半夏生とは|毒が降るの意味など解説
半夏生とは7月1,2日頃からの5日間の時期を意味する言葉です。
半夏生という花があったり、半夏という別の花があったりするのですが、今回は毒が天から降ってくると言われる、暦の「半夏生」について詳しく解説していきます。
半夏生の読み方は「はんげしょう」
半夏生は暦において、2つの意味を持ちます。
その使われる場合によって、「はんげしょう」と読んだり、「はんげしょうず」と読むのですが、時期は同じです。
少しややこしい半夏生の意味について詳しく解説していきます。
半夏生の意味
半夏生の意味について解説していきます。
一般的に知られる雑節という、半夏生の暦の本の中での定義を見てみましょう。
夏至より十日目頃を言う。天文学的には太陽が春分点より東に百度離れた時より始まって、その後五日間即ち小暑の前日までを言う。この頃は陰毒が生じるとか毒気が降って井水に通じるとか言われるがこの時生える三葉白草(半夏)に毒があるからだとされている。
出典:歓喜宝暦 神霊館 榎本書店
これだけだとわからない部分が多いため、もう少しかみ砕いてご紹介します。
2020年の半夏生は7月1日
半夏生と言うのは、太陽の位置によって日が決まります。
それが「春分点より東に百度」という表現なのですが、昔の人は太陽の場所によって春分や夏至と言う一年を24の節気に分けた二十四節気を意識して生きていました。
現在では春分の日という祝日であったり、夏至という有名なもの名前くらいしかあまり意識されませんが、農耕に関わる季節を知るために二十四節気を利用していました。
半夏生と言うのは、この二十四節気を補填するような形で、どんな時期なのかを意味する雑節というものに分類されます。
半夏生までには田植えを済ませないといけない
雑節の半夏生は農家さんたちにとっては、収穫が良くなくなると言われていたのです。
ちなみに他にも、もし半夏生に田植えをしたら、向こう三年この日に田植えをすれば良いといわれたりと様々な地域で様々な伝承があります。
「チュウ(夏至)ははずせ、ハンゲ(半夏)は待つな」「半夏半作」という田植えの時期に関する昔の人の知恵が言葉で残っていますが、八十八夜などの雑節と同じように、半夏生も昔の人の季節の知恵から生まれたものと言えます。
半夏生の毒とは
半夏生が農耕にとって重要な日であっても、
「半夏生の日には毒が降るから井戸に蓋をしろ」
「半夏生の日に採れた野菜などは食べてはいけない」
といった半夏生という時期に毒が生じるなどと言う話はどこから出てきたのかと言うと、これには諸説あります。
その一つが、半夏生の名前の由来にもなった、「半夏(はんげ)、別名カラスビシャク」という草に毒があるからという話です。
他にも、半夏生のすぐ前に行う大祓(夏越の大祓)を行った理由の一説にもつながりますが、夏の梅雨が明けたころにやってくる半夏生は、カビ・雑菌が繁殖しやすい時期で、疫病が広まらないように、毒があると言い注意を促したという説
また、半夏生の時期には「半夏雨」という集中豪雨のような雨が降る時期で、井戸水の水質が大雨によって変わることで、その水を飲んでお腹を壊すなどがあったであろうからそれを防ぐためという説
などなど、実際のところはわかりませんが、「夜爪を切ると親の死に目に会えない」のような昔の人の知恵なのでしょう。
七十二候の半夏生|二十四節気の夏至の末候
半夏生は、雑節でもあるのですが、七十二候という一年を72の候に分けた物の一つでもあります。
七十二候では半夏生は72中30候目に当たるのですが、一年で見ると、ちょうど半分を過ぎた時期になります。
七十二候の半夏生は「はんげしょうず」と読むのです。
二十四節気で言うと、夏至の時期の最後の方の時期でそこから小暑、大暑と一年で最も暑い時期になります。
半夏生の間は、物忌みをする風習があり、絶対に体を休めるようにしている地域もあることから、夏本番に入る時期に英気をしっかり養う意味があったのかもしれませんね。
ちなみに半夏生の時に豊作を願って神様にお供え物をするなどお祭りをする地域もあるそうで、かなり地域によって違いがあります。
二十四節気や七十二候についてはこちらで詳しく解説しています。
半夏生の花
半夏生という言葉の由来である半夏(カラスビシャク)という花とは違い、半夏生と言う花が存在します。
せっかくなので、簡単にご紹介すると、この半夏生は半化粧とも言われる、葉っぱの大部分が白くなるという独特な姿をした植物です。
葉っぱの片方が白くなるので、片白草(かたしろくさ)とも言われます。
この半夏生という花も半夏生の由来とも言われています。
半夏生とタコなど風習について
半夏生には地域によって先ほどの農耕の言い伝えや、物忌みで休むとする風習もありますが、それら風習についてご紹介いたします。
半夏生にタコは関西の風習
関西のスーパーなどでは、半夏生の日にタコが大々的に売り場に並んでいる光景を見ます。
半夏生の日にタコを食べると良いという風習があります。
半夏生にタコを食べる由来は、田植えした稲がタコの足のようにしっかりと大地に根をつけるようにという願いを込めて食べたことが由来とされます。
半夏生と食べ物
その他にも、半夏生の時期には地域によって様々な食べ物にまつわる風習があります。
半夏生はうどんの日(香川)
うどん県でおなじみの香川県では、半夏生の日である7月2日をうどんの日と言い、うどんを無料で頂けるそうです。
香川では、農家の方がひと段落下農作業の労をねぎらうためにうどんを振舞ったことが由来だそうです。
讃岐うどんを無料で食べることができるなんて夢のような日ですね。
参考:うどんの日 香川県
半夏生にサバ(福井件大野市)
福井県では、半夏生にサバを食べる風習があります。
これは、半夏生前の江戸時代収穫から田植えを終え、農作業で疲れた体を癒すために当時の大野藩藩主が領民にスタミナをつけるために食べることを奨励したことが由来とされます。
半夏生餅(小麦餅)
関西の中でも奈良や和歌山などの地域では、小麦餅や半夏生餅と言い、半夏生の少し前に収穫する小麦ともち米で作ったお餅を作りそれを祖霊や田の神にささげて豊作を祈ったという風習があります。
また、和歌山のあたりは梅の生産地として有名ですが、半夏生に梅を取りに行くと禿げ(ハゲ)になるから行ってはいけないなどの伝承があり、これは半夏生の頃には梅が熟して、生で食べて疫病になってはいけないという昔の人の知恵だったとも言われます。
半夏生とハンゲという妖怪
三重県の熊野のあたりや、志摩のあたりでは、半夏生ハンゲという妖怪が現れるという言い伝えがあります。
この妖怪が半夏生の時期に出ることから、農作業は半夏生までに終わらせて、この時期は家で休むようにするという物忌みの一つの風習です。
半夏生にまつわること
半夏生に関することについてご紹介いたします。
半夏生は俳句などの季語に
半夏生は暦としても、花としても、夏の季語となります。
半夏生に付随して、半夏雨(=半夏水)や半夏と言った言葉も俳句の季語になります。
半夏生の名所
半夏生の時期に咲く半夏生の花が群生している場所や半夏生が見れるお庭があります。
半夏生の時期にこの半夏生の花を見に行ってみてはいかがでしょうか。
京都の建仁寺塔頭の両足院は半夏生の時期に特別公開の庭園拝観が行われます。
半夏生が咲き誇るお庭がとても有名だそうです。
参考:建仁寺塔頭 両足院