そのご利益のありがたさを嚙みしめていただければと思います。