貪欲の意味とは|貪欲とは仏教由来の言葉
貪欲の意味とは、広辞苑では次のように表記されています。
自己の欲するものに執着して飽くことを知らないこと。非常に欲の深いこと。仏教では三毒・十悪の一つ。貪。
出典:広辞苑 第七版 岩波書店
貪欲は現在では、「貪欲に知識を吸収する」などの良い意味での使い方も見られます。
しかし、貪欲という言葉の由来である、仏教においては三毒・十悪という漢字で見てわかる通り、悪いものであり、貪欲は私たちの人生を苦しめる原因となる煩悩の一つです。
今回は、貪欲の意味についてや現代での使われ方、英語で貪欲に対応する表現を解説するとともに、仏教の教えについても簡単にご紹介いたします。
貪欲の読み方は「どんよく/とんよく」
貪欲は「どんよく」という読み方が一般的に知られますが、本来は「どんよく」ではなく、「とんよく」という読み方が正しいとされます。
貪欲の意味
貪欲の意味については冒頭で広辞苑の定義を引用しましたが、貪欲という言葉は現在では良くも悪くも強い執着心を持つことに利用されます。
分かりやすく英語で表現すると、
貪欲は良い意味で使われる場合、hungly
貪欲は悪い意味で使われる場合、greedy
と訳出されることが多いです。
貪欲の英語表現
hunglyとは、「having strong desire or craving 参考:oxford dictionaries」
強い欲望を持つことや何かを渇望することで、辞書の例文等でも、hungry for success(成功に向け貪欲に)など良い意味で訳出されることが多い一方、
greedyとは、「having or showing an intense and selfish desire for wealth or power 参考:oxford dictionaries」
自己中心的で、激しい富や権力への欲望を持つことと訳されます。
いずれも日本語では貪欲とも訳されるので、その使われる文脈によって、良い意味も悪い意味も持ち合わせていると言えます。
貪欲とは仏教は苦しみの原因を意味
仏教では貪欲を「貪」とも表現します。
仏教で貪欲は私たちの人生を苦しみばかりのものにする原因の煩悩を意味します。
煩悩の数は108あると言われますが、それら108もある煩悩の中で最も根源的な3つ(三毒)の中の一つが貪欲です。
欲が生まれることは人である以上、自然なことではありますが、その欲が貪欲のように「何かを貪るように欲する」となると、私たちを苦しめるので対処する必要があるとお釈迦様は教えます。
後程、煩悩に関する仏教の教えについてご紹介いたします。
貪欲の対義語
貪欲の対義語として利用される言葉は、
無欲や小欲、小欲知足という言葉などです。
ちなみに小欲知足というのは仏教用語で、欲が生まれることをなくすのではなく、欲を抑え、今ある周りの状況に満足することを知るという意味です。
仏教で貪欲の反対は「不貪欲」
仏教では、貪欲の反対の言葉に不貪欲(ふとんよく)という言葉があり、激しい欲を持たないことを意味します。
貪欲の類義語
貪欲の類義語には、
強欲や渇望、執着という言葉や欲張りという言葉もあります。
実は執着と言うのも仏教の言葉です。
貪欲と強欲
強欲の意味は広辞苑では次のようになっています。
むさぼって飽きることを知らない欲心。
出典:広辞苑 第七版 岩波書店
貪欲と強欲はかなり似ていますが、貪欲は「自己の欲するものに対する執着」であると強調して仏教では教えますので、若干の違いがあります。
貪欲を使った慣用表現や例文
貪欲という言葉の使い方はお金や仕事、勉強など様々な場面で使われますが、よく利用される慣用表現を一部ご紹介いたします。
貪欲に取り組む
仕事や勉強などで一心不乱に努力する様を表現した言葉です。
良い方向で貪欲が使われている例の一つです。
貪欲に学ぶ
貪欲に知識を詰め込むことを意味していますが、こちらもまたよい意味で利用されています。
お金に貪欲などの表現では貪欲が悪い意味で利用されていますが、昨今では貪欲を良い意味で使っている場合が多いかもしれません。
貪欲と仏教の教えについて
貪欲という言葉は本来仏教の言葉であり、私たちの人生を苦しめる原因である煩悩の一つとご紹介しましたが、貪欲ににまつわる仏教の教えをもう少々ご紹介いたします。
貪欲が苦しみの原因となる理由
仏教で苦しみとは「思い通りにならない事に対する苦しみ」を意味します。
人生では様々な苦しい状況や、苦しい何かを経験することがあります。
例えば受験に失敗をしたり、失恋をしたり、と言った苦しみを感じる場面を想像してみてください。
その失敗や失恋という状況の原因となったことは色んな要素があると思いますが、その状況を苦しいと思うのは、
「自分の思い通りにしたい」という欲望が叶わなかったために起きた事と言えませんでしょうか。
苦しいのは、幸せな状況がやってくる、幸せな状況が続く(もしくは普通の状況)と想定しているからこそ、それが思い通りにならない時に感じるものだと言えませんでしょうか。
お釈迦様は苦しみから解放され、楽しく安らかに生きるためにはどうすればいいのかということを考えた結果、貪欲という行き過ぎた欲望を含む、様々な煩悩(人生を苦しめる欲望のこと)を抑えるようにしなければならないのだと悟られたのです。
煩悩と言う教えについてはこちらで詳しく解説しています。
煩悩とは”人生を苦しめる原因”|煩悩の意味と仏教の教えをご紹介
貪欲/瞋恚/愚痴で三毒
貪欲は、瞋恚(しんい)と愚痴という2つの心の動きを加え、三毒と言われます。最も根源的な煩悩です。
もしくは、貪瞋痴(とんじんち)とも言われます。
貪欲以外の三毒の意味は次のようになります。
- 瞋恚
怒ること、腹を立てること - 愚痴
真理を知らず、物事の理非の区別がつかないこと(=無明)
いずれも私たちの人生を苦しみばかりにする根源的な原因、心の動きです。
三毒は、毒のようにひとたび体に入りこめば、どんどんと全身に回り毒のように蝕んでいくものだと言われます。
三毒についてはこちらで詳しく解説しています。
三毒・貪瞋痴(とんじんち)とは|煩悩を意味する三毒の意味(貪/瞋/痴)を解説
貪欲を抑えるために
では、人生を苦しめる貪欲や、その他の三毒をどのように抑え、人生を楽しく安らかに生きることができるようになるかと言うと、四諦 八正道、六波羅蜜などなど様々なアプローチがありますが、まずは、諸行無常と諸法無我というこの世の真理を知ることです。
諸行無常と諸法無我は、仏教の教えをたった三つにまとめた三法印という言葉の中の、2つに当たるもので、仏教の教えでは最も重要な教えと言えます。
諸行無常と諸法無我がわかれば、貪欲という強い欲望を抱くことがなぜ抑えられるかということはそれぞれのページにて解説していますので、ぜひご覧ください。
諸行無常の意味とは|平家物語の”諸行無常の響きあり”の意味も含め簡単に解説
諸法無我とは|意味や簡単にイメージできる例で説明。諸行無常との関係とは
ちなみに、日本で最もメジャーなお経と言われる般若心経も、実は人生の苦しみから解放されるための教えを究極的に短くまとめたものです。
興味がある方はぜひご覧ください。
般若心経とは|全文の意味が分かると面白い!般若心経の現代語訳と意味解説