十五夜のお月見とは|2019年は9月13日
十五夜のお月見は日本の自然を愛でる伝統的な年中行事です。
月見団子を飾り一年で最も綺麗とされる月を眺める、観月という文化について、その歴史やお月見の文化について解説いたします。
ちなみに、十五夜のお月見と言われますが、今年2019年は9月13日が十五夜に当たります。
十五夜とは(中秋の名月の意味)
十五夜は別名で中秋の名月(仲秋の明月)とも言われます。
十五夜のお月見は旧暦の8月15日の月が満月になるタイミングで、お月見をする行事でその歴史は1000年を超えます。
十五夜のお月見で何をするかは地域で変わりますが、
- お月見団子をお供え
- すすきなどの飾り付けをする
と言ったことを伝統的に行います。
実はさらに正式とされる方法では里芋を備えたり、秋の七草を一緒に飾ったりするとされますので、そのことは後程詳しく解説します。
ちなみに”十五夜”というと一般的にはこの旧暦の8月15日を意味していますが、十五夜の意味は本来毎月の15日の夜のことです。
十五夜がいつになるかは年による
先ほど旧暦の話が出ましたが、旧暦と現在の暦という違いがあり、十五夜は毎年違う日になります。
ちなみに、2018年の十五夜は9月24日でしたが、2020年の十五夜は10月1日になります。
なぜ十五夜にお月見をするのか
十五夜にお月見をするようになった理由にはいくつかの説があります。
中国にあった風習が渡ってきて根付いたという説が一般的ですが、日本に古来から根付いていた文化が由来とする説もあります。
- 中国の観月の風習(現在の中国の中秋節の由来)
- 稲作の豊作を祈るためのお祭(稲作ではなく芋類の豊作を祈るためのお祭と言う説も)
一般的な説では、月を見るという文化は中国からやってきて貴族に広まった後に、一般にも広がると、その時期に行われていた収穫に関わる要素が組み込まれ今の形になっていたとされます。
日本では月の神様にツクヨミノミコト(月読命)という神様が存在しますが、民間でも月という存在を神聖視する風習があったとされます。
ちなみに、十五夜のお月見は、別名で中秋の名月と言われる以外にも、
- 芋名月(いもめいげつ)
- 仏滅名月(ぶつめつめいげつ)
等とも言われます。
それぞれ簡単に説明すると、芋類を収穫する時期の満月ということと、六曜のルールによって必ず仏滅の日に十五夜が当たっていたことから仏滅名月と言われるようになったそうです。
十五夜のお月見が良い理由
歴史的な背景は置いておいて、実際に十五夜が一番お月見に適しているのか?という疑問もあると思いますが、その点は国立天文台が次のような考察をしています。
十五夜には月の位置が最も見やすく、見ごたえがあると考えられるそうです。
月は地球の周りを常に同じ軌道で回っているわけではなく、夏になると夜空の低いところを回り、冬になると月は高いところを回るそうです。このことから以下の2点が十五夜の満月においてベストになるそうです。
- 月の色の変化を楽しめる
月が低いところから高いところを回っていくことから、低い位置の赤やオレンジがかった月から、高い位置の白く光り輝く月を見ることができる - 月の高さがベスト
次が高すぎず、低すぎず、見やすい位置にあり、周りの景色との調和を楽しめる
のだそうです。参考:中秋の名月は中空の名月
よく一般的には十五夜のお月見では空気が澄み、きれいに月が見れると言いますが、実際は台風のシーズンなども重なり、十五夜にお月見はできないと言われます。
お月見は十五夜に限らない
ちなみに、日本ではお月見の文化は十五夜にだけ限ったものではありません。
古くから様々なタイミングでお月見の日が設けられていました。
十五夜に関連するお月見には他に
名称 | 読み方 | 意味 | 日付 |
十三夜 | じゅうさんや | 十五夜に次ぐ美しい月と言われ、収穫を祝う意味があるとされる。
別名:豆名月、栗名月、後の月 |
2019年10月11日 |
十六夜 | いざよい | 十五夜の次の日の月を意味し、日本の月待信仰に由来するともされる。 | 2019年9月14日 |
十日夜 | とおかんや | 十三夜に次ぐ月とされる。 | 2019年11月6日 |
十三夜と十五夜は二つを見ることがセットだったとされ、片方の月見だけをすることを片見月と言い、縁起が悪いとも言われます。
十三夜と十六夜については以下にて詳しく解説しています。
十三夜(13夜)の意味とは|2019年は10月のいつか.十五夜同様美しい月を眺めましょう
十六夜(いざよい)の意味とは|読み方やいつ月見をする風習なのか解説
十五夜は満月とは限らない
ちなみに、十五夜のお月さまは満月ではない年があります。
十五夜が満月ではないことがある理由は、月齢の変化や日の区切り方が原因なのですが、わかりやすく説明をすると、
毎月15日に満月が決まってやってくるわけではない。(月の満ち欠け(月齢)の周期によって)
実際には15日を含む前後の日で満月になり、15夜が満月ではないことがあるのです。
ちなみに2019年は満月は9月14日13時33分だそうなので、ぎりぎり満月ではないそうです。
詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
十五夜のお月見はいつから行われているか
十五夜のお月見が歴史書で初めて見られるのは、909年の平安時代、醍醐天皇が月見の宴(観月)を開いた日本紀略という書物です。
ちなみに、十三夜のお月見はこれまた平安時代の宇田法皇の時代に始まったとされています。
十五夜の由来
十五夜のお月見の風習は平安時代の遣唐使たちによって中国から持ち込まれたとされます。
中国では遣唐使が持ち帰るよりもかなり古くから、望月と言い、お月見をする風習を持っていたとされ、日本では貴族の習慣として根付いたとされます。
日本で十五夜のお月見をしている一方で、中国では中秋節という大きな祝日になります。
月餅を食べながら月見をする風習があり、日本のお月見に似ています。
中秋節は3000年以上前の、商の時代という中国最古の王朝から行われていたとされとても古い歴史があります。
この中秋節の起源となる行事が日本に持ち込まれると、貴族たちの文化として広がり、どんどんと民間に広がっていき土着だった月の信仰や収穫祭と交わっていったとされます。
月の信仰というのは、当時の日本人が月に対して持っていた様々なものを総称しています。
具体的に言うと月は暦を図るための重要なモノであり、収穫にも大きな影響を与えていることなどから月に収穫を祈るという信仰、さらに竹取物語でも見られるように、月は異世界、あの世という考えなどです。
民間で収穫祭とまじりあった十五夜が現在私たちのお月見の習慣の元となっているとされます。
十五夜のお月見にすること
現代ではあまり本格的なお月見をするところは少ないと思いますが、伝統的な十五夜のお月見の飾り物、お供え物などについて解説します。
月見団子などの十五夜のお月見の飾り
十五夜のお月見の飾り物には、
- お月見団子
- 団子以外の食べ物のお供え物(後述)
- お神酒
- 秋の七草(もしくはススキのみ)
これらをお供えします。
これらは月が見える場所に置くのが一般的です。
もし月が見える場所(縁側やバルコニー)などがないご家庭でしたら、床の間に置くということで代替するのが良いとされます。
お月見団子はネット上でも作り方がのっていたりするので、ぜひご参考にしてみてください。
十五夜の月見団子を含むお供えの仕方などを詳しく解説します。
十五夜のお月見のお供え物について
お月見団子は三宝(三方)という台に置くのが伝統的です。
またお月見団子をお供えする際の数ですが、様々な説がありますが、十五夜の15にちなんで15個を飾る場合や、一年の満月が12(13)回と言うことから12(13)個飾る場合などあります。
ちなみに15個飾る場合は、ピラミッド型にすると、最上部は2個並べて飾ることになります。
お月見団子以外のお供え物では里芋がメジャーです。
十五夜のお月見を芋名月と呼ぶと前述しましたが、日本に稲作が伝わる以前の主食だった芋類の収穫の時期で、収穫祭が行われていたとされることから、里芋をお供えをします。
里芋は「きぬかつぎ」と言い、皮のままゆでたものをお供えします。
伝統的なまっしろなお月見団子に限らず、最近では和菓子屋さんなどで、お月見に関連したお菓子を販売しています。
ウサギの絵柄のあるものや、ウサギの形をしたお団子などもあります。
また、本来が収穫祭だったという性格もあることから、秋の旬の果物をお供えすることも伝統的に行われています。
お菓子の代わりに、柿、ブドウ、栗や梨などの旬の果物をお供えしても良いです。
お月見団子はいつ食べるか
お供えしたものはお供えをして、下げてから食べるのが良いとされますが、月見団子はお月見をしながら食べるものとされます。
お供え物はお供えしているところから取らないと言うのが作法ではありますが、十五夜のお月見では食べても良いそうです。
地域によってはこのお供えした食べ物を盗って食べてもよいという「月見どろぼう」という風習もありますが、後程解説いたします。
十五夜のお月見の食べ物
十五夜のお月見のための料理、行事食と言うのは特にありません。
レシピサイトや、食品会社のサイトではお月見の時期にぴったりのメニューなどを紹介しており、お供え物に使われる里芋やお団子を駆使したご飯などが見られます。
こちらのサイトでは様々な献立をまとめてくださっています、参考にどうぞ。
お月見のススキ
前述の通り、十五夜のお月見でお供えする正式なものは秋の七草です。
秋の七草は、「萩、桔梗、葛、撫子、藤袴、女郎花(おみなえし)、尾花(ススキ)」です。
これらの七草がない場合はススキだけをお供えします。
※ちなみに白い花がついている状態のススキを尾花と言います
十五夜のお月見が収穫祭という性格もあり、ススキには「ススキの見た目が稲穂に見えることから、収穫を祈る」という意味を持っているとされます。
他にも魔除けの力を持つともされていて、それも理由で供えられたともされます。
十五夜などのお月見イベントについて
十五夜以外にも十三夜や十六夜、十日夜などのお月見があるとご紹介しましたが、実際お月見のイベントは全国でたくさんありますが、十五夜に限らず他のお月見の日にも行われています。
2019年は令和元年となって初のお月見となるわけですが、京都の桂離宮にて観月会を行うためのモニターを募集していました。
実際に過去天皇の住まわれた離宮にて、当時を感じながらの風流な観月のイベントはとても趣深いですね。
ちなみに桂離宮は月を見るための設計をされているともされており、お月見の名所でもあります。
また最近注目を集める御朱印にも十五夜のお月見限定御朱印があるそうで、寺社のホームページなどで確認できます。
他にもある伝統的な十五夜のお月見に関するイベントなどについてご紹介します。
お月見どろぼう
日本の様々な地域で、「お月見泥棒」と呼ばれる行事が古くから行われています。
この行事は、十五夜のお月見の日、夜6時半ごろに子供たちが袋を持って外に出ていき、ハロウィンの「トリックオアトリート」のように「お月見泥棒でーす」と言って、お供えしていたお菓子をもらうという行事です。
参考:子供たちがお菓子を持って行く、知られざる風習“日本版ハロウィーン“とは 三重県 中京テレビ
他にも長崎や秋田などでは名前が違えど似たような風習があるそうです。
お月見のお祭
桂離宮で観月会のモニター募集について触れましたが、様々な地域で、観月会などの名前がついたお月見のイベントがあります。
横浜の有名な庭園である三渓園では、観月会を行っており、2019年は9月12~16日で三重塔をライトアップしたり、風流な雰囲気を楽しめるようになっています。
参考:三渓園 催物 観月会
この時期は涼しくなってくる時期ですが、まだまだ浴衣を着る人も多く、十五夜のお月見に浴衣を着て出かけるなども趣深いですね。
十五夜のお月見にまつわるもの事について
十五夜のお月見の雑学などを簡単にご紹介します。
中秋の名月か仲秋の明月か
十五夜は読み方は一緒ですが、「中秋の名月」と書いたり「仲秋の明月」と書いているものとあります。
暦の上で秋を3つに分けると、初秋、仲秋、晩秋と言います。
初秋は二十四節気の立秋~処暑で、仲秋は…と暦の上では色々決まりがあるのですが、簡単に言えば旧暦の8月が仲秋に当たり、仲秋の明月はその時期の美しい月を意味します。
一方中秋と書くと、これは秋全体の真ん中にあたる十五夜を指しています。
十五夜お月見のイラストのウサギについて
十五夜の時期、お月見という名前がついた商品がよく店頭に並び、そこにはだいたいウサギのイラストが描いてあることがあります。
十五夜のお月見のウサギのイラストの由来は、月の表面が”ウサギが餅をついているように見える”ことと知られていますが、月とウサギには見た目以上の由来があります。
一つはインドで生まれ、仏教の説話として日本に持ち込まれたウサギの話です。
ある時、サル・キツネ・ウサギが倒れている老人を見つけ、それを助けようと食料をあげようとしました。
サルとキツネは食料を捕獲したのですが、ウサギは何も与えられるものを手に入れることができなかったので、自分を食べてくださいと火の中に飛び込んだのです。
すると、この老人は帝釈天という仏教の神様(天部)の中でもとても偉い神様である正体を現して、慈悲に満ちたウサギの行動を後の世にも知らしめんとし、月へと昇らせたのだというのです。
他にも、様々な伝承があるのですが、月とウサギには見た目以上に様々な逸話があるのです。
十五夜やお月見を題材とした歌、俳句
十五夜のお月見を読んだ有名な短歌に、
月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月 (よみ人知らず)
というものがあります。
「毎月月を見ることができる月は多いが、月見をするに適した月はこの月の月だなぁ(十五夜の月だなぁ)」
という意味ですが、この歌では、冒頭の「月々」を同じ意味の「月月」に書き換えると月が8回出てきて、8月の月を暗に意味するという考察もされているなど、とても遊び心のある歌だと知られています。
また俳句でも十五夜を詠んだものは多く、松尾芭蕉は、
名月や 池をめぐりて 夜もすがら
と十五夜の月を眺めて池の周りを廻っていたら夜が明けたと詠み、風流な月に見入っていた当時の人の姿を思い浮かべられます。
ちなみに、十五夜のお月様の月の出の方角や、月が最も高いところに行く時間帯などはこちらのサイトでも見られますので、ぜひご活用し十五夜のお月見を楽しんでください。