破魔矢とは|意味・正しい飾り方等解説
破魔矢(読み方:はまや)は「魔除けの矢」として知られる、神様の力の宿る神具です。
破魔矢は特に最近ではお正月に神社で授与してもらい、家に飾る縁起物として有名ですが、他にも様々な場面で飾られるものです。
今回は、そんな破魔矢とはどんな意味を持つ神具なのか、
破魔矢の正しい飾り方や処分の方法等を詳しく解説いたします。
破魔矢の意味・効果
破魔矢の意味とは、様々な本や神社でも統一した意味と言うものはありません。
しかし、文字通り「魔を破る」と読める破魔矢の一般的に知られる意味は
厄除け・魔除けのための神具
お正月の縁起物として神社や寺院で授与されるもの
神社によっては、「守護矢、御神矢、鏑矢」と同意としているところがある。
他にも男子の初節句や家の棟上(上棟式)等で厄除けとして飾る
簡単にまとめると上記の様です。
破魔矢は特に正月に飾り付けるイメージを強く持っているようですが、本来神具の矢は厄除け・魔除けの力を持つと古くから考えられていたもので正月に限った飾りものではありません。
例えば、武運長久(現在は厄除け)の神様として、日本で最も有名な神社の一つである石清水八幡宮では、破魔矢とは言わずご神矢というお札として、古くから授与しています。
参考:八幡御神矢
破魔矢が特にお正月と紐づいているのは、後程見る「破魔」という言葉の由来に関わるものです。
破魔矢を飾る時期・タイミング
破魔矢の意味については様々な説があると言いましたが、簡単に破魔矢を飾る時期やタイミングによって次のような意味があると考えましょう。
お正月
最も一般的に知られる破魔矢という正月に授与されるお守りは、
- 正月に飾り一年の厄除祈願
- 正月に飾り一年の招福祈願(幸せを射止める)
これらの意味・効果を願って飾るものです。
お正月に飾った破魔矢の飾り方や処分の仕方については以下で具体的に解説いたします。
男の子の初正月や初節句
5月の節句(端午の節句)は男の子の健やかな成長を願う日ですが、初節句に破魔矢と破魔弓を送るという文化もあります。
また、男の子の初節句だけでなく、初正月に送るという文化もあります。
- 初節句に飾り男子の健やかな成長を願う
※初正月・初節句とは赤ちゃんが生まれて初めて迎える正月と端午の節句(5月5日)のこと
上棟式等
家を新築する時、上棟式や地鎮祭は三隣亡等の凶日を避け、吉日に行いますね。
暦の凶日を避けることに加えて、上棟式では厄除けの祈願に破魔矢を破魔弓と一緒に鬼門・裏鬼門の方角に先を向けるという風習があります。
- 上棟式に飾り新居の厄除けを願う
また、正月や節句、上棟式という特別な時期やタイミング以外にも、破魔矢を飾ることもあると思いますが、次の様な意味があります。
- 神棚に飾り厄除・家内安全・商売繁盛等祈願
破魔矢の由来
破魔矢の由来には複数の説があります。
正月の飾り物として有名な破魔矢を、ご神矢や守護矢と同じと考えて、その意味を解説いたしましたが、そもそも正月に飾り付けるお守りとしての破魔矢の由来はどんなものかをご紹介いたします。
破魔矢の由来の説の一つは正月に行われていた破魔打(はまうち)という一年の吉凶(特に作物の豊凶)を占う神事とされています。
破魔打では、弓矢を渡した子供たちの前にハマと呼ばれる的を置き、子供たちに弓を引かせます。
このハマを射抜く矢をハマ矢が「浜矢」と漢字がついて、のちに「破魔矢」に転じたと言われます。
※行事の由来となる行事は他にも、射礼(じゃらい)、大射という子供たちの弓矢の腕を見る行事、宮中の弓で的を射る行事という説もあります。
宮中でも、日本の各地にも弓を射る、弓射(きゅうしゃ)の祭礼がありました。
江戸時代のころに、それらの正月の祭礼で利用した弓矢を「破魔矢、破魔弓」として持ち帰るようになった、
もしくは形式化され弓矢を飾るようになったのが、正月の破魔矢の由来と言われています。
ちなみに破魔矢を神社で授与するようになったという発祥の地は東京都大田区の新田神社とされています。
参考:新田神社 矢守について(破魔矢の元祖)
破魔矢の由来のもう一説
破魔矢の由来のもう一つは、日光東照宮の中の大猷院(たいゆういん)という、徳川三代将軍家光公が眠る霊廟を守る夜叉門に坐す烏摩勒伽(うまろきゃ)という夜叉が持つ矢というものです。
夜叉門は霊廟の2つ前の門で、霊廟から出る際左手に像があります。
この青い体をした夜叉の右手にあるものが破魔矢の由来だとされており、大猷院の中でその話を聞くことができます。
また、ずっとお供えができるように念じられた、金の破魔矢を授与いただくこともできます。
破魔矢と破魔弓
破魔矢と破魔弓は元々一つのセットで、破魔弓から放たれる破魔矢で邪気、災厄、魔を破るとしていました。
しかし現在ではお正月神社に参拝しても矢しかありません。
今でも破魔弓を共に飾る風習もありますが、神社では矢に神力を込めて、矢を飾ることで魔を破る力があるとしているので、弓は飾らないようになっています。
ちなみに、破魔弓は神や神主という破邪の力を持つものが矢を放つものであると考えられるため、一般の人は矢を頂くだけで十分なご利益にあずかることができるという考えもあるようです。
ちなみに、破魔矢の先が尖っていないのは、その矢の目標が人やその他動物と言ったものではなく、厄、魔、邪気というものであるためです。
破魔矢の飾り方・置き方
破魔矢の意味や歴史について確認しましたが、ここからは実際に授与された破魔矢を家でどのように飾るのかについて解説いたします。
破魔矢の正しい置き場所と置き方
破魔矢の置く場所や置き方は特に決まりはありませんとネットにはよく書いています。
しかし、神社によって少々の意見の差はあれど、神棚にお祀りし、お札の近くにお祀りするというのが望ましいとされています。
破魔矢は神様の力の宿る神具で、お札と同じように扱わなければなりません。
神棚がないという方は後程、望ましい飾り方を解説していますのでご覧ください。
適当に置くということは神様を蔑ろにしていることと同じですので、神棚があるない関わらず、できる限り正しく置くようにしましょう。
破魔矢の羽・先を向ける方角、向けてはいけない方角
破魔矢の先(羽のない方)は向ける方角を意識して置くのが良いとされています。
ちなみに、マンションに住んでいる等、間取りの関係で難しい場合は、以下で見る注意点を気にすれば方位は良いともされます。
まず向けてならないのは、方角ではありませが、
- 矢の先を上(天)に向ける
ということです。
天の神様に向けるという意味になりこれはよくありません。
矢の先は下に向くのが基本で、真横に向く場合も良いとされます。
続いて矢の先を向ける方角で良いとされるものです。
この矢の先を向ける方角は複数の望ましいとされる考え方がありますので、それぞれを解説いたします。
望ましい方角①:一年の凶の方角
これは来年2021年で言うと、来年の干支は丑年なので、未の方角:南西より南寄りに破魔矢の先を向けると良いとされます。です。
一年の凶の方角とは、その年の干支が担う方角の逆の方角を意味します。
亥の方角は北北西なので、その反対の巳の方角の南南東が一年の凶の方角となります。
2021年以降の凶方角は以下のようになります。
2021年:丑の年は 未の方角 南南西が凶
2022年:寅の年は 申の方角 西南西が凶
2023年:卯の年は 酉の方角 西が凶
2024年:辰の年は 戌の方角 西北西が凶
2025年:巳の年は 亥の方角 北北西が凶
2026年:午の年は 子の方角 北が凶
2027年:未の年は 丑の方角 北北東が凶
2028年:申の年は 寅の方角 東北東が凶
2018年:戌の年は 辰の方角 東南東が凶
2019年:子の年は 巳の方角 南南東が凶
2020年:子の年は 午の方角南が凶
望ましい方角②:南か東
破魔矢(御神矢)はお札と同じように扱うのが基本です。
そのため、破魔矢もお札と同じように矢の先を南又は東の方角に向けるのが良いとされます。
ただし、天照大御神である太陽に屋の先を向けるのは良くないという考えや羽の方が東、南を向くほうが良いという説も巷には存在しています。
気になる方は授与された神社で確認するのが良いでしょう。
望ましい方角③(上棟式等):鬼門・裏鬼門
一般に知られる、凶の方位である、鬼門、裏鬼門に破魔矢の先を向けるというものです。
鬼門は先ほどの干支の方位で考えると、艮(うしとら)の方角、つまり北東が鬼門です。
裏鬼門はその反対の坤(ひつじさる)の方角、つまり南西です。
鬼門・裏鬼門に向けるのは上棟式で行われるときの方角ですので、家で飾る場合は上記で見た、一年の凶の方角か、南か東向きが良いでしょう。
神棚がない場合の破魔矢の飾り方
今は神棚がない家も増えていますので、その場合には神棚以外に置くことになります。
この場合複数の守るべきがあります。
- 書棚の上等目線より必ず上に
→神様を見下ろさないように - 明るく清らかな場所に
→ほこりの溜まっているものの上に置くのはNGです
また、壁に飾るのではなく何かの上に置く場合、神棚のように半紙を置くとよい
この点に気を付けて飾りましょう。
ちなみに、神棚がない場合付ける場所は上の項目に当てはまる上で、
外からの邪気・災厄を破る意味で玄関に飾る、
家族が集まるリビングに飾るのが一般的とされます。
神棚での置き方や取り付けについては、御神矢として授与している石清水八幡宮のページをご覧いただけるとわかりやすいです。
参考:石清水八幡宮 「お札をお祀りする際の決まり事」
ちなみに最近は矢立という、破魔矢を飾り立てるものも売られていますので、それらを利用するものよいかもしれませんね。
破魔矢はいつまで飾る?
破魔矢を神社でお正月に授与していただき、飾りましたら一年間お祀りしましょう。
破魔矢を含むお札は一年で交換するのが最も良いとされます。
破魔矢の処分・返納について
破魔矢の処分の仕方は、神社へ返納がよいでしょう。
神社へ返納する
破魔矢やお札は一年間飾った後、神社の境内にある納札所(古札所/古納札所)に返納をします。
※納札所がない場合は社務所へ行くと引き取っていただけます
この時、納札所にあるお賽銭箱に「初穂料(玉串料)」を入れましょう。
破魔矢を授与された神社に返納をしなければならないわけではありません。
どこの神社でも納札所に返納をすればそれで問題ありません。
ただ、できれば授与していただいた神社に返納するのが良いとされます。
ちなみに、お寺で授与された破魔矢や守護矢では、お寺に納めましょう。
神社で授与されたものは神社に、お寺で授与されたものはお寺にし、そこは混ざらないようにします。
小正月のどんど焼き・お焚き上げで処分する
破魔矢等のお札は小正月(1月15日)のどんど焼き・お焚き上げ(左義長という地域も)にて焼納という火のお清めの力を持って処分されます。
そのため、破魔矢も1月15日までに神社に返納しに行くのが良いとされます。
どんど焼き・お焚き上げについて詳しく知りたい方はこちら
破魔矢の入手の方法
破魔矢は、初詣で神社で授与していただくのが基本ですが、仏教で邪を祓う破邪矢とも同じと考えられていることもあり、お寺にても手に入れることができます。
有名なのは信州善光寺の守護矢ですね。
参考:善光寺説話 守護矢
破魔矢の一般的な値段
破魔矢は様々な神社で年間を通して、もしくはお正月に授与されます。
大体1000円から3000円ほどの値段です。
ちなみに、神社でお守りやお札という神具は購入するというのではなく、授与されると言います。
これは神様の宿る神具を売買するというのは失礼に当たるという考え方からです。
破魔矢が有名な神社
破魔矢(御神矢・守護矢も含む)が有名な神社をご紹介します。
魔を破るという神具の破魔矢ですので、やはり武運長久、厄払の神様をご祭神とする神社が有名です。
熱田神宮
草薙劔をご神体とする、熱田大神をお祀りする熱田神宮は毎年、破魔矢の作成がニュースになるほど有名な神社です。
石清水八幡宮
破魔矢ではなく、御神矢として授与されます。
源氏の興隆の祖である源八幡太郎義家が元服し、古くから武運長久の霊験あらたかとされる神社です。
今は厄払の神様として有名な石清水八幡宮の御神矢は古くから有名な矢守です。
鶴岡八幡宮
源頼義が奥州平定の帰還の途に、源氏の氏神として京都の石清水八幡宮を鎌倉の由比ヶ浜にお祀りし、源頼朝公が鎌倉幕府を開き、由比ヶ浜にあった八幡宮を今の地にお遷しした由緒ある神社です。
鶴岡八幡宮の破魔矢は飾り立てがついているので、そのまま居間や玄関におけるようになっています。
明治神宮
東京に鎮座し、外国の人も多く訪れる明治神宮では破魔矢とは言わず、「守護矢」と呼びます。
初詣に毎年多くの人が訪れる明治神宮の守護矢は人気の破魔矢の一つです。
上記で見た神社以外にも、お寺では善光寺も有名ですし、破魔矢発祥の新田神社も人気ですし、様々な神社で様々な破魔矢があります。
女性に特に人気の破魔矢には、縁結び・恋愛成就の神様で知られる東京大神宮の破魔矢があります。
東京大神宮の破魔矢には、熊手がついていて、福徳をかき寄せるという意味もあります。
また、巷では射止めるという意味で、恋愛成就にとてもご利益があるとも言われています。
破魔矢の豆知識
破魔矢にまつわる、ちょっとした豆知識をご紹介します。
破魔矢と鏑矢の違い
破魔矢とよく似た鏑矢という神社で授与されるお守りは、破魔矢とどう違うのでしょうか。
結論から言うと、この二つの違いははっきりはしていません。
鏑矢も飾り矢として邪・厄を払う縁起物として神社で授与されます。
一つの説には、「破魔矢が厄除開運という面を強く持つ」のに対し、
鏑矢は戦の世では合戦の合図に利用されていましたので、何か物事を始める際の縁起物としてよいとされます。
男の子が破魔矢で女の子は羽子板
破魔矢は男の子の初正月、初節句等に飾る縁起物でもありました。
この破魔矢(破魔弓も含む)に対して、女の子の縁起物には羽子板があります。
同じ正月を連想するものですが、元々羽子板には女の子の無病息災を願うお守りの意味も持っているのです。
破魔矢を飾りご利益にあずかりましょう
いかがでしたでしょうか。
破魔矢に限らず、日本の文化では様々な説があり混乱するところもあるかもしれませんが、大事なのは気持ちだとされます。
神様が力を授けて破魔矢を無下に扱わず、大事に扱う気持ちで正しいとされる崇拝のここを持った飾り付けをしましょう。
そして2021年破魔矢を飾りそのご利益にあずかりましょう。