天津祝詞(あまつのりと)とは?意味や効果、唱え方を解説!
天津祝詞(あまつのりと)という不思議な効果を持つと呼ばれる祝詞について、
ここでは、天津祝詞(あまつのりと)の原文や現代語訳からその意味を解説し、実際の唱え方を解説します。
また、客観的な見地で天津祝詞(あまつのりと)とはどのようにできたのか?
祓詞等の祝詞との関係や古神道との関りについてを解説します。
天津祝詞の原文全文(ひらがなの読み方付)
天津祝詞は、神道の流派によって変わるものではありますが、一般的に利用されている天津祝詞をご紹介します。
天津祝詞の原文・読み方
天津祝詞の原文は宣命書きと呼ばれる、助詞助動詞までも感じで表記するため、読みにくいので、今回は仮名混じりの原文(祝詞集にある一般的な表記)を載せます。
高天原に神留坐す
神漏岐神漏美の
命以ちて
皇親神伊邪那岐の大神
筑紫日向の橘の小門の
阿波岐原に
禊祓ひ給ふ時に
生坐せる
祓戸の大神等
諸々禍事罪穢を
祓へ給ひ清め給ふと
申す事の由を
天つ神地つ神
八百万神等共に
聞食せと
畏み畏みも白す
天津祝詞の現代語訳
天津祝詞を少々省略された部分や、現代語で訳しにくい部分を意訳しました。
(様々な神々がいらっしゃる天上世界の)高天原に、いらっしゃいます、
かむろぎ,かむろみの神様からお生まれになった、イザナギノ大神が、
筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原というところにて、
禊祓いをされました時に、お生まれになりました、祓戸の大神たち様よ、
(私たち人類が生んだ)様々な罪、穢れ、厄災を祓い、清めくださいと申し上げることを、
天津神、国津神、この世の様々な神様とともに、お聞きくださいませと、恐れ多くも申し上げます。
天津祝詞の訳の意味
現代語でも、古事記の一説や、祓詞に特有の「かしこみかしこみ」という言葉が出てきてわかりづらいと思います。
そこで、天津祝詞の簡単な概要・意味を説明します。
天津祝詞は、大祓詞の中に出てくる、六月晦大祓の儀礼の中で出てくる天津祝詞の太祝詞というとても重要な言葉を後年に編纂したものです。
そこで、前半は祓詞と同じく、イザナミノミコトの禊祓の描写と神々への呼びかけの内容です。
そして神々に呼び掛けた後、私たちの罪・穢れ、厄災を払ってくださいと、お願いを申し上げるという内容です。
天津祝詞とはどのような祝詞か?
天津祝詞という名前は、一般的な名前で、神道の世界では「禊祓詞」と呼ばれています。
天津祝詞(あまつのりと)は、実は大給詞のように1000年以上に生まれた言葉ではなく、江戸時代に平田篤胤という国学を大成した本居宣長の弟子によって編纂された祝詞です。
そもそも天津祝詞という言葉は、神道の祝詞でも最も重要と言われる大祓詞(おおはらえことば)の中に出てくる、言葉で儀礼の中で神々に申し上げるとても重要な詞と言われています。
参考:大祓詞(おおはらえことば)とは?原文・現代語訳・意味・効果を解説
平田篤胤はこの重要な天津祝詞を様々な神代文字等を含む文献から祝詞にふさわしい良い言霊を持つ言葉を選びに選び編纂したと言われています。
※神代文字を含む文献とは、現在偽書という学会の評価を得ています。
そのため、成り立ちがさらに古い大祓詞や祓詞とは違い少々怪しいと考える人もいます。
しかし、神社でも申し上げることは一般的なので、心配をすることはないでしょう。
天津祝詞を唱えることの効果は?
天津祝詞の効果は、様々な学説があるために、必ずしも正しいと思われるものはありません。
しかし、天津祝詞の文章の意味や、一般的に信じられている、効果として以下のものがあると言われています。
- 身の災難、穢れや罪を取り払う
- 神様にお近づきになる
- 幸福を呼ぶ
いずれにしても、正しく唱えて、正しい心を持って神様に奏上をすることが重要であると言われています。
次に、神様に正しく奏上する方法を見ていきます。
神社参拝・神棚を拝む際の天津祝詞の正しい奏上の仕方
天津祝詞に限らず、祝詞は、その奏上をする時に心持ち、唱え方をとても重視します。
神職の方がゆっくりと独特なリズムで読むのもそのことを意識しているからです。
天津祝詞を奏上する際のご作法
神道の流派により少々違いがあるかもしれませんが、一般的な祝詞を唱える時の作法は次のようになっています。
- 二拝
- 天津祝詞を奏上
- 二拝
- 二拍手
- 一拝
※拝とはお辞儀のこと
神社のお社や神棚にまずは深くお辞儀をします。
その後大祓詞を奏上し、神社でお参りをする際に行う、
「二拝二拍手一拝」をします。
奏上するときは、一言一句を大事に、心を込めて読み上げるのが良いとされています。
神様に畏れ多くも申し上げるという気持ちと、清らかな心を持って申し上げれば神様もきっとお聞き届けくださります。
天津祝詞の読み上げ方(音声動画解説付き)
天津祝詞の読み上げ方は以下の動画で見ることができます。
独特のリズムを覚えて、ぜひ暗記して奏上できるようになりましょう!
祝詞はできる限り暗記して、何も見ずに申し上げることが良いと考えられています。
天津祝詞について気になる情報を解説
ここまでは一般的な天津祝詞についてのお話でした。
ここからは、天津祝詞にまつわる様々な説について見ていきましょう。
天津祝詞の太祝詞事とは?
天津祝詞の太祝詞事とは、途中でも簡単に解説をしましたが、天津祝詞という言葉が出てくる「大祓詞」の一説に出てくる言葉です。
天津祝詞の太祝詞事は、江戸時代の国学者の本居宣長が次のように断じています。
「天津祝詞の太祝詞事は現在存在しない」と
そもそも天津祝詞の太祝詞事とは、
「六月晦日の祓」という儀礼の中で、中臣氏が大祓詞を読み、卜部氏(もしくは忌部氏)が天津祝詞の太祝詞を読み上げるという儀礼の祝詞だとされています。
そして現在で、この「儀礼で奏上された天津祝詞の太祝詞事」、つまり本来の天津祝詞は伝承されておらず、存在しないと言われています。
現在の天津祝詞は、江戸時代に平田篤胤が作成したもので、大祓詞の中の天津祝詞の太祝詞事であると本人やそれを支持する人は主張しているというものです。
※だからと言って、現在の天津祝詞の霊験はない、小さくなるというものではありません。
天津祝詞(=禊祓祝詞)と祓詞の違いと使い分け
神道の祝詞をご存知の方であれば、一度は不思議に思ったことがあると思われる、祓詞と天津祝詞(禊祓祝詞)が似ているという疑問です。
こちらは、いずれが正当で、いずれの方がより効果があると考えるものではなく、それぞれに別の祝詞として考えましょう。
ご自身の神道の流派の教義に従い、心を込めて唱えることで神様はお聞きになってくださります。
ただ、一般的には、祓詞は神様に祝詞やお祈りを申し上げる際にふさわしいように、身の穢れや罪・災厄を祓うという目的を持った言葉で、広く利用される言葉です。
神職の方も広く祓詞を利用しているというのが現状です。
祓詞や天津祝詞以外にもある祝詞について、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
祝詞(のりと)とは?一般人も唱えて効果有!様々な種類をまとめて解説
天津祝詞と古神道のつながり
神道に詳しい方であれば、古神道という言葉をご存知だと思います。
古神道について知りたい方はこちらを参考に
古神道とは?神道との違いや祝詞・神社や起源など詳しく解説!
簡単に説明をすると、古神道とは神仏習合をする前の神道。
つまり、仏教やその他様々な宗教が混ざり合った今の神道になる前の、神道を意味します。
今知られている天津祝詞を作った平田篤胤は、この古神道にもつながる、神代文字と言った古い文献を利用して天津祝詞を作成したと言われています。
つまり、仏教が入ってから作成されている古事記や日本書紀よりも古いといわれる古文書を元に作られ古神道にもつながる祝詞と信じる方もいます。