涅槃像とは|涅槃仏像の意味や有名所を紹介
涅槃像(涅槃仏)とは、お釈迦様が横たわっている仏像のことです。
寝仏や釈迦涅槃像と呼ばれます。
涅槃像の読み方は「ねはんぞう」と読み、お釈迦様が「涅槃に入る」状態を表現した仏像で、横たわっているのにはちゃんと理由があります。
涅槃像(涅槃仏)日本ではあまり見ませんが、一体なぜ横たわった仏像があるのかをご紹介します。
ちなみに、タイの涅槃像(涅槃仏)は有名ですが、日本にも涅槃像(涅槃仏)はあります。
それら日本やタイの涅槃像(涅槃仏)もご紹介いたします。
涅槃像(涅槃仏)の意味|なぜ寝仏像があるのか
涅槃像(涅槃仏)は、先ほどご紹介した通り、お釈迦様が涅槃に入るときを描写したもので、
涅槃は仏教の世界において、とても重要な言葉・場面であり、その重要な場面を仏像化したものが涅槃像(涅槃仏)です。
涅槃とは、お釈迦様が入滅(亡くなられること)を意味します。
ただ涅槃は生命のともしびが消えたということだけではなく、悟りを開いた境地も意味します。
お釈迦様はすでに悟りを開かれ、欲に縛られない人、つまり精神的には仏の世界にいる人でした。
しかし、人間として生きていることで食事をとったり、睡眠をとったりする必要があるなど、生きるための最低限の欲求を満たす必要がありました。
涅槃に入るということは、そういった欲求からも解放され、完全なる悟りの世界に旅立つことを言うのです。
涅槃という言葉についてはこちらで詳しく解説しています。
涅槃とは|涅槃(ニルヴァーナ)の意味は苦しみの最高の境地=仏教のゴール
入滅という言葉についてはこちらで詳しく解説しています。
入滅とは|意味や類語・お釈迦様の入滅の話や入滅の日の涅槃会を解説
涅槃像(涅槃仏)は入滅の際のお釈迦様のお姿
お釈迦様は実在した人物で、紀元前383年の2月15日に亡くなったとされます。
インドのクシナガラという場所で涅槃に入る(入滅)の際、それまでついてきた弟子や門徒(羅漢)がお釈迦様の横たわる台座の周りを囲みました。
そこでお釈迦様は、頭を北に向け、右脇を下に(西を向いて)し、右腕を腕枕にし姿(まさに涅槃像(涅槃仏)のお姿)で最後の説法をいたします。
そして、最後に
「この世のものはすべて変化し続ける。怠らず精進しなさい」
この言葉を残し、80歳でお亡くなりになりました。
涅槃像(涅槃仏)はこのお姿を表現しているのです。
ちなみに、涅槃の際のお姿は、涅槃図という絵にも表現されています。
実際に寝仏像を見るときの注目すべきポイントや、寝仏像の体で表現していることの意味をご紹介しましょう。
涅槃像(涅槃仏)の頭の方角
涅槃像(涅槃仏)の頭は北を向いています。
これは涅槃の際のお釈迦様と同じで、頭を北に向けています。
日本では、北枕と言うと不吉なものと言われますが、聞いた話ですが今でもインドの人の中にはお釈迦様の入滅の際と同じで良い意味ととらえて北に頭を向けて寝る人がいます。
ちなみに北枕が不吉である理由は、お葬式の際死者が北に頭を向けていることから死者と同じは縁起が悪いということから来ていますが、
そもそもお葬式で死者の頭の方角を北に向けるのは、お釈迦様の涅槃のお姿から由来しているとされます。
「死んだら仏」という言葉もありますが、死者はみな北向きに向けることで仏となったお釈迦様と同じお姿に実際になるのです。
涅槃像(涅槃仏)の足の裏
涅槃像(涅槃仏)を見るときのもう一つのポイントは涅槃像(涅槃仏)の足の裏です。
お釈迦様の足の裏の相を刻んだものを「仏足(ぶっそく)」と言い、初期仏教ではお釈迦様によって偶像崇拝が禁止されたことから、お釈迦様の足の裏の相を刻んだ仏足を拝んだとされます。
それらが今の世に伝わると、違った形式ですが、それぞれ意味のあるものとして装飾がなされています。
たとえば、世界一有名なワットポーの涅槃像(涅槃仏)の足の裏には、仏教の世界観を表した108の図があり、それらはすべて貝殻に装飾をしてはめていったという螺鈿細工(らでんざいく)という手法で描かれています。
私も世界一大きな涅槃像(涅槃仏)のあるタイのワットポーで実物を見たことがあるのですが、まずその大きさもすごいのですが足の裏はとても細かく装飾がなされており、とても不思議な世界観だったと感じました。
それらについては後程ご紹介します。
まずは、日本ではかなり珍しい涅槃像(涅槃仏)を見ることができる寺院や場所をご紹介いたします。
涅槃像(涅槃仏)の眼
涅槃像(涅槃仏)には目を開けているものと、閉じているものがありますが、この違いは入滅をされる前か、後かを表現しているとされます。
日本の涅槃像(涅槃仏)のある寺院・場所
日本では涅槃に関係するもので言うと、涅槃会(ねはんえ)というお釈迦様の命日に行う法要があります。
そこではお釈迦様の入滅の様子を描いた涅槃図を見ることができます。
涅槃会について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
涅槃会とは|お釈迦様の命日の法要とだんご・はなくそ等の由来を紹介
他に日本で涅槃に触れる機会はありませんが、意外と涅槃像(涅槃仏)を見ることができる場所は日本国内にあります。
まず最も有名なのは、日本一大きい涅槃像(涅槃仏)のある、九州は福岡県の南蔵院からご紹介します。
南蔵院(福岡県篠栗)|日本一の涅槃像(涅槃仏)
南蔵院は福岡県糟屋郡篠栗町にある寺院です。
高野山真言宗派で、篠栗四国八十八ヶ所の霊場でもあるお寺です。
南蔵院の涅槃像(涅槃仏)はブロンズ像としては、世界一大きい全長41mの長さのある涅槃像(涅槃仏)です。
ミャンマーへの支援を行っていた南蔵院へミャンマー政府からその感謝の意を込めて贈られた仏舎利を中に納めているそうです。
ちなみに、南蔵院の足の裏の装飾はタイのそれらとはまた少し違い、独特な相をが描かれています。
南蔵院は涅槃像(涅槃仏)としても有名ですが、ご住職が宝くじ1億3000万円を当て、パワースポットとしても有名だそうです。
日本一の涅槃像(涅槃仏)のある南蔵院の住所等の情報はこちら。
福岡県糟屋郡篠栗町大字篠栗1035
TEL:092-947-7195
福岡以外の九州にある涅槃像(涅槃仏)
九州には他にも有名な涅槃像(涅槃仏)があります。
ー阿蘇の涅槃像(涅槃仏)
熊本県の阿蘇は涅槃像(涅槃仏)でとても有名ですが、こちらは実際の仏像ではなく、阿蘇山が遠くから見ると人が仰向けに寝ているように見え、それを涅槃像(涅槃仏)と呼ぶようになったとされます。
元々修験者の人がいたり、古くから信仰されていた神話の舞台でもある阿蘇の山々です。
ちなみに、阿蘇の涅槃像(涅槃仏)は、北側にある外輪山の大観峰から阿蘇五岳を見ると見れます。
私が行った日は天気が良くないため見られませんでしたので、天気の様い時に行くことをおすすめします。
ー島原
長崎県の島原にある江東寺にも涅槃像(涅槃仏)があります。
島原にある涅槃像(涅槃仏)は昭和32年に造られたもので、鉄筋コンクリート造りの涅槃像(涅槃仏)です。
足の裏には大法輪の相が刻まれています。
他にも、鹿児島の大国寺には、山門の上に涅槃像(涅槃仏)が安置されているなどあるそうです。
常楽山満徳寺(千葉館山市)|青銅器製で世界最大の涅槃像(涅槃仏)
千葉南房総にある館山市の常楽山満徳寺には、青銅器製の涅槃像(涅槃仏)があります。
青銅器製では世界一の大きさのある涅槃像(涅槃仏)です。
常楽山満徳寺の涅槃像(涅槃仏)は独特なお祈りの作法があります。
- 靴を脱ぎ
- 中央で合唱し
- 台座の周囲を右肩を涅槃像に向けて時計回りに3周
- 最後に涅槃像(涅槃仏)の足の裏の転法輪に触れて祈願する
こうすると大願成就のご利益があるとされます。
法隆寺(奈良県)|五重塔に涅槃像(涅槃仏)
世界遺産法隆寺にも涅槃像(涅槃仏)があります。
しかし、タイや日本国内のような、独立した御尊像があるという分けではなく、法隆寺の五重塔(仏舎利を納めるストゥーパ)の北面に涅槃の場面を表現した像があるのです。
その作は711年と、日本で最も古い涅槃像(涅槃仏)を見ることができます。
十大弟子や十二神将が見守る中で、入滅されたお釈迦様を見ることができます。
穴太寺(京都)|なで仏(釈迦如来涅槃像)
穴太寺(あなおじ)は京都の亀岡市にある奈良時代の創建という古刹です。
ここにある涅槃像(涅槃仏)は、珍しい触ることができる涅槃像(涅槃仏)です。
お布団をかぶせてあることもあるようですが、このなで仏と呼ばれる穴太寺の涅槃像(涅槃仏)は、体の病のあるところを撫でて、自分の体の悪いところを撫でると病気平癒のご利益に預かれるとされます。
他にも、群馬県みどり市にある草木ドライブインという道の駅の裏側には、横に寝そべるのではなく、完全に仰向けに気持ちよく寝られるかのような穏やかな顔をした寝釈迦像と呼ばれる涅槃像(涅槃仏)があるなど、意外と日本各地にあります。
タイの寺院にある涅槃像(涅槃仏)
涅槃像(涅槃仏)と言えば、数も多く有名なタイが思いつくと思います。
そんなタイの中でも有名な涅槃像(涅槃仏)をご紹介いたします。
最も有名な涅槃像(涅槃仏)はバンコクのワットポー
涅槃像(涅槃仏)で最も有名なのは、タイのバンコクにあるワットポーという寺院の涅槃像(涅槃仏)です。
ワットポーは、涅槃寺という意味だそうです。
日本の仏像と言えば、木製や土から作られた塑像などの素材がそのままのもののイメージが強く、色合いも鮮やかなものもあってもそれらのイメージはあまり強くないと思います。
しかし、ワットポーの涅槃像(涅槃仏)は金色だったり、寺院自体が白壁などとても明るいのでとても印象的だと思います。
バンコク ワットポーの涅槃像(涅槃仏)の画像
このように涅槃像(涅槃仏)や、寺院内もかなり鮮やかな装飾がなされています。
アユタヤのワット・ロカヤ・スターラームの涅槃像
タイの首都バンコクの北部にある町のアユタヤのすこし西方にあるワット・ロカヤ・スターラームという寺院にも有名な涅槃像(涅槃仏)があります。
野外にあるため装飾などは剥げているのですが、時にタイの僧侶が身に着けるオレンジの袈裟を身に着けられることがあるそうです。
タイで涅槃像(涅槃仏)を見るときの注意点
タイで涅槃像(涅槃仏)を見るに限らず、タイの仏教寺院に行く際は、日本のお寺に観光気分に行くようには行きません。
ガイドブックにも小さな文字で書いていたりしますが、タイの仏教寺院では半パンやタンクトップという姿で入ることはかなり無礼だとされます。
男の方も長ズボンに最低でも半そでが良いとされ、女性はほぼ絶対と言われます。
実際行ったときは、欧米系の方を中心にそれらを守らない人もいましたが、タイに住んでいた友人曰く、かなりそこは厳しく、罰を受ける人もいるとのことです。
また、別の注意点としてバンコク市内は特にですが、交通渋滞が異常でタクシー移動の時間換算に注意してください。
普通なら2,30分もかからない距離を平気で1時間以上かかる大渋滞がほぼ毎日起きてます。
特にワットポーは王宮のあるエリアという、バンコクの歓楽街など中心地から離れます。
交通渋滞には注意しましょう。
また、タクシーも現地の友達に教えてもらいましたが、必ずメーターを付けてから乗るように。