お盆のお供え物について|贈答のマナーや初盆のお供え等
お盆のお供え物に関して、お供えの仕方や、お盆/初盆のお供え物を送る際のマナーなどをご紹介します。
具体的には、
- お盆のお供え物の種類(お仏壇の盆棚の上などのお供え物について)
- 親族などの家に伺ってお渡しするお盆のお供え物の選び方や渡し方のマナー
- お盆のお供え物の飾り方や処分の方法
- 初盆のお供え物について
などです。
ちなみに、一言でお盆と言えど地域によってお供え物が違い、お盆後のお供え物の処分の方法なども異なります。
マナー本などにもあるものを中心に一般的な方法を解説しますが、ここに書いていないことでもご家庭のルールなどがあるので、あまり気にし過ぎず、あくまで参考程度にしてください。
お盆のお供えの意味
お盆のお供えをする意味は
- お盆の期間に帰ってこられるご先祖様への歓待のためのお供え
という意味もありますが、
- あの世からやってくる、食べ物が食べられず苦しむ餓鬼への施しのためのお供え
という意味もあります。
お盆のお供え物の中で、水の子という、野菜を使ったお盆のお供え物の代表的な料理や、そうめんといったものは、ご先祖様へのお供えというより餓鬼(がき)のためのお供えだとされます。
これはお盆の起源とされる、盂蘭盆(盂蘭盆会)の考え方です。詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
盂蘭盆とは|意味や盂蘭盆会という法要の起源・期間について解説
お仏壇のお盆のお供え物
お盆の期間は、お仏壇の前に盆棚(精霊棚)という祭壇を作り、そこにお盆ならではのお供え物を置いてきます。
訪問者からお盆のお供え物をいただいた際にもこの棚やその近くにおいて行きます。
この盆棚の作り方・飾り方については後程詳しく解説しますが、宗派によって棚に敷くものが違ったりします。
お仏壇のお盆のお供え物
盆棚(精霊棚)の上や近くに置くお供え物の定番は以下の通りです。(宗派や地域によって置かないものなどあります)
- お膳
- 精霊馬・精霊牛(きゅうりとなすで作る飾り物)
- 水の子(きゅうりやなすなどお盆の時期の野菜を使った料理)
- 青竹
- ほおずき
- そうめん
- 団子
- お線香
- 花
- お水
- 盆提灯
青竹立てるなどは、昨今都会の方では見られないかもしれません。
お盆のお供え用の料理・お膳
お盆のお供えに準備するお膳や料理は、仏様にお供えするものを避けて、季節の野菜などを使います。
お盆のお膳
「一汁三菜(もしくは一汁五菜)」が基本です。
- 飯椀:白米を盛るお椀
- 汁椀:お味噌汁やお吸い物を入れるお椀
- 平椀:煮物等を置くためのお椀
- 高椀:漬物等を置くためのお椀
- 壺椀:和え物等を置くためのお椀
これらの料理は特に決まりはなくご家庭で毎年の定番があると思います。
お盆の時期の旬の野菜などのお漬物や、煮物など季節感ある食事にするなどお盆の時期以外のお膳とは違いがあったりすると思います。
ただ以下の食材は使わないものとされます。
- 肉や魚などの殺生もの
- 臭いの強い野菜類(ニラやニンニク等)
いわゆる精進料理とされるものをお膳にお供えします。
お膳以外のお盆にお供えする料理
お盆にはお膳以外にも、お盆独自の料理のお供えがあります。
- 水の子
お盆の時期旬の野菜のキュウリやナスなどをさいの目状に切りハスの葉を敷いて、そこに切った野菜を入れ、砥いだお米も入れてお水に浸す(浸さない場合も) - そうめん
料理ではありませんが、そうめんをお供えすることがあります。そうめんはそのままお供えします。
水の子もそうめんも餓鬼のためのお供えであると考える地域、ご先祖様のお供えとして考える地域と様々です。
これらお仏壇の前のお盆のお供え物の飾り方について知りたい方はこちらをクリックすると飾り方を解説した部分に飛びます。
お盆のお墓参り時のお供え物について
お盆のお墓参りに持って行くお供え物は特に普段のお墓参りと変わりません。
- お花
- お線香
- ろうそく
- お供え物の食べ物や飲み物
- 掃除道具(スポンジやタオルやごみ袋)
ただ、家庭によっては、提灯を持って行き、お墓にて火をつけ、その火を持って帰ってくることでご先祖様を家までお迎えするという風習がある地域もあります。
お盆のお墓参りについてはこちらで詳しく解説しています。
お盆のお墓参り|伝統的に墓参りにいつ行くべきか,時期や服装などマナーを解説
贈る用のお盆のお供え物の定番
初盆の時などの手土産としてや、遠くの実家への送る用のお盆のお供えを選ぶ際のお話をします。
贈る用のお盆のお土産としては、お仏壇にお供えする五供に関係するもので選ぶのが一般的です。
五供(ごくう)とは仏様・ご先祖様へのお供え物の基本の5つを表す言葉で、
- 浄水
- お花
- 香:線香等
- 飲食(おんじき):食べ物
- 灯明(ロウソク)
これらを意味します。
これらの中で選ぶのが、お盆のお供え物の贈り物としては一般的となります。
ちなみに上記に塗香(ずこう)を加え、仏教の重要な教えである六波羅蜜(ろくはらみつ)の教えを表すとも考えられおり、それぞれに意味があります。
以下では具体的にお盆のお供え物用の贈り物の定番について、それらが定番となった理由も含めご紹介します。
お渡しする際に必要となるのし(掛け紙)については後程解説いたします。
お盆のお供え向けのお菓子の詰め合わせ
デパートの地下食料品売り場でよくお盆のお供え物にも使えるお菓子の詰め合わせのセットがあります。
このお菓子のセットの中で何を選ばなければならないというものはありませんので、初盆の際には、亡くなられた方の好きだったものを送ったり、自由に選んで構いません。
ただお盆のお供えに限定しませんが、お供え物を選ぶ際に注意したいポイントとしては以下の3点が挙げられます。
- 後でお配りすることを踏まえて、小分けされたお菓子の詰め合わせ
- お盆の時期でも日持ちするようなお菓子
- 手土産を渡す家族構成を考え喜ばれるお菓子
お盆の時期のお供え物に、お菓子以外で旬の果物も定番ですが、果物の代わりに旬の果物を使ったゼリー等夏の暑い時期でも腐りにくく日持ちし、消費しやすいお菓子を選ぶと渡された側の家族でも負担が無く良いとされます。
お盆のお供え物は後でおさがりとして、頂くのが基本ですが、上記のものではないと消費しきれず、捨ててしまうということが往々にしてあります。
最近ではそれらの問題を解決するために、お坊さんが立ち上げた「おてらおやつクラブ」という団体があります。
もしお盆のお供えのお菓子等が余ったりした際には、ご活用してみてはいかがでしょうか。
ちなみに、伝統的なお供え物のお菓子として、落雁というお供え物に古くから使われてきた砂糖菓子があります。
おいしさはさておき、お供え物用のお菓子として古くから選ばれているものです。ご参考までに。
果物の詰め合わせ
お盆の時期にはすいかや桃といった果物が旬を迎え、お供え物に選ばれます。
お盆のお供え物用の果物では特に何が良いと決まったものはありませんが、以下ような考え方があります。
- 丸い果物が好ましい
丸い→円→縁に通じる - お供え物用の果物の詰め合わせは奇数が望ましい
後程でてきますがのし(掛け紙)の水引の数でも奇数が望ましいという考え方に通じる - 旬の果物
スイカ、メロン、桃、巨峰、マスカット等
お供えしている間に熟して、おさがりとしていただく頃に熟して食べごろになるものを選ぶと喜ばれますね。
その他お盆のお供えに向く食べ物
お盆のお供え物にお菓子以外にも、飲み物や乾物など消費期限をあまり気にしないので定番となっています。
- ビール
- 清涼飲料水(カルピスや旬の果物のジュースなどは良く見ましたね)
- お茶
- そうめん
- 海苔
このあたりはお中元にも選ばれますが、お盆のお供えとしても活用できます。
また、五供の考えから、食べ物に限らず、
お線香やロウソクもお供え物に選ばれます。
百貨店のお盆のお供え物のページがありますので、そちらも参考にしてみてください。
また、初盆のお供え物として、上記とは別で、近しい親戚の場合伝統的には白い盆提灯を送る伝統もあります。
住宅スペースなどのことも考慮し、提灯を送らずにお金をお渡しするのでも問題ありません。
お盆のお供えののし(掛け紙)について
お盆のお供え物を渡す/送る場合には、掛け紙を付けるのがマナーです。
掛け紙は、のし紙を含めた贈り物の包装紙全般を意味します。
のしとは厳密にはお祝い用だけを指します。(ですが以降百貨店など一般でも”のし”と呼ばれますので、”のし”で説明します)
お盆のお供え物用ののし紙は、香典と同じ種類を選びます。具体的には、
お盆のお供え物ののし紙の形式 | 種類 |
水引の色 | 全国一般:黒白、双銀 関西を中心に一部地域:黄白 |
水引の数 | 5本(ほとんどの場合5本ですが5本以外でも奇数が基本です) |
水引の形 | 結び切り |
以下の形のものを選べば間違いはありません。
のしの書き方(表書き)
お供え物ののしの表書きには、
- 粗供養
- 御供/御供物
これらが一般的に使われます。
のしの名前の部分を空白にすることは基本的にNGですので名前を書きましょう。
続いて、お金をお渡しする際のマナーを解説します。
ちなみに上記で説明したのしのマナーはお盆のお供え物セットを百貨店や専門のサイトなどで購入する際は、基本的にお店側で全部対応してくださいますので気にしないでも良いでしょう。
お盆のお供えとお金のマナー
お盆お供え物の金額の相場や初盆のお供え物/御香典の金額のマナーについて解説いたします。
お盆のお供えの金額の相場
お盆のお供え物の金額の相場は、初盆かそれ以外のお盆かで変わるのが一般的です。
- お盆のお供え物の相場は3000~5000円
- 初盆のお供え物の相場は5000~10000円
初盆にお供え物の代わりに香典を包む場合
初盆の御香典の金額の相場はお供え物の相場と同様5000~10000円とされます。
お供え物と一緒に香典を渡す場合もありますが、その場合は合算して上記の数字にする場合もあります。
御香典をお渡しする場合の香典袋は、お盆のお供え物ののしと水引は同じ種類を選び、
表書きには
- 御仏前/御佛前
- 御供物料
と書きます。
また、伝統的に初盆の際には提灯を送りましたが、実際に提灯を送るのではなく、提灯代をお渡しするということもあります。
お盆のお供えの仕方・処分の方法
贈り物も含めてお盆のお供え物をお仏壇の前に飾る方法について解説いたします。
お盆のお供えはいつからいつまでか
お盆のお供え物は、お盆の入りからお盆明けまでの期間に飾ります。
地域によってお盆がいつかは変わります。
多くの地域で行われるお盆は8月13~16日で、こちらを例にとると、
お盆のお供えは13日の午前中に飾り付けを終わらし、15日の夕方以降、もしくは16日にはお菓子などを親戚で分け、お供え物は下げます。
この期間はご先祖様の霊が、13日の夕方ごろに来られ15日の夕刻、もしくは16日に帰られるという考えから来ています。
お盆のお供え物はお盆の入りの前日着に
お供え物をお送りする際は、相手の家庭に聞くのが最も良いですが、一般的にはお盆の入りの前の日、8月12日までに着くようにします。お盆が7月の場合は7月12日までです。
地域が旧盆の場合は、毎年お盆の時期が変わります。
お盆の時期についてはこちらで詳しく解説していますので、お供え物を飾る期間なども確認ください。
お盆の2019年の期間|お盆がいつかは地域で変わる(東京等ではお盆は7月に)
お盆のお供え物の飾り方|仏壇の前の盆棚
お盆のお供え物の飾り方について簡単に解説します。
まずお仏壇の前に盆棚(精霊棚)を作ります。(上記の画像は3段ですが、段数に決まりありません)
この棚には、こもと呼ばれるござのような敷物を敷きます。
ご家庭の宗派によって違いますが、曹洞宗などでは白い布を敷きます。また半紙を敷くご家庭もあるそうです。
盆棚にご位牌や、水、花、そしてお盆ならではのお供え物を置いていきます。
盆提灯は上記の画像のように棚の横に一対もしくは二対で置きます。
青竹を立てる場合は盆棚の四隅に青竹を立て盆棚の上で紐でつなぎます。
そこにホオズキをつるすのが正式とされます。
盆棚(精霊棚)の上のお供え物の並べ方は特に決まりはありません。
お供え物を受け取った際はそれらも盆棚の上にお供えしますが、スペースがない場合は近くに置き対応をします。
いただいたお供え物で箱の中に入っているようなお菓子などは、箱から取り出して、食べられる状態でお供えするものとされます。
仏様やご先祖様が召し上がられる物なので、食べられる状態にするという考え方です。
以下では代表的なお盆のお供え物の置き方などを解説します。
きゅうりとなすを使ったお供え物:精霊馬
きゅうりとなすを使って、馬と牛に見立てるお供え物の精霊馬(精霊牛)は、ご先祖様をお迎え、お送りするための飾りです。
これらは盆棚の上に置きますが、迎え盆/送り盆で頭の向ける方向を変える家庭もあります。
迎え盆の際お仏壇の方に頭を向け、送り盆の際にはお仏壇ではない外側を向けるや、
きゅうりは迎え盆で玄関の方向に向け、なすは送り盆で玄関を向ける、その他地域で様々です。
詳しくはこちらで解説していますので、ご覧ください。
お盆のなすときゅうり(精霊馬)の意味とは|作り方や飾り方など解説
お膳の置き方
お供えのお膳は仏様、ご先祖様が食べられるように、箸が仏壇からみて手前に来るように配置します。
また、お膳のお箸をご飯に立てるように刺してお供えする一膳飯(枕飯)の形式でお供えするご家庭もあります。
御馳走は常に絶えないようにお供えするのが習わしです。
お供え物のお花
お盆に限りませんが、
- トゲを持つ花:バラ等
- ツルを持つ花:スイートピー等
- 毒がある花:彼岸花等
- 香りが強い花:ユリ等
これらはお供えしてはいけないとされる花です。
初盆の際の供花には、白を基調とした花を供えるのが一般的です。
盆提灯
お盆の期間中は灯が消えないように付けておきます。
この盆提灯の火にご先祖様が宿るという考え方からこのような対応をします。
お盆のお供え物の処理方法
お盆を終え、お供え物は16日に片づけをします。(15日でお盆が明ける際は15日)
お供え物を処理する方法には大きく2つあります。
- 食物は傷んでないならお下がりとして頂く
お仏壇にお供えしたものをいただくことで仏様のご利益に預かるという考えがありますので、基本はいただきます。 - 精霊流しでお供え物を川や海に流す
自治体などが主導となって、川や海にお盆のお供え物を流す行事です。
食べきれないもので、まだ消費期限が来ていないのであれば、前述のおてらおやつクラブを利用したり、親族通しでお裾分けをします。
ダメになったものはもったいないですが、そのまま捨てて問題ありません。
ちなみに精霊流しは環境の問題から、今では地域の団体が引きうけて行っているのが一般的で、個人で勝手に流してはいけないようになっていますのでご注意ください。
お盆のお供え物にまつわるマナー
その他お盆のお供え物に関する細かいマナーについて解説します。
初盆のお供えをいただいた時のお返し
初盆で御香典をいただいた場合や、お供え物をいただいたお返しはその金額の1/3~半分ほどをお返しするのが目安とされます。
お返しの場合ののしの表書きには、
- 志
- 粗供養
これらを付けるのが一般的です。
お返しの品に、お礼状をつけてお渡しするとより丁寧です。
ちなみに普段のお盆で親戚からお供え物をいただいた場合は、お供え物を分けて持って帰っていただくなどで対応したりします。
お供え物を手土産として持参する際の渡し方
お盆のお供え物を手土産として持参する際にはのしを付けるだけでなく、正式には風呂敷などで包みます。
風呂敷は、慶事でも弔事でも使える紫色を使うのがおすすめです。
最近では風呂敷は使う機会は少なく、紙袋に入れたものを渡すことが多いと思いますが、お渡しする際は、紙袋から出し両手でお渡しするものです。(厳密には和室・洋室でお渡しのマナーもあります)
お手土産としてお盆のお供え物をお渡しする場合、仏壇に手を合わせる前にお渡しをするのが通例です。
宗派による違い
今回は、仏教行事としてのお盆を中心に解説しましたが、神式の場合には、お供え物が違ったり、キリスト教ではそもそもお盆を行わないなどの違いがあります。
さらに、同じ仏教でも、浄土宗、浄土真宗、曹洞宗等禅宗、真言宗、天台宗、日蓮宗と宗派があり、それらの中でも違いがあります。
特にお盆の考え方が大きく違うのが浄土真宗で、浄土真宗では先祖供養の行事としては捉えません。
捉え方も違えば、お供えの方法でも違いがありますので、厳密なお供えの仕方を知りたい方は、お世話になっているお寺さんにお聞きください。