盂蘭盆とは|意味や盂蘭盆会という法要の起源・期間について解説

盂蘭盆-盂蘭盆会-うらぼん

盂蘭盆/盂蘭盆会とは|意味・由来など解説

盂蘭盆とは「うらぼん」と読み、お盆という年中行事の起源となる言葉で仏教の言葉です。

盂蘭盆会とは「うらぼんえ」と読み、盂蘭盆に行う法会のことを言います。

祝日でもない8月13日~15日頃にお盆休みと言ってお休みがありますが、このお盆の起源となったとされる盂蘭盆/盂蘭盆会とは一体どのような期間・行事なのかを解説いたします。

盂蘭盆とはお盆の由来

「お盆」の盆の字は盂蘭盆の盆からやってきています。

お盆のお墓参りをして仏壇にお供え物をするということや、盂蘭盆という仏教由来の言葉からも仏教の行事として根差しています。

しかし、厳密には盂蘭盆とお盆は違いがあるとも言えます。

現在の個人の家で行われるお盆という行事は、精霊祭り、魂祭りとも言われますが、仏教だけでなく、日本に土着の祖霊信仰の影響が大いにあるとされます。

一方盂蘭盆とは、本来純粋な仏教的行事であり、日本の祖霊信仰の影響があるものではありません。

また、さらに厳密に言えば、盂蘭盆自体が仏教だけでなく、中国の文化(道教)の影響を受けているともされます。

そんな盂蘭盆とはどのような歴史があるものかを簡単にご説明していき、盂蘭盆・盂蘭盆会に行うことを解説いたします。

盂蘭盆の意味は「倒懸」

盂蘭盆とはその起源に複数の説を持つものですが、一般に知られることから解説いたします。

盂蘭盆は、サンスクリット語という仏教が生まれた当時のインドで使われていた古代語の「ウランバナ」が語源とされます。

このウランバナという言葉は、倒懸(とうけん)という意味を持ち、それは「逆さ吊り」という意味を持ちます。

この盂蘭盆が意味する倒懸とはどういうことなのか、詳しく解説していきます。

盂蘭盆の起源にまつわる説|盂蘭盆経の物語

お盆の起源となる盂蘭盆の起源は、目連尊者というお釈迦様のお弟子さんの一人で、神通第一と呼ばれる人の話に由来します。(神通第一とは不思議な力を持った人と思ってください)

この目連尊者の話は盂蘭盆経というお経の中に書いてあります。

それによると、ある夏の暑い日、目連さんは目の前を楽しそうに通った母子を見て、天眼という不思議な力を使って、自分の亡くなった母が今どうされているのかを見ることにしました。

すると、あろうことか母親は餓鬼道という、生前にケチで人に与えたりすることを拒んだ人が向かう世界に堕ちていたのでした。

この餓鬼道は生前、人にやさしく接さずに自分の利益になることに貪欲で、ケチだった人が向かう世界で、そこに堕ちた人達は飲み物も食べ物も、目の前に出てきても食べようとすると蒸発したり灰となって食べられず、欲しいという欲望だけが募り苦しみ続けます。

目連尊者の母がこのような世界に堕ちたのは、目連という愛しい子を愛するがゆえに、周りにケチになったことが原因だそうです。

自分にはとても優しかった母を救うため、目連は不思議な力でお水や食べ物を渡しに向かいました。

しかし、渡そうとすると、目の前で蒸発したり、燃えて灰になったりと渡すことはできず、むしろ苦しみが増してしまいました。

目連は母を助けるために、お釈迦様に救う方法を聞きに行きました。

すると、7月15日に多くの僧に対して、飲み物や食べ物をお盆に乗せて提供することで、餓鬼道に堕ちた父母を救うことができると教えたのです。

お釈迦様のアドバイス通りに目連が供養をすると、母は救われ餓鬼道の苦しみから解放されたのでした。

日本での盂蘭盆・盂蘭盆会の起源

盂蘭盆経が由来とされる盂蘭盆・盂蘭盆会という行事が日本で行われるようになったのは、今から1400年前の606年推古天皇の時代と言われます。

日本書紀の記述が根拠となりますが、推古天皇の時代に7月15日に何かあったと書いてるだけで、盂蘭盆会と書いていないことから、はっきり盂蘭盆会という記述がある657年斉明天皇の時代が日本の盂蘭盆会の起源だとも言われます。

盂蘭盆・盂蘭盆会とは本来

日本で盂蘭盆・盂蘭盆会が行われ始めた頃など、古来のお盆は今のお盆とは少々違いがあったそうです。

現在のお盆は、自分の家族の祖先の霊を供養する行事となっていますが、昔は以外に様々な霊がこの世に帰ってくるとされる盂蘭盆の期間にたくさんの霊を供養するという側面がありました。

現在でも一部の寺院で先ほどの目連尊者の話にも出てきた、餓鬼という欲求が満たされず苦しみ続けている霊魂を救うために行う施餓鬼会という法要を行っているところもありますが、盂蘭盆・盂蘭盆会では、この施餓鬼会という行事と混同されていたのです。

“盂蘭盆経”が盂蘭盆会の起源と言われるが

目連尊者の物語が、盂蘭盆経というお経に書いてあり、仏教の行事として今も行われていると解説しましたが、

この目連尊者の話が書かれた盂蘭盆経は、お釈迦様の残された言葉から作られたものではなく、中国の僧が勝手に作ったもの(偽経)とも言われます。

さらに盂蘭盆という言葉自体の意味も倒懸以外にも、ご飯やらご飯を運ぶお盆の意味など様々な説があります。

これらについては最後にまとめて解説いたしますので、詳しく知りたい方は、そちらをご覧ください。

盂蘭盆/盂蘭盆会の法要など行うこと

まずは盂蘭盆/盂蘭盆会の法要、つまりお盆という行事に何を行うかをご紹介いたします。

盂蘭盆会(盂蘭盆の法要)

ご先祖様の霊を供養するために行う盂蘭盆の法要、つまり盂蘭盆会ですが、一般的に行われることを簡単にまとめると以下のようになります。

  • お墓参り
  • お仏壇に盆棚(精霊棚)を作りご先祖様の霊を迎え供養
    この時僧侶を読んだり、宗派によって御詠歌を上げたり様々な伝統が家によってあります。
  • ご先祖様の霊をお送りする

このような流れになります。

また、家によっては、寺院などで行われる盂蘭盆会・施餓鬼会と呼ばれる法要に行くところもあるでしょう。

ですが、多くの家族で行われるお盆と言う行事は、家族や親戚で集まり、ご先祖様の霊を供養する行事となっています。

特に、親族が亡くなって49日が経過した後に初めて迎える盂蘭盆は初盆(新盆)と言われ、普段のお盆よりも盛大に行われます。

初盆(新盆)の法要

初盆の法要は、普段のお盆で僧侶を読んで棚経を上げない家でも、僧侶の方を読んで読経してもらうのが一般的です。

家の方で行うことで普段のお盆と大きく違うことはありません。

伝統的な風習では、親戚が初盆に白い提灯を送るなどがあります。

盂蘭盆のお布施の相場や服装などのマナー

僧侶の方に来ていただく場合お布施を渡しますが、盂蘭盆のお布施の相場は、

一般的なお盆のお布施が5000~30000円ほどで、
初盆には30000円~50000円などともされます。

しかし、本来お布施は気持ちであるものですので、経済的な状況なども加味して、無理のない範囲でお納めしましょう。

ちなみに、盂蘭盆を家で行う場合、初盆でなければカジュアルな服装でも問題ありません。

初盆であれば、略式の喪服などを着るのが一般的とされます。

寺院で行われる盂蘭盆会に向かう際には、少しフォーマルなもので行くのが一般的と言われます。

盂蘭盆会の飾り/お供え物(お盆飾り)

盂蘭盆会の飾りやお供え物はご先祖様の霊に向けたものが基本ですが、実は施餓鬼の影響から、様々な霊のためのお供え物もあります。

盂蘭盆会のなすときゅうりのお供え物の意味

盂蘭盆 盂蘭盆会 なす きゅうり イラスト

盂蘭盆会の有名なお供えの一つのなすときゅうりはご先祖様の霊を迎える、お送りするためのお供え物です。

なすは牛、きゅうりは馬を意味します。

地域によって意味は違いますが、きゅうり(馬)はご先祖様の霊にいち早く帰ってきていただくための乗り物で、なす(牛)はご先祖様の霊にゆっくりと帰っていただくための乗り物とされます。

詳しくはこちらで解説しています。

お盆のなすときゅうり(精霊馬)の意味とは|作り方や飾り方など解説

ちなみに、お盆飾りでなすときゅうりを使った水の子という料理がありますが、こちらは餓鬼を供養するための食事となっています。

その他のお盆のお供えについてはこちらで詳しく解説しています。

お盆のお供えの仕方,お盆のお供え物で贈るお菓子の金額やのしのマナー等解説

迎え火・送り火

迎え火と送り火は迎え盆/送り盆にご先祖様の霊をお迎えする、お送りするための道を照らす火になると考えています。

ちなみに返ってこられたご先祖様の霊は盆提灯の明かりに宿ると考えられています。

迎え火や送り火を行う時間などについてはこちらで詳しく解説しています。

迎え盆/送り盆とは|意味や迎え火や送り火をする時間などを解説

ちなみに、送り火の代わりに精霊流しを行う地域もあり、本当に盂蘭盆に行うことは地域の特色があります。

盂蘭盆会に御和讃(御詠歌)

また盂蘭盆会に家族・親戚が集まって御和讃(御詠歌)を読む伝統もあります。

私の家ではしてきたのですが、地域によってしていないところもあるそうで地域によるものと言えます。

また宗派によっても変わるもので、曹洞宗や真言宗などそれぞれの宗派で御和讃の流派があるとされます。

盂蘭盆/盂蘭盆会の時期

盂蘭盆・盂蘭盆会で行うことが地域で大きく変わりますが、その時期さえも大きく変わります。

本来は盂蘭盆経の話にもありましたが、旧暦の7月15日に行われていたものでした。

しかし、明治時代の改暦によって12月3日が1月1日に突然変わりました。

この変わった新暦でお盆をいつするのか混乱して、現在では地域によって盂蘭盆の時期が違うようになります。

季節がずれても暦のまま行った地域ではお盆が7月のままになります。

一方、季節に合わせてお盆をずらした地域ではお盆を8月になります。(8月のお盆は月遅れ盆や新の盆などと呼ばれます。)

さらに、旧暦の7月15日に合わせて行う地域(=旧盆と呼ばれる)もまだあります。

これらについてはこちらで詳しく解説しています。

旧盆とは|期間など複数ある意味を解説(沖縄等での旧盆は2019年は8月13-15日)

時期はずれても、盂蘭盆の期間はほとんどの地域で同じです。

大体が4日間あります。

ちなみに7月13~16日とする地域は全国の30%ほど、8月13~16日が60%ほどとされています。(もしくは13日~15日)
参考:お盆の行事に関するアンケート調査

お盆の期間についてはこちらで詳しく解説しています。

お盆の2019年の期間|お盆がいつかは地域で変わる(東京等ではお盆は7月に)

宗派と盂蘭盆会

宗派による盂蘭盆会の違いについて簡単にご紹介します。

ちなみに宗派がどうであろうと地域や家族の伝統などもあるので、ここにあるのはあくまで一つの例と考えてください。

浄土真宗の盂蘭盆会

浄土真宗では盂蘭盆会に先祖供養をしないと言うのが基本的な姿勢です。

それは、浄土真宗の開祖親鸞の教えから、成仏してあの世(彼岸や極楽浄土と言われる)に向かった霊がこの世界に帰ってくるということはないという考えです。

ちなみに成仏や霊という考え方自体、お釈迦様が説いた仏教の教えではなく、仏教が様々発展していく中で生まれた考えです。

曹洞宗の盂蘭盆会

曹洞宗では、盂蘭盆会に施食会(せじきえ)という法要を行う寺院が多くあります。

施食会は施餓鬼会とほぼ同意です。

曹洞宗の門徒の方も、特に他の宗派と大きく変わった盂蘭盆を行うわけではありません。

他にも日蓮宗や真言宗など様々な宗派ありますが、浄土真宗が一般的な盂蘭盆をしないということ以外変わりはあまりないと言えます。

盂蘭盆会の期間に寺院等で行われる法要やお祭り

盂蘭盆・盂蘭盆会の期間に行われる有名な行事をご紹介します。

京都の五山の送り火

京都の大文字焼きで知られる五山の送り火は、盂蘭盆・盂蘭盆会の最終日に行われる行事です。

簡単に言うと送り火の大規模版です。

各家庭でご先祖様の霊をお送りする送り火を、多くの霊をあの世までお送りするための大規模な送り火となっています。

盂蘭盆万灯供養会

京都の大文字焼きと同じ、大規模な送り火である盂蘭盆万灯供養会というものが様々な寺院で行われます。

京都の壬生寺(みぶでら)では、8/9~16日の期間灯され、送り火と言うだけでなく、供養をするために万灯が灯され、とてもきれいで観光名所となっています。

清水寺では盂蘭盆の期間に夜間特別拝観が可能

京都きっての観光地の清水寺では、盂蘭盆の時期(8/14-16日)に夏の夜間特別拝観を行っています。

盂蘭盆の意味や由来の様々な説について

盂蘭盆・盂蘭盆会の意味や由来には様々な説があると冒頭でご紹介しましたが、具体的に他にどんな意味・由来があるとされるのかについてご紹介します。

盂蘭盆の意味は「ご飯を乗せたお盆」「霊魂」…

盂蘭盆の意味は倒懸ではなく、「ご飯を乗せたお盆」を意味するという説が有力とされます。

盂蘭をご飯と訳して、盆はそのまま私たちが食事を運ぶのに利用するお盆だという説です。

また、様々な説がありますが、古代のイランで利用されていたartavany、もしくはurvanという霊魂の意味を持つ言葉が盂蘭盆という言葉の由来ともされます。

盂蘭盆・盂蘭盆会は中国の道教行事が由来と言う説

これは盂蘭盆・盂蘭盆会が仏教由来ではないという説です。

盂蘭盆と盂蘭盆会は中国の民間信仰、もしくは道教に由来する中元節が由来と言う説もあります。

この中元節では、旧暦7月15日に地官大帝という地獄の門の開け閉めを司る神様の誕生日があって、地獄の門が開けられ死者の霊がこの世に帰ってこれる日とされます。

中国の文化の影響を受けたアジア地域では、この中元節が行われているところも多くあります。

この中元節が盂蘭盆会の起源となったとされます。

日本伝統の先祖供養が盂蘭盆・盂蘭盆会に

また、お釈迦様が説いていた仏教では先祖供養と言う考えはありません。

先祖の魂という考えは、日本の土着の信仰であり、日本に仏教がもたらされてから、この日本の信仰をうまいこと取り入れて今に残っているとされます。

春のお彼岸・秋のお彼岸も本来は仏教ではなく、日本の伝統が起源とされます。

盂蘭盆・盂蘭盆会という伝統は様々な要素を含めたものですが、日本では1000年以上の歴史を持つものです。