お彼岸とは|お彼岸の意味やいつ何をするか等解説
お彼岸とは春と秋にそれぞれ1週間ほどやってくる期間のことを意味すると一般に知られます。
ただ、本来の「彼岸」の意味は「あの世」を意味する言葉です。
それゆえか秋のお彼岸に咲く赤い彼岸花には不気味な話が多くあります。
今回は、お彼岸という行事について加えて、「彼岸」という言葉の意味について解説いたします。
ちなみにお彼岸の読み方は「おひがん」です。
お彼岸の意味|”彼岸”は仏教由来の言葉
お彼岸という言葉は元々はインドで使われていた古い言葉のサンスクリット語に由来します。
お釈迦様が仏教の教えを説いて、そのお釈迦様の言葉を漢字に訳した昔の偉いお坊さんが、「パーラミター」という言葉を「到彼岸」と訳しました。
このパーラミターという言葉の意味は「仏様の世界に至る、悟りの境地に到る」という意味があります。
つまり、「彼岸」の意味は本来「仏様の世界、悟りの境地、涅槃」を意味するのです。
ちなみに、仏様の世界・悟りの境地というのは、苦しみなんてものは存在しない、とても平和で楽しい世界とされ極楽浄土とも言われます。
このパーラミターという言葉は波羅蜜多(はらみた)という漢字にも訳されていて、「パーラミター」の音から「はーらみたー」→「波羅蜜多(=波羅蜜)」となっています。
この波羅蜜という言葉は後でもう一度出てくる、お彼岸にとても関係の深い言葉です。
彼岸の意味が”あの世(死後の世界)”となった由来
彼岸の意味は「仏様の世界、悟りの境地」だったのですが、日本に仏教がもたらされると、意味が少し変わってきます。
本来仏様の世界は、生きている間にきちんと良いことをするなどした人のみがたどり着くことのできる世界でした。
しかし日本では仏様の世界つまり「彼岸」はきちんと供養されたら行くことができる死後の世界、「あの世」と言う意味を持つようになります。
彼岸があの世を意味するようになったのは、日本に古来からあった祖霊信仰、簡単に言うと、ご先祖様が見守ってくださっていてきちんと供養すると助けてくださるという考えと混ざり合った結果です。
祖霊信仰は神道と言う日本の神様をお祀りする宗教の元の姿とでも考えてください。
つまり、お彼岸は神道と仏教が混ざり合ったものなのです。
彼岸の対義語の「此岸」
彼岸には、反対の意味を持つ此岸(しがん)という言葉があります。
彼岸が「あの世」なので、その反対の此岸は「この世」となります。
仏教の教えで言うと、此岸は「煩悩(欲望)に満ち溢れ苦しみばかりの世界」となります。
ちなみに岸という漢字があるのは、彼岸と此岸の間には三途の川があって、それぞれこちら側の岸で此岸、あちら側の岸で彼岸というのです。
お彼岸の期間の意味
お彼岸は7日の期間を意味する言葉ですが、この7日という期間にも意味があります。
お彼岸は春分の日と秋分の日を真ん中に前後3日ずつ、6日間を足して、7日間の期間になります。
この6日間と言うのは、彼岸に到るために行うべき6つの項目、六波羅蜜という仏教の教えに由来しています。
お彼岸という期間は「到彼岸」という言葉に由来すると言いましたが、その彼岸に到るために自分を反省する期間と言うのがお彼岸の一つの側面なのです。
六波羅蜜についてはこちらで詳しく解説しています。
六波羅蜜とは|波羅蜜の意味と共に布施,持戒,忍辱,精進,禅定,智慧を解説
お彼岸の中日と春分の日・秋分の日
お彼岸の真ん中の日が春分の日と秋分の日になるのですが、この真ん中の日を「お彼岸の中日(ちゅうにち)」と言います。
お彼岸の期間は六波羅蜜という仏教の教えに由来するのですが、お彼岸の時期がなぜ春分の日、秋分の日前後になっているのかについては仏教由来の説と、日本の信仰由来の説と様々あります。
これらは長くなるので後半で説明いたします。
お彼岸とはいつか
お彼岸がいつからいつまでになるのかは年によって変わることがあります。
これはお彼岸の基準となる春分の日と秋分の日が太陽の動きを元に決めるようになっているためです。
春のお彼岸は2019年3月18日~24日
春分の日は2019年3月21日に当たります。
ちなみに春分の日が祝日である理由は、お彼岸の由来となる先祖供養を天皇が宮中に祀られる皇族の霊を祀る祭祀の春季皇霊祭があり、この祭祀の影響で祝日となっています。
春季皇霊祭もお彼岸の由来となる日本の祖霊信仰にルーツを持つ祭祀です。
春分の日についてはこちらで詳しく解説しています。
春分の日とは(2019年は3月21日)|お彼岸の意味や祝日となった由来を解説
秋のお彼岸は2019年9月20日~26日
秋分の日は2019年9月23日に当たります。
秋分の日が祝日の理由も春分の日と同じく、秋季皇霊祭という祭祀が影響して祝日となります。
秋分の日についてはこちらで詳しく解説しています。
秋分の日.2019年は9/23|秋分はいつになるかの決め方や彼岸のお墓参りの意味
暑さも寒さも彼岸までと言いますが、春分の日と秋分の日頃から春らしさ、秋らしさが出てきて、冬と夏から次の季節に変わり始める季節ですね。
お彼岸にすること
お彼岸にすることには何があるかをご紹介します。
お彼岸のお墓参り・先祖供養
冒頭でも言いましたが、お彼岸はお墓参りをする時期として知られます。
お墓参りに行って何か特別なことをするのかと言うと、そう言うわけではありません。
お彼岸にお坊さんを読んで法事をする家庭もあるかもしれませんが、一般的にはお彼岸は家族でご先祖様にご挨拶、感謝を述べる期間です。
お彼岸にお墓参りについてはこちらで詳しく解説しています。
お彼岸のお墓参り|意味やいつ墓参りに行くのかや服装/お供え物等を解説
仏壇のお掃除やお菓子のお供えも
お彼岸の時期はお墓参りだけでなく、お仏壇のお掃除など先祖供養に関わることをする日です。
寺院などでは、合同で先祖供養の法要を行っているところもあるので寺院に行く方もいるかもしれません。
ただ、寺院によっては先に書いた通り、彼岸に到るための六波羅蜜が実践できているかを反省し、いつも以上に実践をしましょうという趣旨の法要を行っています。
お彼岸のお供え物の「おはぎ/ぼたもち」
お彼岸のお墓参りは一般的なお墓参りと基本的には変わらないのですが、一つ違う点があるとするとそれはお供え物に「おはぎ(ぼたもち)」が出てくることです。
お彼岸のおはぎ・ぼたもちは名前は違いますが、ほとんど同じものと考えてもらって大丈夫です。(以降おはぎと統一して解説します)
おはぎはお餅をあんこで包んだ和菓子ですが、このあんこの材料である小豆は赤い色をしていることから、邪鬼、魔を退けると考えられていて、江戸時代ごろからお供えするようになったそうです。
お彼岸のお供え物はおはぎである必要はなく、ご実家に帰省する際のお供え物・手土産として持って行くものは和菓子や洋菓子など菓子折りを持って行くことも一般的です。
このあたりは後程、お彼岸のマナーの段で簡単にご紹介します。
お彼岸のおはぎやぼたもちについてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
お彼岸のおはぎ,ぼたもちの理由や由来|おはぎとぼたもちの違い等解説
お彼岸の入りとお彼岸の明けにお団子をお供えする
地域によってお彼岸に行うことは差があるのですが、お彼岸にすることで有名なことの一つにお彼岸団子をお供えする風習もあります。
お彼岸の始まる日を「お彼岸の入り」と言い、お彼岸の終わる日を「お彼岸の明け」というのですが、このお彼岸の入りとお彼岸の明けにお団子をお供えするのです。
このお彼岸団子には地域性や宗派などによって諸説あるのですが、ご先祖様がやってくるのをお迎えするのにお供えし、お彼岸明けには彼岸(あの世)へのお土産にしてもらうや、彼岸に帰るまでお団子を転がしながら帰るとか様々な説があります。
ただ、一般に知られるお彼岸は、ご先祖様が帰ってくるという時期ではなく、ご先祖様のいる世界が近くなるから、ご挨拶に行くと考えるものですので、後付けなのかもしれません。
落雁もお彼岸のお供え物の定番
おはぎやお団子以外にも、お彼岸にお供えする定番の和菓子に「落雁」という花などの形をして色とりどりの砂糖菓子をお供えする風習もあります。
落雁はお彼岸に限定したお供えものではありません。
お彼岸のお供えの花は特に決まりはなし
お彼岸のお供えの花は特に決まりはありません。
良くお供えのお花は個人が好きだった花や季節の花が良いと言われますが、春のお彼岸や秋のお彼岸の時期に旬となるお花をお供えするなど、お花屋さんに相談してみるのも良いかもしれませんね。
お彼岸でお仏壇に関連して特別に行うことはない
お墓参り同様、お彼岸だからと言って、家のお仏壇に対して特別行うことはありません。
普段あまりで来ていないお仏壇をお掃除したり、お彼岸の定番のおはぎをお供えしたりするなどが普段と少し違うと言えます。
寺院の彼岸に到るための法要(彼岸会)
お彼岸の時期に、寺院で先祖供養ではなく、自身の生活を振り返り反省をするという彼岸会が行われます。
- 他の人を助けることができているか
- 苦しいこと、恥ずかしいことに耐える心を養えているか
- この世の真理を見極めて、正しいものの見方、思考ができているか
などなど、六波羅蜜というとても大事な教えに触れる良い機会になっています。
お彼岸にすることのマナー
お彼岸の時期に、実家に帰省したり、寺院に行ったりする時など気を付けたいマナーについて簡単にご紹介します。
お彼岸に実家へお菓子などのお供え物を持参する
お彼岸の時期、実家などに帰省してお仏壇やお墓にお参りしてご先祖様に挨拶する場合、お供え物を手土産として持参することがマナーという風習があります。
この場合、おはぎやぼたもちという生菓子だと日持ちがしないためあまり適当ではないとして、小豆を使った別のお菓子を持って行くなどの対応をします。
お菓子に限らず、お彼岸のお供え物として定番なのは、
- 果物
- お線香やロウソク
- お茶やコーヒーなどの飲み物
- 相手の家にあった日用品や食品等
などなど、基本的には消耗品です。
最近ではデパートなどでお彼岸の菓子折り、その他お供え物のセットを販売しているところもありますので、それらを持参するのもいいかもしれません。
また、実家に帰れない場合、お供え物を送付して対応します。
他家へ持参又は送付をする際は、のし紙に似た掛け紙というものを付けます。
お彼岸ののし紙(掛け紙)
のし紙と言うのは、以下の写真のようなものです。
これはお祝い事に利用されるものですが、お彼岸は仏事であるため、これによく似た掛け紙というものを利用します。
掛け紙は、のし紙の熨斗(のし)がないもので、仏事では中央にある水引という紐も違う色のものを利用します。
熨斗(のし) はこの部分のことです。
お彼岸の掛け紙の水引は仏事に利用する、黒白や黄白(関西地方)を利用します。
また、上記の写真の①の部分の表書きには「御供」と書いて②の部分にはご自身の名前を記入します。
水引の色で黄白が関西地方で利用されるなど地域によって風習の違いがありますので、それらを事前にご確認していただくなど、注意が必要です。
お彼岸の手土産等の返礼品
お供え物をいただいた場合はその返礼品をお渡ししないで良いと考えるのが一般的です。
お彼岸のお供え物は大体身内からのものですし、高額なものはあまりないと思います。
お彼岸に限らずですが、高額だったりする場合は半分ほどの金額でお返しするのがマナーとされます。
初彼岸について
故人が亡くなってから49日を超えてから初めて迎えるお彼岸を初彼岸と言います。
初彼岸は初盆のように、特別に法事を行う必要があるかと言うと、そういうわけではありません。
お坊さんをお呼びして法事をする必要も特にはありません。
ちなみに、先ほどのお供え物のお話に関係するのですが、お供え物の表書きで49日を越えていないでお彼岸を迎える際には、「御霊前」、49日を超えて、初彼岸を迎える際は「御仏前」となります。
また、お坊さんを自宅にお呼びしたりして法事を行う場合はお車代をお渡しすることもマナーです。
寺院のお彼岸の法要に参加する時
お彼岸の時期に寺院で行っている法要(彼岸会)に参加をする場合について簡単に解説します。
寺院でお彼岸の時期にお行う彼岸会という法要は、宗派によって先祖供養のものであったり、先述の六波羅蜜の反省などを行う会となっていますが、いずれにしても法要であり、お布施をお渡しするなどのマナーがあります。
ちなみに、彼岸会などの法要の服装は喪服などの改まったものである必要はないとされ、カジュアル過ぎない服装で良いとされます。
一応参加する寺院にご確認いただくのが良いかと思います。
お布施の金額等について
お布施をいくら包むかについてですが、寺院に行き合同で行われる法要に参加する場合は、一般的に3000円~1万円を包むと言われます。
個人で法要を頼む際には、3万円前後~5万円を包むのが一般的とされます。
ちなみに、お布施の金額は上記はあくまで一般的と言われるもので、無理な金額をお渡しするものではありません。
ちなみに、お布施をお渡しする場合の不祝儀袋の表書きには、「お布施」と書くのが一般的です。
お布施と書く代わりに、回向料や供養料なども利用されます。
お彼岸にしてはいけないこと
お彼岸にしてはいけないことは特にありません。
ただ、お墓参りの後に神社にお参りをするのが良くないといわれたりしますが、仏事と神事は重ねないという考え方があります。
神道では人の死を忌むのでこのように言われます。
お彼岸の時期に神社に行ってはいけないわけではありませんが、お墓参りの後についで参りで神社に参拝などはよくありません。
お彼岸にまつわる様々な話
お彼岸の由来についてのより詳しいお話や、お彼岸の時期にまつわることについてご紹介いたします。
お彼岸が春と秋にある由来①:太陽の動き
お彼岸が春分の日と秋分の日を中日としているのは、この日の太陽の動きが彼岸の意味に深くかかわるからです。
春分の日と秋分の日に共通する太陽の動き、それは真東から太陽が昇り、真西に太陽が沈むということです。
彼岸という仏様の世界は、お釈迦様が入滅された時(亡くなられた時)顔を西に向けていたことから、西にあると考えられていました。
彼岸を極楽浄土と言うとも言いましたが、他にも西方浄土と言われるのはこのためです。
春分の日と秋分の日は太陽が真西に沈むことから、彼岸(あの世)と此岸(この世)が近くなると考えられたり、彼岸のことを思って彼岸に到るために六波羅蜜の修行にいそしむ良い時期と考えられるようになるのです。
この考えは、聖徳太子の時代からあったと言われます。(文献で確認できるのは聖徳太子より後になります)
聖徳太子の命によって日本で初めて建立された官寺の四天王寺の西門は、春分の日と秋分の日は太陽が真西に沈むことを眺めることができ、この時代からお彼岸の時期に彼岸に思いを馳せるということがあったのかもしれません。
四天王寺の最寄り駅の「四天王寺前夕陽丘駅」という名前にも残っていますが、この地域はその昔海辺も近く夕日が瀬戸内海に沈む景色が見れたそうです。
ちなみに、この真西に沈む太陽に彼岸の思いを馳せるという考え、修行法を「日想観」と言い、真言宗を開いた空海が日本では初めて行ったと言われます。
また、春分の日と秋分の日は太陽が出ている時間とそうでない時間、つまり昼と夜の長さが同一になるため、仏教の大事な教えの「中道」に通じることがあるということから彼岸に至るための修行を見なおす良い時期とも考えられます。
お彼岸が春と秋にある由来②:農耕との関係
お彼岸が春と秋にあるのは、農耕と関係しています。
春に田植えや畑を耕すなどの農耕の準備をし、秋に実った作物を収穫します。
農耕の準備をする春には、一年が豊作でありますようにとご先祖様、田の神様などにお供え物をして祈ります。
収穫をする秋には、一年の収穫をご先祖様、田の神様などにお供え物を捧げて感謝します。
この風習が仏教と混じり、お彼岸にお墓参りをすることや、お彼岸におはぎ・ぼたもちをお供えすることにつながるのです。
また、お彼岸の由来には諸説ありますが、日本の太陽を信仰する「日願」という信仰が由来となったという説もあります。
お彼岸と彼岸花の関係
秋のお彼岸の時期に一斉に咲く独特な形をした彼岸花には地獄花や死人花という別名もあります。
彼岸花は毒を持っている植物でもあるため、昔の人は触らないように様々な迷信を伝えたと言われます。
また、彼岸花の毒を利用して、墓地の周りに植えて死体をもグラなどが荒らさないようにしました。
そのため墓地の近くにたくさん生えていることもあるため、不気味な迷信などもあります。
ちなみに、彼岸花の別名に「曼珠沙華」という名前があるのですが、これは天界に咲く花という意味があります。
彼岸花は縁起の良い名前も、縁起の悪い名前も両方を持っているのです。
お彼岸とお盆
先祖を供養する行事と言えば、お盆が日本ではお彼岸以上に有名ですが、お盆とお彼岸は少しニュアンスが違います。
お盆という行事は、先祖の霊がやってきてその霊をお迎えし供養すると考えます。
それゆえ迎え火や精霊馬という、先祖の霊を迎える種々の飾りなどがあるのですが、お彼岸は先祖の霊がやってくるという考えではありません。
お彼岸にお墓参り等をする意味
お彼岸にお墓参りをするのは、お盆とは違いご先祖様がいるあの世の彼岸がこの世の此岸と近くなると考えて、その時期にご先祖様にご挨拶に行く、供養に行くと良いからお墓参りに行こうとなったのです。
迎えるという意味のお盆とは若干意味が違います。
ちなみに、お彼岸というものは仏教が広まった国でも日本にだけ見られる独自の風習です。
お盆は仏教由来の行事と言われますが、ご先祖様を祀る仏教行事として日本ほど盛大に行う国はあまりないそうです。
お盆にはよく先祖の霊が帰ってきてや、海や川などの水辺にはたくさんの霊がいるから行ってはいけないという話を聞いたことがあるかもしれませんが、お彼岸はあまりそういう話は聞きませんね。
お彼岸に結婚式等の行事が重なることについて
お彼岸の時期に結婚式や入籍などの慶事/お祝い事やお引越し、納車などの縁起を担ぎたい事柄をしても良いのかという疑問があるそうですが、特に問題はありません。