お聖天様とは|聖天信仰の有名な寺院をご紹介
お聖天様・お聖天さんと親しみを込めて呼ばれ、古くは天皇家や貴族、大名、大商人、民間も信仰してきた神様です。
他の神様や仏様が叶えてくれなかった願いもお聖天様に一心に願えば叶えてくれると言われ、とてもご利益のある神様です。
しかし、約束を破ったり、粗末にしたら祟りをもたらすとも言われる怖い神様とも言われます。
今回は僧侶の方や行者さんのお話も交え、歴史上の偉人もお参りされたお聖天様についてご紹介いたします。
ちなみに筆者である私の家もお聖天様を信仰してきた家で、ご利益に預かりこれまで幸せに過ごせています。
怖い怖いと言われますが、正しく筋を通してお参りをしたら何も怖いことはないと思います。
個人的な経験も交えてご紹介できればと思います。
お聖天様とは歓喜天のこと
一般に呼ばれるお聖天様という神様は、仏教の天部という神様のグループの一柱で歓喜天(大聖歓喜天)と呼ばれます。
この大聖歓喜天からとって聖天(しょうでん)と呼ばれます。
お聖天様にまつわる不思議なお話
お聖天様をお参りする人でご利益を得たと言う人は多くいます。
それらの逸話も有名ですが、日本で最も有名な商売繫盛を祈願する商家の信仰が厚い生駒聖天(宝山寺)を開山した湛海和尚のお話も踏まえてご紹介しましょう。
お聖天様は人を選ぶとは
お聖天様の不思議な話の一つは、「お聖天様は人を選ぶ」というお話です。
色んな解釈がありますが、
- お聖天様という神様を拝むことになるご縁がなければ信仰心はあってもお聖天様を知らないままである
- お聖天様を拝んでも、一心でないのであれば、お聖天様のご利益にはあずかれない
ということがよく言われます。
日本の偉人がこれまでもお聖天様に祈祷をして、病気を平癒してもらったり、戦に勝ったり、一代で財を成したり、様々なご利益に預かっている逸話がある割には、お聖天様という神様はあまり知られていないと思います。
私の周りで信仰心があるという人でも意外とお聖天様を知らないという人は多いです。
また、お聖天様はとても慈悲深く、願いの大小に関らず、一心にお願いし参拝すれば諸願成就を果たすと言われますが、一心な信仰心がなければ、自らの身を削って願いを叶えるということはしないと言われます。
お聖天様とのご縁
お聖天様とのご縁を感じるのは、皆さんの主観だと思いますが、今ここでお聖天様について見ていることも一つの縁だと思います。
お聖天様はご縁をとても大事にされる神様と、古くから僧侶の方や行者さんの話で言われています。
この御縁を切ろうとするものなら、お聖天様は大いに怒り祟りをもたらすとも言われています。
お聖天様の怒りではありませんが、お聖天様のご縁の逸話を一つご紹介いたしましょう。
それは、江戸時代に開山され、比較的新しい寺院ですが、日本で最も有名なお聖天様と言われる生駒聖天の物語です。
生駒聖天のお聖天様と湛海和尚
湛海和尚は伊勢の出身で江戸やその他様々な場所で修行を行います。
そして、京都で聖天庵を開き、聖天様の修法による祈祷をしていました。
同時期、高僧と言われ活躍した浄厳大僧正は、仲の良かった湛海和尚に歓喜天をお祀りするのはもうそろそろやめてはどうか?と幾度か言われたとされます。
お聖天様を本格的に祀る僧侶の方や行者さんは、とても厳しい規律を守って歓喜天像をお祀りするのです。
少しでも間違えれば罰を受けるとも言われます。
湛海和尚はそんな言葉も影響してか、一度歓喜庵を弟子に任せて、自分はさらなる修行を行うため諸国を遍歴します。
そして、現在の生駒聖天で知られる宝山寺のある霊山にてお不動さんを祀り、言語を絶するすさまじい護摩行などの修行を行いました。
しかし、あまりの厳しい修行によって、弟子も減りどんどんと苦しい状況になっていったそうです。
そして、ある時にお聖天様をお祀りするようになりました。
すると、それを境に信者の方が増え、多くの寄進もあり生駒山宝山寺はご本像が不動明王でありながら、生駒のお聖天さんとして多くの信仰を集めるようになるのです。
ついには、生駒山宝山寺のお聖天様の霊験あらたかという噂は京の天子様(天皇)の耳に入り、難病に苦しんでいた天皇をお聖天様のご祈祷によって平癒させ、将軍家や商家、様々な人の信仰を集めるお寺にしたのです。
江戸時代に再建をすることになる東大寺の大仏殿や高野山金剛峰寺の大塔の再興の無事を願うご祈祷には生駒聖天への勧請があったと言われます。
生駒聖天の話が中心にはなりましたが、お聖天様の信仰とそのご利益のお話にはたくさんの逸話が残されています。
お聖天様のご利益は神仏の中で最もすごい
お聖天様のご利益は、どんなに無理なお願いをする人にも与えてくださると言われる素晴らしいものです。
一般にどのようなご利益がお聖天様をお参りすることであずかれるのか、ご紹介いたします。
お聖天様のご利益
お聖天様のご利益はあらゆるもの願いに及ぶとされますが、特に有名なのは、
- 商売繁盛
- 夫婦和合
- 子宝/子授け
- 安産
- 恋愛成就
- 除災招福
- 病気平癒
- 富貴栄達
等々
色んなお聖天様を祀る寺院でも、どんなお願いごとも聞いてくださる神様とご紹介していますね。
お聖天様のご利益の効果の話
お聖天様のご利益の効果は絶大だと言われる様々な逸話が残っています。
有名な人では豊臣秀吉、徳川家康です。
彼らはお聖天様以外の神仏への信仰も篤い人達ではありますが、お聖天様への信仰をしたこともとても有名です。
徳川家康はお聖天様のご利益の効果がすごすぎて、独り占めするために、江戸の町で「お聖天様は怖い」という流言を流したと言われるほどです。
このことが原因でお聖天様を祀る寺院が東京には少ないとも言われます。
また、商売人で一代ですさまじい富を築いた人も商売繁盛のご利益に預かったと言われ、松下幸之助もお聖天様を信仰したと言われます。
他にも様々な歴史に名を残さない多くの人がお聖天様をお参りしてそのご利益に預かりました。
恋愛成就・縁結びでもお聖天様は有名
お聖天様は歴史的に先勝祈願、商売繁盛のご利益で有名な逸話が多いですが、恋愛成就・縁結びの神様としてもとても有名です。
お聖天様の仏像は秘仏とされほとんどその姿を見ることができませんが、双身歓喜仏と呼ばれ、2柱の象の頭を持つ神様が抱き合った姿をしているのです。
この仏像の姿になった由来などはこちらで詳しく解説しています。
※一部内容が重複しますが、ご容赦ください。
歓喜天(大聖歓喜天)|聖天さんと親しまれる神様のご利益や怖い/祟りとは
お聖天様のご利益がなかったと言う人は
お聖天様を拝み、ご祈祷までしてもらったのにご利益に預かれなかったという人もいるかもしれません。
この場合は、以下の点をご確認してくださいとお聖天様を祀る寺の住職の方は言います。
- お聖天様を正しく供養する、歓喜天修法を会得した僧侶による祈祷だったのか
→お聖天様の仏像があっても、歓喜天修法による供養をしていないお寺があります。 - 一心の信仰心・疑いない気持ちでお願いをしているか
お聖天様は人を選ぶと言いますが、どのお聖天様を祀るお寺でも、大事にしているのは、「一心」ともいえる信仰の心だと言います。
また当たり前ですが、自分の願いが叶うための行動をしていることも大事です。
「商売繁盛」を願って、一日何もしないでニートのような生活をしていても何も起きないのは自明ですね。
祈願者、祈祷者の正しい行動がお聖天様のご利益に預かるための大事なカギです。
お聖天様は祟りをもたらす怖い神
お聖天様の良い面をご紹介しましたが、一方でよく言われる怖い神、すさまじい祟りをもたらす神様という面についても、僧侶の方や行者さんのお話を中心にご紹介しましょう。
一点、先に注意しておくべきは、怖い祟りの原因の多くは自分の行動によって起きたこと。
そして僧侶の方の話はあくまで僧侶の方の話であることだということです。
お聖天様が怖いという僧侶の話
お聖天様が怖いというのは、全く根拠もない話であるものもあれば、実際に強い信仰をしている人達が感じた話もあります。
瀬戸内寂聴さんのお師匠さんにあたる今東光(こんとうこう)という僧侶は、
「天台や真言の坊主は触らぬ神に祟りなしとばかりに天部は避けて通りよる。四天王寺の僧侶は聖天堂の前を目をつぶって通っている」
という話をしていたことは有名です。
また、お聖天様を祀る寺院では非常に厳しい戒律が存在し、歓喜天修法というお聖天様を正しく祀るための祈祷法を間違えると罰を受けると言われます。
歓喜天修法については、秘儀であるためその全容を知ることは会得者のみではありますが、お聖天様を祀る湛では毎日午前二時(寅の刻)からご祈祷をされているのです。
このように厳しい戒律があり、間違えては罰が当たるとされるお聖天様ですので、僧侶の方や行者さんの間でお聖天様は怖いと言われるようになったそうです。
お聖天様のご祈祷については後程詳しくご紹介します。
お聖天様の祟りの話
お聖天様の祟りの話で有名なものに、お聖天様を祀るある寺院で妻子をもらってはいけないという戒律があったのに、迷信だと考え娶った僧侶がいたそうです。
その妻はその後、ほどなくして亡くなってしまったそうです。
そして、また妻をもらったそうですが、その方もほどなくして亡くなってしまったそうです。
他にも、お聖天様を家で祀ろうとして、正しい供養をしなかったことで不幸が続いた人など、お聖天様の祟りの話にはいくつかあります。
お聖天様の信仰は礼儀・義理を大事に
祟りがあるからお聖天様は怖いと考えるのであれば、それは間違いと言えます。
出家し仏法に帰依する場合には、話は変わってくると思いますが、お聖天様が怖いの真相は、多くの場合その祟りだと思われる不幸にあった人が原因です。
ご利益に預かり、慢心した結果かもしれませんし、本当に祟りかもしれませんが、いずれにしてもお聖天様にお願いをするのであれば、その後しっかりとお礼をしなければなりません。
お聖天様という慈悲深い神様は、礼儀・義理・縁を大事にされる神様です。
それらを真っ当に行えない人には厳しく当たると言われます。
これは相手が神様であろうと人であろうと一緒だと思います。
迷信だと考えるのは自由ですが、神様仏様にお願いをする時は、そのお願いを聞いていただくに見合う自分であるようにするのが大事です。
お聖天様にこれは限ったことではありません。
同じように日本で人気のお稲荷様で知られるダキニ天(荼枳尼天)も似たようなことを言われますが、お聖天様に限らず、神様仏様にもきちんと筋を通して参拝をする人にこそご利益はもたらされるのではないでしょうか。
参考:ダキニ天(荼枳尼天)とは|ご利益や祟り/怖いと呼ばれる理由を解説
お聖天様が怖いの由来はガネーシャという障害をもたらす神のイメージも
様々な祟りの話もあって怖いと言われたりもしますが、お聖天様の由来となるインドの神様が怖い由来を持っているということもお聖天様は怖い神様と考えられるようになった一因とでもあります。
お聖天様の由来にはビナヤキヤという神様もいるのですが、こちらも祟りによって国に災いをもたらしたという伝説があります。
この災いを止めたのが十一面観音菩薩様で、お聖天様を祀る神社には十一面観音菩薩像があるのはそのためです。
詳しくは後程ご紹介いたします。
お聖天様を信仰するなら
お聖天様を信仰される際に注意しておきたい点をご紹介します。
お聖天様の本誓は「他の神様や仏様に見捨てられたものでも、一心にお祈りをすれば必ず救済する」と言われ、貴賤・痴愚の別なく、貧富や願いの大小もなく長居を叶えると言われています。
それほどの神様ですので、お祈りする際は決して粗相のないように気を付けてお祈りし、ご利益に預かりたいですね。
お聖天様を祀る寺院では、参拝のご作法を勉強する会もしてくださっています。
ここでご紹介するのはあくまで最も最低限のことですので、さらに詳しく知りたい方はご自身が参られるお聖天さんにご確認ください。
お聖天様にお参りする際の注意点
お聖天様は清浄・約束事を守ることを大事にする神様です。
以下の点に注意してご参拝をするのが良いと言われています。
- 歓喜天を拝む際のご真言やお経は一言一言を大事に
- 歓喜天は清浄を好みます。清浄な身なりで行きましょう
※僧侶の方で歓喜天修法を行う際は新しい下着にするなどもあるようですが、一般の方はそこまですることはないでしょう - 歓喜天のご利益に預かったら、お礼参りを
- 歓喜天の信仰を止めるのはおすすめしません、きちんと信仰をするという気持ちを持って行いましょう
※難しく考えず、きちんと定期的にお参りをするということです - 歓喜天を参拝をする日は四本足の動物を食べることは控える
- 親族がなくなった後、四十九日などは参拝を避ける。
※親等によって日数が変わるので寺社に要確認 - 女性なら生理の間は歓喜天のお参りは避ける
上記はあくまで一部です。
待乳山聖天ではご本堂に入るときに左足からなど、細かな注意点もありますので、ためらわずお聖天様をお参りする時は確認いたしましょう。
お聖天様のご真言
お聖天様のご真言は
おん きり(きりく) ぎゃく うん そわか
おん ぎゃく ぎゃく うん そわか
です。
参拝した時、慣れないうちはお経を読む変わりに、ご真言を唱えるのでも良いとされます。
聖天様を浴油供する寺院へ
お聖天様へご参拝する場合、皆さんのお気持ちにはよるものではありますが、お聖天様の供養法を実践している寺院へ参拝するのが良いとされます。
お聖天様を祀る寺院では歓喜天修法を行っていないところもありますのでご注意ください。
ちなみに、歓喜天修法には浴油供以外にも、歓喜天の修法には、華水法/華水供(けすいほう/けすいく)、浴酒法、水歓喜天法というものもあります。
いずれかの修法をきちんと相伝されている寺院にてご祈祷をしていただきましょう。
お聖天様の浴油祈祷の注意点
お聖天様をお参りするだけでもご利益に預かれると思います。
さらにお聖天様のご利益に預かるために、浴油供(よくゆぐ)というお聖天様への祈祷法を行うと効果が高まるとされます。
浴油供の祈祷をお願いし、ご利益に預かれば、そのお礼を忘れずに必ず行いましょう。
その他、浴油供祈祷中の心得を待乳山聖天さんにてご紹介してくださっていますのでぜひ参考にしてください。
ご利益に預かればお礼参りを
浴油供に限らず、お聖天様を参拝しお願いをしたらきちんとお礼参りをしましょう。
きちんと信仰をしていれば、何度もお願いごとは聞いてくださいます。
その代わり、それはご恩をいただいた分お礼をしている場合に限るとされます。
私の父は、お願い事をたくさん聞いてくださったので今ではお礼参りでお参りを欠かさず行っています。
お礼参りはお聖天様に限らず行うべきですが、様々なお願い事を聞いてくださるお聖天様ですので、お礼参りをしてまたお願いごとを聞いてくださるように礼儀を尽くすようにするのが良いと思います。
お聖天様へのお供え物
お聖天様のお供え物に関しては、事務所の方に聞かれるのがよいでしょう。
一般的には、大根と歓喜団と言われるお聖天様の像が持つきんちゃく袋を模したものが良いとされます。
大根は、男根を意味し愛欲の神とも言われる歓喜天の象徴的なお供え物です。
寺院のお供え物にも見られますし、お聖天様を祀る寺院ではお賽銭の側面や様々なところで大根を見ることができます。
歓喜団というお菓子は、複雑なレシピから作成され、歓喜天修法を正しく伝える寺院に伝わる貴重なお菓子です。
歓喜団は日本では唯一「亀屋清永」という菓子匠にて一般にも販売されています。
比叡山の阿闍梨から秘伝の技法を習ったとされる由緒正しい歓喜団を製造しており、お聖天様の縁日にのみ調製されているとても珍しいお菓子です。
参考:亀谷清永 清浄歓喜団
お聖天様のお札やお守りについて
お聖天様を祀るには、とても厳しいルールの元行わないといけないとされます。
そうでなければ祟りもあると言われますが、お守りは大事にお財布などに入れて問題ありません。
男性はお財布に入れたらお尻のポケットに入れるのは良くないとされますのでご注意ください。※お聖天様のお守りに限りませんが。
また、家で祀るお札は清浄な場所・一目よりも高い場所に置きましょう。
仏壇の中は良くないなど、場所には注意すべきポイントがありますので、しくはお聖天様のお札を授与してくださった寺社で確認しましょう。
お供え物は難しく考えないで、お米、お水、野菜や果物・お菓子でよいとされます。
ただし、お供え物に肉や魚等の殺生物、においの強いネギやニンニクは上げてはいけないとされます。
また、お供え物の器はそれ専用ものを用意して、スポンジも別にして、洗うタイミングも別にするのが良いとされます。
お聖天様の仏像を家で祀るなら正しいご供養法を
本格的にお聖天様の仏像を家で祀ることも一般の家で行われているようですが、お聖天様を祀る寺院で行われるご供養と同じように正しいご供養をしなければならないとされます。
仏像の安置する場所も、聖天壇という特殊な壇を造り、清浄に保ち、正しい修法によるご供養をするなど大変なことが多いようです。
家に仏像を安置することで、その分ご利益に預かれるとも言われますが、正しい祀り方の上に成り立つものの様ですので、それらができないのであれば止めておきましょう。
お聖天様を祀る寺院
お聖天様を祀る寺院は全国にありますが、特に有名な寺院をご紹介いたします。
まずは日本三大聖天と言われる「生駒聖天宝山寺」「待乳山聖天本龍寺」「妻沼聖天山歓喜院」です。
生駒聖天 宝山寺(奈良県生駒市)
日本で最も有名なお聖天さんとも言われる生駒山宝山寺。
上記でもご紹介しました湛海和尚が生駒山の現在宝山寺のあるところに霊域を見つけ、入山されたのが延宝六年(1678年)です。
特に商売繁盛のご利益で有名で、江戸時代の豪商紀伊国屋、淀屋を始め、住友家、三井家、鴻池家など、財閥を成す家も信仰しています。
ご本像は不動明王ですが、生駒聖天と言われるほどお聖天様のご利益で有名・人気のお寺です。
24時間参拝が可能で、お聖天さんを祀る天堂を含む、様々な建物は古来からの信仰の形を残し、まさに霊域と感じます。
待乳山聖天 本龍寺(東京都台東区)
浅草寺からほど近い、東京の街中にある日本三大聖天の一つ待乳山聖天 本龍寺は東京のお聖天さんを祀るお寺で最も有名なお寺です。
創建は古く、なんと推古天皇の御代である595年とされます。
この時に霊山が突如湧き出て、金龍がその山を守護し、その後この地にお聖天様の姿となった十一面観音菩薩が山に降臨して、民を救済したことが起源とされます。
古くから信仰されてきた待乳山のお聖天さんは浅草七福神という七福神を祀る浅草周辺の寺院の中で毘沙門天像を祀る寺院としても有名です。
お聖天さんをお参りする作法の教書があったり、作法の勉強会も行っていますので、初めてお参りするという方でも心配せず行くことができます。
また待乳山聖天さんの庭園の中には金の鯉がいて金運招福、また出世観音というとても不思議な形で発見された観音様も境内に安置されています。
妻沼聖天山 歓喜院(埼玉県熊谷市)
日本三大聖天の一つ、妻沼聖天山 歓喜院は埼玉の熊谷のお聖天さんを祀る寺院です。
創建は1173年の平安時代から鎌倉時代へと変わる源平合戦が始まる直前です。
創建をしたのは、平家物語で最も悲しく気高い武士の物語として有名な斎藤別当実盛です。
妻沼のお聖天さんでは、なんと秘仏中の秘仏である歓喜天像を2019年4月16日~22日に公開するそうです。
中々本物を見ることはできないお聖天様のお姿ですので、ご興味のある方はぜひご覧になられることをおすすめします。
高麗山 聖天院(埼玉県日高市)
西暦751年の創建の聖天院は元は高麗王若光の菩提寺として創建されたお寺で、歓喜天像をご本像にしたことから聖天院の名前が付いたお寺です。
金玉山 雙林寺(京都府東山区)
西暦805年に創建された雙林寺は薬師如来をご本尊としているお寺ですが、聖天堂が境内にあり、京都のお聖天さんを祀る寺院の中でも有名なお寺です。
雙林寺は日本で始めて護摩行をしたお寺と伝わり、密教の教えを今に伝える天台宗の寺院です。
袋町お聖天 福生院(愛知県名古屋市)
袋町お聖天福生院は1386年の創建のお聖天さんです。
清洲城主の信仰も深く、民衆の信仰も集めたお聖天さんとして有名です。
お聖天様という神様についてもう少し詳しく
ここまでお聖天様という神様の信仰を中心についてご紹介しましたが、お聖天様という神様が仏教においてどんな神様として描かれているのかをご紹介します。
お聖天様の由来
お聖天様の由来は途中簡単にご紹介しましたが、インドの神様です。
様々な伝説があるのですが、一つはガネーシャ象の頭を持ち知恵を司る、軍を率いる神様でした。
ガネーシャはインドで最も人気の神の一柱であるシヴァ神の子として描かれる神様で、知恵を司ると共に、障害を与えたり取り除いたりしてくださる神様として今でもインドやネパールで人気の神様です。
お聖天様の仏教での姿(お聖天様の画像)
お聖天様は仏教の中では密教において信仰が深い神様で、お聖天様を説く経典は「使咒法経」「大聖歓喜天使咒法経」などで描かれる神様です。
仏教に帰依し、元々の障害を司る神様という設定が仏教にも持ち込まれ、行者や信仰をする人の障害を除き幸せをもたらす護法善神となります。
仏像には、双身の歓喜天像が多くありますが、一柱で描かれることもあり、その場合は象の頭で一面多臂(一つの頭で複数の腕を持つ)姿で描かれます。
お聖天様の像は秘仏中の秘仏で中々見ることができませんが、文献でその姿を書かれたものがあります。
このような象の頭を持つ男天と女天が抱き合うという姿をしていて、男天は大自在天、女天は十一面観音菩薩様がこの姿になっているとされます。
仏像は金属製で20~30cmほどの大きさとされ、聖天壇の円柱の厨子の中に安置されます。
とても神秘的な仏像に清浄な胡麻油をかける歓喜天の修法はまさに密教の神秘的な秘法と感じますね。
歓喜天の梵字
歓喜天の梵字は「ギャク」と読みます。
一文字でも歓喜天を意味しますが、双身の歓喜天像もあるので、このように2つの字が連なっています。