花祭りとは仏教においてお釈迦様の誕生を祝う重要な日|甘茶の意味等解説

花祭り,花まつり

花祭りとは|仏教の重要なイベントを解説

花祭りとは仏教寺院にて行われる行事の中で最も重要な3つに数えられるものです。

仏教の行事としての花祭り以外にも、日本には花祭りという名前の祭り(愛知県等)がありますが、今回は仏教の花祭りをご紹介いたします。

花祭りの由来はお釈迦様の誕生日

花祭りの由来は、仏教の開祖であるお釈迦様の誕生日にちなんでいます。

お釈迦様の誕生されたことを祝う日として、仏教寺院で行われる行事の中で最も華やかなお祭りになっています。

浄土真宗やその他、ほとんどの宗派に関わらず花祭りをお祝いしますが、日蓮正宗はお釈迦様の誕生日を祝う花祭りを行わないなど例外もあります。

花祭りという名前は通称で、別名に以下の名前があります。

  • 灌仏会(かんぶつえ)
  • 降誕会(ごうたんえ)
  • 龍華会/竜華会(りゅうげえ)
  • 仏生会(ぶっしょうえ)
  • 浴仏会(よくぶつえ)
  • 花会式(はなえしき)
  • 仏誕会

いずれも花祭りのことを意味します。

ただし、浄土真宗では開祖の親鸞聖人の生誕祭として降誕会という名前を使ったりと、宗派によっては花祭りという名前をお釈迦様の誕生以外のお祝いにも利用するようです。

花祭りは2019年4月8日

花祭りは毎年お釈迦様が誕生されたとする4月8日に行われます。

今から2500年ほど前のインドにて誕生されたお釈迦様は実在した人で、花祭りで行われることなどはこのお釈迦様の誕生の伝説に基づいています。

花祭りがいつかは寺院による

実在したとはいえ、お釈迦様の誕生の日は明確ではなく、日本以外の世界の国では3月や5月に花祭りに相当する誕生祭を行うところもあります。

さらに、日本の中でも寺院によっては4月8日ではなく、5月8日に行う寺院もあります。

これらの違いは、仏教の起こったインドで利用されていた暦から中国の暦への変換、そしてこれら旧暦から新暦への変換によって差異が生じています。

日本に花祭りが旧暦(太陰太陽暦)の4月8日として入ってきました。

この日をそのまま新暦にも適用した寺院と、新旧の暦が大体1カ月ずれていることから、5月8日にした寺院があります。

花祭りの甘茶等の意味

花祭りに行くと無料でいただくことができる甘茶や、花で彩られた花御堂、白い象など独特なものを見ることができます。

これらはお釈迦様の誕生に関係するものとして花祭りで見られますが、どのような意味を持つのかご紹介していきます。

花祭りの甘茶の意味

花祭りでお釈迦様の誕生仏に灌い(そそい)だり、無料で振舞われる甘茶ですが、これはお釈迦様が誕生されたときの逸話に由来します。

お釈迦様が誕生された時、天から甘露という甘い雨が降ってきて、それをお釈迦様の産湯にしたとされます。

この甘露は八大竜王の阿那婆達多(あなばだった)竜王が降らせたとか、九の頭を持つ龍神、九頭の龍が降らせたと言われますが、お釈迦様があらゆる存在から祝福されていたということがわかるエピソードです。

この逸話から、お釈迦様が誕生した時の姿とされる誕生仏に甘茶を灌具ようになったとされます。

お釈迦様の誕生仏は下の画像のような姿で、これはお釈迦様が生まれた後にされたポーズだとされます。

花祭り 釈迦誕生仏 画像

花祭りの甘茶は普通の茶の作り方とはちがう

ちなみに花祭りで振舞われる甘茶は茶とつきますが、お茶葉から作られるものではありません。

ユキノシタ科のアマチャという植物から作られるもので、とても甘いですが、砂糖が入っているのではなく自然由来の甘さです。

ちなみに、この花祭りで振舞われる甘茶には次のようなご利益があると言われています。

  • 甘茶を飲むことで、無病息災のご利益に預かれる
  • 目につけると目が良くなる
  • 甘茶で墨をすって習字をすると字がうまくなる
  • 甘茶の墨汁で「千早振る卯月八日は吉日よ、神下げ虫を成敗ぞする」と書いたものを玄関などに貼ると害虫が来なくなる

などなど、言われますが、実際甘茶は漢方にも利用されていた効能のあるものです。

ぜひこの機会に飲んでみてはいかがでしょうか。

参考:養命酒生薬ものしり辞典 甘茶

花祭りの白い象の意味

花祭りの時に、寺院には似つかわしくない白い象の像が飾られたり、

稚児行列という花祭りに行われる小さな子供が参加する行事で、白い象を引くということが見られます。

この白い象の意味は、お釈迦様を出産されたマーヤー王妃(摩耶夫人)が懐妊した際、白い象が右脇から胎内に入っていくという夢を見たとされます。

このことから、白い象は尊い方が生まれることを意味するとされます。

花祭りの花御堂の意味

お釈迦様の誕生仏を安置する場所は、花で彩られた花御堂(はなみどう)という櫓です。

この花御堂は、お釈迦様が生まれたとされる、お花畑を表現しています。

花祭りでは赤い花が多く見られますが、これはお釈迦様が生まれた時に摩耶夫人が手に取ろうとした花の種類がアソーカ(無憂樹)と呼ばれる赤い花だとされるからと考えられます。

これらが有名な花祭りで見られるものですが、他にも地域によっては花祭りに飾る食べ物があったりするようです。

また、近年人気となっている御朱印集めですが、花祭りに限定の御朱印を授与してくださる寺院もあります。

花祭りの由来|お釈迦様の誕生の話

花祭りの際に法話などで聞くこともあるかもしれませんが、お釈迦様の誕生の逸話についてご紹介します。

お釈迦様は、紀元前600-500年に誕生されたとされ、王族である釈迦族の長男としてお生まれになります。

当時母親は実家で出産をするという風習があり、お釈迦様の母の摩耶夫人も故郷に帰ろうと王宮から旅路につきます。

その旅の途中、現在のネパールにあるルンビニーという花畑にて休憩をしていて、そこにあったアソーカ(無憂樹)の枝に手を伸ばしたところ、右脇からお釈迦様が誕生されたのです。

誕生して東西南北、四方に向かって7歩進んだ後、右手は天を指さし、左手は地を指さし「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」と言われたとされます。

そして花祭りの甘茶の由来となる、甘露を龍が降らせてそれを産湯として使ったと言われます。

お釈迦様誕生後の7歩の意味

お釈迦様は人としてこの世に生まれ35歳で悟りを開き、仏陀になりましたので、この7歩や天上天下唯我独尊と言ったと言う誕生の逸話は後の世の創作だとされます。

しかし、これらには意味があるものだと言われます。

お釈迦様が歩んだ7歩とは、仏教の考え方の六道輪廻を超越することを意味します。

私たち人間等はこの世は苦しみにあふれた6つの世界、六道に生きています。

この六道は地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天道という六つよりなり、いずれも苦しみを伴う世界です。

私たちは輪廻転生(様々な存在として生まれ変わること)によって、人間道に今は生まれついていますが、その次は果てしない苦しみの世界である地獄道に落ちるかもしれません。

お釈迦様はこの六道という輪廻から悟りを開いて完全に抜けだした存在です。

誕生時の7歩もこの輪廻を超えた存在であることを意味しているとされます。

天上天下唯我独尊の意味

お釈迦様が誕生されて、発したとされる「天上天下唯我独尊」。

この言葉は「我こそがこの世でただ唯一尊い存在である」という意味とされていますが、お釈迦様がそのようなことは言わないとして、次のような解釈がなされています。

「この世では私たち人間は尊い存在だ」

これは、「六道輪廻の中の人間道に生まれついたこと自体が有難いことであり、さらに人間は、お釈迦様、仏様の教えを聞いて悟りを開く機会があるありがたい存在である。」という意味をしていると解釈されますが、様々な解釈があります。

詳しく知りたい方は、専門の僧侶の方や学者の方の本を読むことをおすすめします。

花祭りのイベントが有名な寺院

日本のほとんどの寺院で行われている花祭りですが、特に大きなイベントをしている寺院をご紹介します。

そういった寺院ではなく、お近くの寺院でも行っていて、甘茶の接待を受けたりお菓子などの食べ物をいただくこともできます。

家族で楽しむことができる行事ですのでぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

ちなみに日本で花祭りと呼ばれるお釈迦様の誕生日のお祝いの法要は、日本書紀に推古十四年(606年)の4月8日に法要があったことが見られそれが初めてだと言われています。

元は中国から由来してきたような盛大な行列を作るようなお祭りでしたが、その後今の日本の甘茶をかけるなどの形式になります。

花祭りと呼ばれるようになったのは明治時代だと言われます。

築地本願寺の花祭り(東京都)

銀座からほど近い築地にある築地本願寺では、子供が楽しめる様々なイベントブースもある花祭りを開催しています。

様々な食べ物の屋台もあり家族で楽しめるようになっています。

また、花祭りの風物詩ともいえる稚児行列も行っています。

こちらは前もって募集されているものですので、先に応募をしてください。

築地本願寺の花祭りのページ(2019年のはなく2018年の花祭り情報です)

浅草寺の花祭り(東京都)

東京の観光名所の浅草寺でも大規模な花祭りが行われます。

本堂の前に大きな花御堂を建て、参拝客の誰もが甘茶をお釈迦様の誕生仏にかけて拝むことができます。

甘茶も無料でいただくことができます。

浅草寺は近年特に賑わっていますし、元々赤色の本堂など華やかな寺院ですが、花で煌びやかに装飾された花御堂など普段よりも華やかな雰囲気はぜひ一度見てみるのをおすすめします。

浅草寺 仏生会・花祭り(ぶっしょうえ・はなまつり)のページ

西本願寺の花祭り(京都)

JR京都駅からほど近い西本願寺の花祭りも有名です。

白象の上にお釈迦様の誕生仏が安置されていたり、様々なイベントを行っているなどこちらも楽し見ながら仏教の行事に参加できるようになっています。

西本願寺はなまつり関連行事のお知らせ(2018年の情報です)

東大寺の花祭り(奈良)

奈良の大仏で知られる東大寺では花祭りを盛大に行っています。

大仏殿正面に花御堂が安置され誰でも甘茶をかけることができます。

東大寺の仏生会のページ

上記で見たような寺院に限らず、仏教系の幼稚園、保育園などで花祭りを行うところもあります。

また家に花御堂を買ってそのお祝いをすることもあり、堅苦しくならずにお祝いをしてみてはいかがでしょうか。

また、花祭り以外にも、仏教の重要な行事として涅槃会成道会という法要もあります。

それぞれお釈迦様の命日、お釈迦様が悟りを開かれた日に由来する行事です。

これらについてはこちらで詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

涅槃会とは|お釈迦様の命日の法要とだんご・はなくそ等の由来を紹介

成道会とは|12月8日にお釈迦様が悟りを開いたお祝いの日を意味