ニギハヤヒとはどんな神様?
ニギハヤヒ(饒速日命/ニギハヤヒノミコト)という神様について調べたあなたは、どのような正体を持つ神様であると思っていますでしょうか。
アマテラスオオミカミと同一説
スサノオノミコトの子孫で物部氏の先祖という説
実は日本という国を最初に作ったという伝説の神様
はたまた宇宙人?
ニギハヤヒという謎に包まれた神様は、古事記や日本書紀という書物の中ではあまり多く語られていないのに、とても不思議で重要な神様の役割をしています。
それ故にたくさんの伝説があります。
今回はそんな様々な伝説がどうやって生まれたのか?
またそれらはどの程度あり得るのか?を見ていきましょう。
ちなみに、筆者の私の家は昔から石切劔箭神社にお参りをしている家庭に生まれたので石切さん(石切劔箭神社の通称)の説を基本的に信じていますが、どの説も間違っているとは考えていませんので、ご了承ください。
ニギハヤヒノミコトという神様には様々な俗説が
先ほど少し見ましたが、ニギハヤヒという神様には、たくさんの俗説(伝説)があります。
あまりにも突拍子もない俗説から、神話の中でさえもたくさんの理解があるため、ニギハヤヒという神様はとても謎の多い神様です。
簡単にどのような説があるのか、俗説以外にも、江戸時代から議論されているようなまじめな説など、少し上げてみましょう。
- アメノホアカリ(天火明命)という神様と同じ?
- オオナムチ(オオクニヌシ/大国主命)の子供?(スサノオの子孫)
ここは実は、ニギハヤヒという神様が古事記や日本書記以外で記された書物の中で出てくるもので、昔からの議論の対象となっている説です。
この他に、いわゆる俗説で次のような説もあります。
- ニギハヤヒは実はアマテラスオオミカミである!?
- ニギハヤヒの妻は瀬織津姫という神様!?
- ニギハヤヒは宇宙人?さらに同じく瀬織津姫も宇宙人でシリウス文明が…(?)
- ニギハヤヒは龍神を操る?
- ニギハヤヒは中国の皇帝が不老不死の薬を求めて日本に遣わした徐福と関連が?
と言った様々なにわかには信じがたい説がたくさん存在しています。
こういった説が一体全体どんな説なのかを考える上で、一般的に広まっている日本神話の中のニギハヤヒという神様について見ていきましょう。
ニギハヤヒは漢字で書くと
ニギハヤヒと言う神様はニギハヤヒノミコトと正式には呼ばれ、漢字では次のように書きます。
- 饒速日命
- 饒速日尊
- 邇藝速日命
- 櫛玉饒速日命
ニギハヤヒの別名は?
日本神話の他の神様の例に漏れず、ニギハヤヒもたくさんの名前を持っています。
- 櫛玉命
このほかに、古事記や日本書記以外の書物でニギハヤヒは別の神様と同一と考えられるという記述も存在します。
- 天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊(あまてるくにてるひこあめのほあかりくしたまにぎはやひのみこと)
先代旧事本紀ではニギハヤヒは上でみた天火明命(アメノホアカリノミコト)と同一と見られます。
そのためアメノホアカリノミコトの持つ別名もニギハヤヒノミコトの別名とも考えられます。
- 天照國照彦天火明尊(あまてる くにてる ひこ あめのほあかり の みこと)
- 天照国照彦火明命(あまてるくにてるひこほあかり)
- 彦火明命
- 膽杵磯丹杵穂命
- 天照御魂神
このたくさんの書物での一説にまとまらないことがニギハヤヒを謎めいた、伝説の多い神様にしているのです。
ニギハヤヒの日本神話の物語
たくさん説のあるニギハヤヒですが、まずは最も知られている日本神話の中での説を見ていきましょう。
ニギハヤヒの系図・関連する神様
- 登美夜毘売(とみやひめ,三炊屋媛(みかしきやひめ))(妻)
- 長髄彦(ながすねひこ)(義兄)
- 可美真手命(うましまでのみこと)(子)
- 神武天皇(カムヤマトイワレビコ)(後に臣下に下る)
日本書記・古事記以外の神話の中で関連する神
- 天照大御神(アマテラスオオミカミ)(祖母)
- 天香山命(アマノカグヤマノミコト)(子)
- 瓊瓊杵尊/邇邇芸命(ニニギノミコト)(弟もしくは子)
- 須佐之男命(スサノオノミコト)(祖父もしくは父)
- 大国主命(オオクニヌシノミコト)(父)
- 物部氏・穂積氏・古積氏・尾張氏(子孫)
ニギハヤヒが天磐船(アマノイワフネ)で河内国に降臨
ニギハヤヒの物語の参考はこちら
http://www.ishikiri.or.jp/yuisyo/mythology/
ニギハヤヒノミコトはアマテラスオオミカミから十種の瑞宝/十種神宝(とくさのかんだから)という人を治め、身や心の病をいやす霊力をそなえた様々な神器を受け、天磐船(アマノイワフネ)という船で高天原から降臨されました。
十種の瑞宝の中の有名なものは「フツノミタマの劔」と高天原から降臨した天津神である証明となる「天羽々矢(アメノハハヤ)」です。
これらを持ち、ニギハヤヒは神様として、河内国(今の大阪の東南の地域)に向かいます。
その当時、そのあたりは鳥見(登美/とみ)と呼ばれる地域で、長髄彦(ナガスネヒコ)という首長とその一族が治めていました。
その長髄彦(ナガスネヒコ)や一族はとても好戦的でしたが、天津神という神様のニギハヤヒと会いその先進的な文化の差を感じ争わずにニギハヤヒに従うことになりました。
そして妹の登美夜毘売(とみやひめ,三炊屋媛(みかしきやひめ))と結婚します。
十種の瑞宝/十種神宝(とくさのかんだから)
これは、以下に見る2つの鏡、1つの剣、4つの玉と3つの比礼(女性の服飾)です。
- 沖津鏡(おきつかがみ)
- 辺津鏡(へつかがみ)
- 八握剣(やつかのつるぎ)
- 生玉(いくたま)
- 死返玉(まかるかへしのたま)
- 足玉(たるたま)
- 道返玉(ちかへしのたま)
- 蛇比礼(おろちのひれ)
- 蜂比礼(はちのひれ)
- 品物之比礼(くさぐさのもののひれ)
ニギハヤヒと神武天皇の東征
ニギハヤヒが鳥見(登美/とみ)の里を治めて繁栄を謳歌していたときに、神武天皇(この当時は天皇ではないのでカムヤマトイワレビコと呼ばれている)が東征をされます。
神武天皇は大阪の浪速国の白肩津に上陸をされると、長髄彦(ナガスネヒコ)率いる軍勢に追い返されます。
一度は失敗しましたが、その後神武天皇は別のルートから攻めます。
そして長髄彦(ナガスネヒコ)のいる生駒山まで行きます。
そこで、長髄彦(ナガスネヒコ)とまた戦います。
その戦いの最中、神武天皇は自分がアマテラスオオミカミの玄孫であり、この土地を治めに来たと言いますが、長髄彦(ナガスネヒコ)はそのことを信じず戦闘が続きます。
やがて、金色のトビが空からやってきて、光輝き戦闘ができなくなります。
その時に長髄彦(ナガスネヒコ)はこのように神武天皇に伝えます。
「何ゆえこの土地を攻めるのか?私たちは天津神の櫛玉饒速日命(クシタマニギハヤヒノミコト)に従い、この土地を守っている。あなた(神武天皇)は天津神の子孫と言ったが、こちらはニギハヤヒノミコト様という天津神の元でこの土地を収めている。
お前は偽物の神様だろう!」と。
そこで、神武天皇と長髄彦(ナガスネヒコ)はそれぞれが自分たちが天津神に関わるものだということを天羽々矢を見せ合いました。
どちらも本物だとわかったのですが、長髄彦(ナガスネヒコ)は戦いをやめなかったためにニギハヤヒは長髄彦(ナガスネヒコ)を殺し、神武天皇に従うことを誓いました。
ニギハヤヒの物語の参考はこちら
http://www.ishikiri.or.jp/yuisyo/mythology/
ニギハヤヒにまつわる様々な説
ニギハヤヒは上記の物語がありますが、たくさんの説・物語を持っている神様と冒頭でも説明しましたが、他にどのような説や物語があるかを見ていきましょう。
ニギハヤヒの正体とは?
まず、ニギハヤヒという神様は、日本神話を記した有名な書物の日本書記と古事記でも統一した記述はありません。
他の書物ではさらに全く違う記述がされています、
ニギハヤヒはアマテラスオオミカミの孫?
ニギハヤヒはアメノホアカリと同一と書かれています。(先代旧事本紀)
アメノホアカリとニギハヤヒが一緒なのであれば、アマテラスオオミカミの子のアメノオシホミミと高木神の娘のヨロヅハタトヨアキツシヒメとの間に生まれた子供がニギハヤヒということになります。
これは簡単に言うと、
天孫降臨で有名なニニギノミコトの兄を意味します。(父という記述をした書物も)
つまり、ニギハヤヒは天孫族というアマテラスオオミカミの系統で、神様の中でも特に位が高い神様で、
しかも葦原中津国に降臨をしたニニギノミコトより先に降臨していたということです。
アマテラスオオミカミについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
アマテラスオオミカミ(天照大御神)とは|伊勢神宮の神社史や神話の姿
ニギハヤヒは出雲王朝(スサノオ)の子もしくは孫?
播磨国風土記という、兵庫県の播磨地方の歴史を記した奈良時代の書物の中では、ニギハヤヒは出雲王朝の子孫と言われています。
出雲王朝を作ったきっかけは、アマテラスオオミカミの弟の神様であるスサノオノミコトとその子供のオオクニヌシノミコト(大国主命/オオナムチ)という神様です。
ニギハヤヒはその王朝から現在の奈良の大和地方に向かったとも言われています。
スサノオノミコトやオオクニヌシノミコトについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
スサノオノミコト(素戔嗚尊)とは|神話(ヤマタノオロチ等)、ご利益等を解説大国主命(オオクニヌシノミコト)とは?ご利益や神社の情報や国譲り等神話の物語も解説
ニギハヤヒは物部氏の始祖?
物部氏とは、奈良時代の蘇我氏が政権の中央に出るまで、政治・祭司の中心的な氏族として有名でした。
その物部氏はニギハヤヒノミコトの子孫と伝えられています。
物部氏をルーツとする武将は数多くおり、武士(もののふ)の家柄だとも言われています。
日本で最も古い家系図とも言われる海部氏の系図には様々な氏族がニギハヤヒ・天火明命の子孫と根拠が得られます。
ただし、様々な説が多くあるために、疑問視する人も存在します。
ニギハヤヒとアマテラスオオミカミの男性神?
ここからは少々スピリチュアルな説が続きます。
ニギハヤヒノミコトの正式な名前が、
- 天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊(あまてるくにてるひこあめのほあかりくしたまにぎはやひのみこと)
と表記されます。
この名前の最初の天照(アマテラスともアマテルとも発音)の表記から、「太陽神」つまりアマテラスオオミカミの男性神として生まれたのではと主張する説があります。
そもそもイザナミノミコト・イザナミノミコトという双神で国ができたという話や、太陽神とは陽(男性神)で、月が陰(女性神)という考え方から日本の皇祖神がアマテラスオオミカミ(女性神)だけということに疑問を持つ人たちがいます。
この説はそういった人の推論の上に成り立っているものです。
古代のロマンを感じるものですね。
ニギハヤヒは宇宙人という説
スピリチュアルが好きな方がネット上にたくさんの意見を乗せていて、その一つにニギハヤヒは宇宙人であるという意見もあります。
これは学術的な背景を持っている説ではありません。
この説は、ニギハヤヒの妻の瀬織津姫という女神は、シリウス文明の女神であるという説や、エジプトその他神話を持つヨーロッパ・中東地域の神とつなげるという説の様です。
ニギハヤヒとユダヤ?
古代のロマンが好きな人なら「日ユ同祖論」と呼ばれる、イスラエルに存在した部族の一つが日本に流れ着き王朝を立てたというニコラス・マクラウド氏が明治時代に提唱した意見を聞いたことがあると思います。
この意見では、日本の神様の名前の音がヘブライ語に似ているウガヤフキアエズという神様がユダヤの王と同一という考え方等たくさんの説があります。
ニギハヤヒもその一つという考え方です。
ニギハヤヒと龍神(白龍)の関係がある説
これは後半で考察をする、ニギハヤヒの妻は瀬織津姫ではないか?という説に関わるものです。
ニギハヤヒの妻と言われる瀬織津姫は日本の神話には出てこないのに、神道の大祓詞にでてくる神様で大変謎の多い神様です。
この神様は龍神様であるという説が存在しニギハヤヒは龍神と関りがあるという説があります。
また、千と千尋の神隠しに出てくるハクという白龍になる少年。
彼はニギハヤミコハクヌシという本名を持っているためニギハヤヒと龍の関係に注目が集まったのかもしれませんね。
ニギハヤヒと徐福
さらにはニギハヤヒは徐福という中国の秦王朝の時代に皇帝から不老不死の薬を探して来いと日本に遣わされた人物と関係があるという説もあります。
大神神社(奈良)の大物主はニギハヤヒという説
また、大物主(オオモノヌシノカミ)というご祭神を祀る、日本で最も古い神社の一つと言われる大神神社(おおみわじんじゃ)にもニギハヤヒは関係すると言われています。
ただし、大神神社の公式の見解にはありません。
また三輪王朝と呼ばれる、仮説に基づく考えがあるなど、その真偽は不明です。
ニギハヤヒの妻は瀬織津姫?
上で見てきたようにニギハヤヒには本当かな?と思うような説がたくさんついて回っています。
その中でも特に根強い支持を集めているのが、このニギハヤヒと瀬織津姫が夫婦だったというものです。
瀬織津姫という神様は、先ほども述べましたが、日本の神話には出てこないが、大祓詞の中に名前が出てくる神様で、伊勢神宮の内宮(アマテラスオオミカミを祀る社)の別宮荒祭宮の別名が瀬織津姫であるという記述がいくつかの書物でされています。
他にも兵庫県西宮市の廣田神社では現在はアマテラスオオミカミを祀っていますが、以前は瀬織津姫を主祭神と祀っていたと戦前までの記録にはあります。
また、日本の神社の中で、ニギハヤヒと瀬織津姫と同一とみられる神々が一緒に祀られる神社があると言われてもいます。
ニギハヤヒがアマテラスオオミカミの男性神として、瀬織津姫がアマテラスオオミカミの女性神だという主張も存在します。
瀬織津姫について詳しく知りたい方はこちら
参考:瀬織津姫とは?封印された龍神・弁財天とも言われる伝説の神様を解説!
ニギハヤヒノミコトが祀られている神社・神宮
ニギハヤヒはそもそも神話内でも明確な表記がないことから上記で見たようなにわかには信じられない説が数多くあります。
それでも、重要な神様として、日本の各地でニギハヤヒノミコトを祀る神社が存在しています。
それらの神社について見ていきましょう。
石切劔箭神社(いしきりつるぎやじんじゃ)
日本で最も有名なニギハヤヒノミコトとその子の可美真手命/宇摩志麻遅命(うましまでのみこと)を祀る神社です。
神話の中でニギハヤヒノミコトが降臨し、統治の中心とした場所と言われる河内の国にある神社で、ニギハヤヒの子孫の物部氏の有力氏族の木積氏が代々神主を務める神社です。
公式サイト:http://www.ishikiri.or.jp/
磐船神社(いわふねじんじゃ)
ニギハヤヒを祀る神社の中でも、ニギハヤヒが降臨されたときに乗っていたという天磐船(アマノイワフネ)だと言い伝えられる巨石がある神社です。
所在地:大阪市交野市私市9-19-1
籠神社(こもじんじゃ)
籠神社のご祭神は彦火明命(ひこほあかりのみこと)という神様で、ニニギノミコトの兄弟神として地上に降臨し籠神社のご祭神となったとされます。
この彦火明命の別名が「饒速日命(ニギハヤヒノミコト)」とされます。
籠神社は丹後国一宮という古くから皇室でも重要視されている神社であり、国宝の海部氏系図という、神代からの家系図が残る由緒正しい神社です。
さらにこの籠神社の伝承では、彦火明命は宗像三女神のイチキシマヒメ(市杵島姫命)を妻としたと言われています。
このイチキシマヒメは瀬織津姫と同一視される神様と言われています。
籠神社公式サイト:http://www.motoise.jp/index.php
ニギハヤヒの墓
ニギハヤヒは逝去された時、そのご遺骸は天に上っていったとされます。
そのため、ニギハヤヒが埋葬されたというお墓はありません。
ですが、ニギハヤヒの妻がニギハヤヒの遺言に従い、鳥見の白庭にニギハヤヒの遺品を埋めたという言われ、その鳥見の弓塚と言われます。
その伝説が語られる場所は現在も存在します。
- 饒速日命墳墓(奈良県生駒市白庭台5-9-1)
- 真弓塚(奈良県生駒市上町5002)
ニギハヤヒのご利益・ご神徳は?
様々な神社で祀られ様々なご利益御神徳をお持ちと考えられています。
- 腫物(癌等)の守護(石切神社)
- 病気平癒(磐船神社)
- 諸願成就
ニギハヤヒノミコトの神格
- 太陽神
- 穀物の神
- 呪術の神
- 航空の神